皆さんこんにちは。医療と介護の連携支援センター長谷川昌之です。
前回は地域包括支援センター(町田市では高齢者支援センター)が開催する「地域ケア会議」についてご説明させていただきました。今回は「地域包括支援センターの目的と役割、勤めている職種」についてご説明させていただきます。
1989年に高齢者の相談・援助の体制整備が行われた
まず、地域包括支援センターの前身は「在宅介護支援センター」というものです。1989年の『高齢者保健福祉推進十か年戦略』(通称:ゴールドプラン)により、高齢者の在宅福祉や施設福祉の基盤整備の一環として、高齢者やその家族が身近なところで専門職による相談・援助が受けられるように在宅介護支援センターが全国的に整備されました。
この在宅介護支援センターは、地域の高齢者の方やその家族の福祉における向上を目的に、地域に根ざした相談支援や地域の実態把握、関係機関の調整とネットワークづくりなどを取り組まれたのです。
2005年に「地域包括支援センター」が整備される
2005年には介護保険制度の見直しに伴い、地域包括ケアの体制を支える地域の中核機関として、新たに「地域包括支援センター」の設置が定められました。地域包括支援センターの設置主体は市町村ですが、在宅介護支援センターを運営していた社会福祉法人や医療法人等の市町村から委託を受けた法人も設置することが可能となりました。町田市においては委託の形を取り5年ごとの公募制を取り入れています。
設置数の目安としては、人口2~3万人に1ヵ所、または中学校区を目安に設置されることになります。例えば、町田市では40万人に対して13個の支援センターがあり、概ね3万人に1ヵ所の配置です。
地域包括支援センターをわかりやすく言えば、「高齢者の総合相談窓口」です。大きく担うべき役割は、地域包括ケアシステムの中核を担い、その構築に取り組む最前線の組織と思ってください。この地域包括支援センターの目的は、地域包括ケアシステムを実現することです。本来地域包括ケアシステムの構築は市町村の責務ですが、その構築に向けての中心的役割を果たすことが地域包括支援センターに求められます。
そして地域包括ケアシステムの使命は、地域の住民が、住み慣れた地域で安心し、その人らしい尊厳のある生活を継続できるようにすることです。そのために、介護保険制度による公的サービスのみならず、ほかのフォーマルサービスやインフォーマルサービスで多様な社会資源を本人が活用できるよう、包括的および継続的に支援します。
地域包括支援センターにおける4つの業務
地域包括支援センターでは基本に公正・中立な立場として、下記の4つの業務を行います。
介護予防支援業務
介護予防支援事業は、二次予防事業の対象者(要介護状態になる可能性が高いと認められた65歳以上の者)が要介護状態になることを予防します。心身の状況に応じて、対象者自らの選択に基づき、介護予防事業や、そのほかの適切な事業が包括的かつ効率的に実施されるよう必要な援助を行うのです。
総合相談・支援業務
総合相談・支援事業は、地域の高齢者が住み慣れた地域で安心しながら、その人らしい生活を継続できるようにするのが目的です。どのような支援が必要かを把握し、地域における適切なサービス、関係機関および制度の利用につなげる等の支援を行います。業務内容としては、総合相談、地域包括支援ネットワーク構築、実態把握などを行います。
権利擁護業務
権利侵害を受けている、または受ける可能性が高いと考えられる高齢者が、地域で安心して尊厳のある生活を営むことができるように、権利侵害の予防や対応を専門的に行うものです。事業内容としては、高齢者虐待の防止や消費者被害の防止、判断能力を欠く人への支援などを行います。
包括的・継続的ケアマネジメント支援事業
包括的・継続的ケアマネジメント支援事業は、個々の高齢者の状況や変化に応じた包括的・継続的なケアマネジメントを介護支援専門員が実践できるよう、地域の基盤を整えるとともにサポートを行います。
これ以外にも、指定介護予防支援事業所としての予防給付に関するケアマネジメント業務や市町村が地域包括支援センターに任意事業として委託を行うものがありますが、各区市町村ごとに内容はさまざまなため、今回は割愛させていただきます。
町田市では市民の方により地域包括支援センターについてわかりやすく活用できるように写真のような形で冊子も作成して、市民向けの啓発活動を行っています。下記はわかりやすい一例として提示しています。
- 介護保険や福祉サービスについての総合的な相談
- 介護保険の認定申請受付
- 日常生活における不安なこと・お困りごとの相談受付
- 認知症の全般的な相談や専門医療機関等の情報提供
- 介護予防に関する講座の開催や自主グループ活動の支援
- 成年後見制度活用の相談や利用支援
- 高齢者虐待や消費者被害(悪質な訪問販売など)についての相談
- 地域のケアマネージャーの支援
- 介護者家族向け交流会の開催
- 要支援の認定を受けた方や総合事業対象の方の介護予防ケアプランの作成
地域包括支援センターに勤める職種と役割
次に、地域包括支援センターで働く職種や、それぞれの専門職がどのように業務を行っているかご説明させていただきます。
地域包括支援センターでは保健師(又は地域ケアの経験がある看護師)や社会福祉士、主任介護支援専門員、介護支援専門員をはじめとした専門職種が配置されています。これらの職種に望む専門性は以下の通りです。
- 保健師(又は地域ケアに経験のある看護師)…保健医療
- 社会福祉士…ソーシャルワーク
- 主任介護支援専門員・介護支援専門員…ケアマネジメントの専門性
これらの専門職は、地域包括ケアシステムの構築を推進していくには必要不可欠なものです。しかしその専門性が個別に機能していても、地域包括ケアシステムの構築を推進していくことはできません。地域住民に対して地域包括ケアシステムを提供するためには、それぞれの専門職が縦割りで業務を行うのではなく、地域包括支援センター全体で情報の共有や相互の助言などを通じ、各専門職が支援の目標に向かって連携して対応することが必要です。
連携を行い、より良い支援に繋げるために以下の項目を地域包括支援センターの職員は意識しながら支援に努め、チームでのアプローチを以下のように行っています。
- お互いの職種の専門性を理解する
- 地域包括支援センターの目的および業務の共通認識を持つ
- 業務の進め方や手順および役割を明確にする
- 地域に関する情報を個人だけではなくセンターで共有する
- 高齢者の抱える課題の大きさや背景等を勘案して責任体制を明確にする
- 高齢者の情報を共有し個別対応による弊害を予防する
- 事例や案件について、三者の専門性を活かした視点から検討し、協議する
住みやすい街づくりに向けて
地域包括支援センターはどのような目的をもって、どのような役割をもち、どのような職種が従事しているかなどご理解いただけたかと思います。
「地域の方からいただく相談を解決することが、安心して暮らしやすい街づくりになる」と考えながら、日々スタッフは業務についております。ぜひ、あなたの街の地域包括支援センターにお立ち寄りください。