はじめまして。介護の教科書「介護✕ケアマネ」を担当することになりました、「介護屋みらい」の代表で介護支援専門員(ケアマネジャー)の宮崎直樹です。
ご両親や親族に要介護者がいる方は、“ケアプラン”という言葉を何度も聞いたり、人によってはケアマネジャーと直接的に関わったことがある方もいると思います。
みなさんは、「ケアプランの上手な組み方ってどんな組み方なんだろう?」「ケアプランってケアマネジャーに任せておけば大丈夫なの?」と考えたことがありますか?
そこで、介護の教科書を通して「ケアプラン作成時に知っておきたい知識」を一つひとつ、流れに沿いながら説明していきたいと思います。
今回は、「ケアプラン」「ケアマネジャー」って何?という疑問にお答えする形で、それぞれがどのような役割を担っているかをお伝えするので、両親や親族のケアプラン作成のときにぜひ活かしていただきたいと思います。
ケアプランとは? 「適切な支援・介護の計画書」

ケアプランとは、利用者様やご家族様が、なるべく住み慣れた地域で本人らしい生活が送れるようにするために、利用者様や利用者様を支えているご家族様などの現状を把握し、「どのような支援が必要か?」「この先どのような生活をしていきたいか?」「本人らしい生活を送るためには何を改善すればいいのか?」「そのためにはどのような支援が必要か?」を記載する計画書の事です。ケアプランは大きく分けると「居宅サービス計画」「施設サービス計画」「介護予防サービス計画」の3種類に分かれています。
「居宅サービス計画」は、要介護1~要介護5の方を対象としています。利用者様やご家族様などの状況を把握するためにアセスメントを行い、その結果に基づき住み慣れた自宅で本人らしい生活が継続できるように、利用者様やご家族様のご希望や、介護保険サービス、地域の社会資源などを組み合わせて、解決が必要な課題に対応するために最も適切な支援について検討します。利用者様やご家族様の生活に対する意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、支援を受けるサービスの目標や内容、種別、頻度、期間、週間予定表達成時期、サービスの種類、予測される利用料の料金などを記載した計画書の事です。
「施設サービス計画」は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、介護保険施設に入所されている利用者様について、利用者様やご家族様などの状況を把握するためにアセスメントを行い、その結果に基づき利用者様やご家族様の意向、本人らしい生活が送れるようにするための支援内容や目標、それに関わる職種などを記載した計画書の事です。
「介護予防サービス計画」は、要支援1または要支援2の方を対象としています。要支援1・2と認定された方は、介護予防サービスや介護予防・生活支援サービス事業を利用する事になります。お住まいの地域にある、地域包括支援センターが中心となり、利用者様やご家族様などの状況を把握するためにアセスメントを行い、その結果に基づき介護が必要な状態にならず、住み慣れた地域でいつまでも自立した生活を続けていくために最も適切な支援を検討します。その内容を記載した計画書の事です。
介護支援専門員(ケアマネジャー)とは?

介護の知識を幅広くもった専門家です。介護サービスを利用するときの相談や、在宅サービス事業者などとの連携、調整を行い、利用者様やご家族様の心身の状況や希望に応じて、適切な介護保険サービスや地域の社会資源などを利用できるようにケアプランを作成します。
ケアマネジャーの資格を取得するには、「医師」「歯科医師」「薬剤師」「看護師」「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」「社会福祉士」「介護福祉士」などの、国家資格を保有かつ各資格の業務に5年間従事した者が、都道府県が行う試験に合格する必要があります。また5年ごとの更新が必要です。
また、介護支援専門員として働いた期間が通算して5年(60ヵ月)以上ある場合は、研修を修了すると主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)の資格を取得する事もできます。主任介護支援専門員の役割は、介護保険サービスや他の保健・医療・福祉サービスを提供する方との連携調整、ケアマネジャーに対する助言・指導、地域づくりなどがあります。
ケアプラン作成までの流れ

介護保険サービスを利用するには、介護が必要な状態であると認定を受ける必要があります。介護保険サービスを利用するまでの手順としては、市の担当窓口に申請。その後、市の職員などが自宅を訪問し、心身の状況の調査を行います。また主治医に心身の状況についての意見書を作成してもらいます。
調査と主治医意見書をもとに、介護度を決定する介護認定審査会が開催され、介護の必要性や程度について審査、判定を行います。介護認定審査会の結果に基づいて、非該当、要支援1~要介護5までの区分に分けて認定され、結果が記載された介護保険被保険者証と負担割合証が自宅に届きます。
その結果をもとに、ケアマネジャーがいる居宅介護支援事業所などと契約を結び、各種サービスを組み合わせたケアプランを作成し介護サービスの利用が開始になります。
ケアマネジャーの役割とは?

介護保険サービスを利用するためにはケアプランを作成するだけでなく、定期的に確認や評価をしていく必要があります。流れとしては、ケアマネジャーが自宅に訪問し、アセスメントを行います。
アセスメントとは、利用者様やご家族様が抱える問題点を明らかにし、自立した本人らしい日常生活が送れるように支援していくための課題を把握する事や、利用者様やご家族様が行えている「強み」などを把握する事です。
そのアセスメントを通して、「近所のスーパーまで買い物に行けるようになりたい」「トイレで排泄できるようになりたい」などの目標を、利用者様やご家族様と話し合いながらケアプランを作成します。支援開始後も利用者様やご家族様、支援を受けている事業者などと連携を図りながら、目標の達成状況や継続や変更の必要性などを定期的に評価させていただきます。
介護保険サービスの利用料は収入に応じて異なりますが、今現在の介護保険制度では利用者様は1割~2割を負担してもらい、残りは保険や公費から負担されます。支援を受けている事業者に対してきちんと介護給付が行われるように、各都道府県の国民健康保険団体連合会に必要書類を提出する事もケアマネジャーの業務になります。
利用者様とサービス事業者との連絡調整

ケアマネジャーは、利用者様、ご家族様とサービス事業者との連携や調整の役割も仕事のひとつになっています。介護保険のサービスには、日帰りで施設に通い、入浴や食事、運動やレクリエーションなどの支援が受けられるデイサービスや、自宅に訪問してもらい、入浴や排泄などの身体介護や掃除や買い物などの生活援助が受けられる訪問介護、身体状態や住環境にあった、車いすやベット、歩行器などのレンタルの支援が受けられる福祉用具貸与、必要な介護が受けられる場所で宿泊できるショートステイなどの支援があります。
それぞれのサービスに対して、事業者数が非常に多いため、利用者様やご家族様が目的にあった事業者を探すことは大変な作業かと思います。ケアマネジャーはさまざまな事業者と連携を図っているので、利用者様の目的にあった事業者を探す事ができます。また支援を開始した後も、利用者様やご家族様の要望を事業者に連絡する事や、事業者側の意向を利用者様やご家族様に連絡するなどの調整。事業者側とサービスの利用状況を把握する機会をつくるなど、横の連携も図っています。
ケアマネジャーの仕事は介護保険サービスの調整だけでなく、配食サービスや地域のボランティア、地域活動への参加など、社会資源も含めた支援を行っています。また施設入所が必要になった場合は、利用者様やご家族様の希望にあった施設を探すお手伝いをする事もできます。ケアプランを作成するにあたって大切な事は、要介護状態となっても住み慣れた地域で、自立した本人らしい生活が送れるような計画になっているかでしょう。
次回は、ケアプランが必要になるタイミングや準備しておきたい事を中心にご説明します。