町田市医療と介護の連携支援センター長谷川です。
今回は、町田市で取り組んでいる「町田を元気にするトレーニング」略して「町トレ」についてご紹介させていただきます。
この取り組みは、2016年度の東京都の「地域づくりによる介護予防推進支援モデル事業」として開始され、理学療法士・健康運動指導士・市職員の協働によって町田市オリジナルの体操として考案されました。地域住民グループをモデルケースとして実際に活動を行い、その検証を踏まえ、2017年度より一般介護予防事業として開始されています。
誰でもできる「町トレ」の特徴
「町トレ」は住民が定期的かつ継続的に、介護予防に取り組むためのトレーニングです。体力に自信のある方から少し自信がない方まで、どんな人でも行えます。心身機能の維持や改善、いきいきと安心して暮らせる地域づくりを図り、「からだも こころも 地域も元気」な町田を目指す体操です。
2020年現在、市内で164団体があります。2023年までで200団体を目標に自主グループの立ち上げを目指しています。
「町トレ」の構成は大きく3つに分かれており、1から3までを順に実施します。
- 1.ストレッチ(ウォーミングアップ)
- 6種類からなり、上半身から下半身までを広く動かす「動的ストレッチ」で体にやる気のスイッチを入れ、運動効果を引き出します。胸を広げるストレッチや背中から腰のストレッチ、太ももと体幹部のストレッチ運動などを行います。
- 2.筋力トレーニング(筋トレ)
- 8種類からなり、ゆっくりと動くスロートレーニングで足腰を鍛えます。体力に自信のない方もでき、立った姿勢が苦手な方は椅子に座ったままでもOKです。膝と肘を近づける運動や膝の曲げ伸ばし運動、つま先を引き上げる運動などを行います。
- 3.整理体操(クールダウン)
- 5種類からなり、筋トレで使った筋肉を「静的ストレッチ」でゆっくりほぐします。そして、リラクゼーション効果を狙います。
この3つをあわせて約30分程度で行います。
ゆっくり動くスロートレーニングを採用し、足腰を中心に鍛えていくことで、転倒の防止や家事・外出時の負担の軽減など、日常生活の不安を解消して活発な生活を目指していきます。
また、定期的に外出し、人とコミュニケーションを取ることができます。前向きな気持ちを保ち、ご近所同士で集まることで絆が生まれ、お互いに助け合う関係が築けることも効果の一つです。地域の交流が盛んになり、防災や防犯の意識が高まることも期待されています。このように、体だけではなく、心も元気に保つことができるのが「町トレ」です。

導入から普及に至るまでの取り組み
では、この「町トレ」がどのようにして導入されたのかお話します。
- 【導入前】
- 主に町田市や高齢者支援センターで行う各種イベントでのPR・チラシなどを利用して、「町トレ」について周知を行います。その後、希望されたグループには動機づけの支援のため、高齢者支援センターからプレゼンを行います。そこで「町トレ」の趣旨や意義を理解していただき、自主グループで実際の活動が開始となります。
- 【導入時】
- 導入支援として、スタート応援講座(2時間×3日間)を行います。リハビリ専門職がそのグループを訪問し、コンセプトや体操の指導を行い、測定員とともに体力測定など実施します。
- 【3ヵ月目・6ヵ月目・12ヵ月目】
- リハビリ専門職がグループを訪問し、コンセプトや体操の再確認。指導測定員とともに体力測定なども実施します。
- 【1年以降~】
- リハビリ専門職がフォローアップのため、年1回程度の訪問を行います。あわせて市内にあるグループ同士の交流を行うため、町トレ全体交流会を行っています。
この導入前・導入後も含めフォローを行う中で、参加される方には下記のような内容もあわせてお伝えしています。
- 週に1回以上、継続的に行いましょう(継続しないと効果が出ません)
- 会場や必要な備品などは、グループで準備しましょう(町トレで使う椅子などもグループで用意しましょう)
- 新しい参加者を受け入れましょう(仲間の輪を広げ、みんなで一緒に元気になりましょう)
このように手厚い支援と、各自主グループのやる気が普及を進める原動力となっています。2017年10月時点で4グループ(約55名)だったものが、2019年6月時点では約130グループ(約2,500名)まで成長させることができました。

目標は地域コミュニティの形成
しかし、ここでも新型コロナウイルス感染症の影響が出ています。2020年4月に緊急事態宣言が発令され、会場となっていた公民館や自治会館などの閉鎖や、有料老人ホームやマンションの会議室の貸し出し中止など、町トレを開催していた多くの場が使用できなくなりました。
あわせて、人と人との接触を減らすために、毎週のように開かれていた「町トレ」が制限されることになりました。当初は緊急事態宣言が終了すれば、すぐまた会えるという状況でしたが、残念ながら1年経った今も状況は好転していません。
しかし、コロナ禍の中でも、「町トレ」にかかわっていたリハビリ専門職や高齢者支援センター、市職員はどうしたら「町トレ」を再開できるか検討しています。最初の緊急事態宣言解除の直後には間に合いませんでしたが、さまざまな方法で再開に向けた取り組みの提案が行われました。
- 今までより会場を広くして開催する
- 今までの定員を半数にして開催する
- ICTを活用して、小さい会場を複数つないで開催する
一般的な感染予防対策をしたうえで、継続のために上記のような試行錯誤を行っています。
町田に本拠地を置くサッカーチーム「町田ゼルビア」も、取り組みに協力してくれています。高齢者をはじめとした町田市民は、運動する機会が減ったことで、地域との接点を失いつつあります。そのため、自宅で過ごす時間が増えた高齢者の健康増進に加えて、「身近な方々とのコミュニケーション機会を創出したい」という声を形にする取り組みとして、トレーニング動画「町トレ ゼルビアバージョン」の提供も開始しました。
この取り組みについては、町田市民の方のみだけではなく、どなたでも確認できます。ぜひ運動不足を感じている方は、以下のホームページにアクセスして動画を見ながら運動に取り組んでいただければと思います。
「町トレ」で重要なのは、単に体操を行うだけではなく、地域で顔なじみの仲間をつくり、地域とつながることです。この動画を見て一人で運動することがゴールではなく、コロナ禍が落ち着いたら、「町トレ」を一緒に行う仲間との再会を目指していくことが大切です。しばらくは祈ることしかできませんが、一人一人がしっかりと感染予防を行い、またみんなで集うことを目標に、これからも町田を元気にするトレーニング「町トレ」は続けていきたいと思っています。最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。