介護保険について調べられている皆さん、はじめまして。メニースターズ代表で介護コンサルタントの星 多絵子です。介護の教科書では、介護保険制度をなるべくみなさんに分かりやすくお話ししていきます。
連載1回目の今回は、2018年の介護報酬改定を理解するために「介護保険の成り立ちと仕組み」についてお話しします。
介護って、身内に要介護者が出てはじめて知ろうとしますよね。私も両方の祖母が寝たきりと認知症になったので、同じ経験があります。わからない部分がございましたら巻末までご連絡いただければ個別相談も可能です。
介護保険の成り立ちと仕組み
介護保険は2000年に成立しました。それまで、高齢者の面倒は医療保険でまかなっていました。医療では医師・看護師といった国家資格者が多くかかわるため、高額になります。
1973年は福祉元年と呼ばれ、高齢者医療費無料という時代へ。自宅で介護できない高齢者を病院に長期入院させる「社会的入院」が問題になりました。
その結果、1973年の無料化から10年で高齢者にかかる医療費は10倍近くまで膨れ上がります。できるだけ医療費を含む社会保障給付費を抑えながら、高齢者のケアをするというバランスを取る方法が介護保険です。

介護では、医療ほど医師や看護師を必要としないので、社会保障給付費が抑えられると考えられた結果、介護保険制度を設けました。また、介護事業者に効率的な経営をしてもらうために、一部を除き、民間企業が参入できる仕組みになっています。
さらに、介護保険は利用者と介護事業者との「契約」で成り立っているのが特徴です。介護保険ができるまでは、行政などの公的機関が高齢者の面倒をみる「措置」でした。介護保険はひとつの「契約」ですので、利用者が「この介護事業者はなんとなく合わないな」と思ったら、変更することが可能です。
ただし、介護保険を利用するにはケアマネージャーの作ったケアプランを通さなければならないため、ケアマネージャーとのご相談が必要になります。
介護保険は市区町村が主体となっています。介護が必要かどうか、判断に迷ったら市区町村の高齢福祉課(名称は市区町村によって異なります)か、地域包括支援センター(市区町村から委託を受けている施設)に相談してみてください。
次に介護保険を支えている財源と、利用者が窓口で支払う負担率を見てみましょう。
介護保険で支払うお金について

介護保険は税金と保険料で成り立っています。2015年の厚生労働省の説明によれば、市区町村12.5%、都道府県12.5%、国25%と半分を負担しています。(自治体によって異なる場合もあります。)
残りを介護保険料でまかないます。65歳以上の第1号被保険者は、年金から保険料が天引きされ、40歳から64歳までの第2号被保険者は、給与などから天引きされる仕組みです。つまり、介護保険は行政と利用者の助け合いで成り立っている仕組みと言えます。
介護保険は行政と利用者、お互いの助け合いで成り立っているため、介護保険サービスの料金をそれぞれの事業所が勝手に値決めをすることはできません。国の財源にもかかわりますので、厚生労働省が保険でできるサービス内容を決めます。
その金額は、介護報酬という公定価格となり、3年に一度改定されます。平成30年度は医療での利用金額である「診療報酬」と、こちらで説明している「介護報酬」の同時改定をすることになりました。
国の予算にも関係するため、改定率の決定は厚生労働省だけではなく、財務省の意見を取り入れることになっています。
この介護報酬をもとに利用者がいくら自己負担をするのかを計算します。介護保険サービスの自己負担の割合は、所得金額によって異なります。
介護保険制度が始まってから、自己負担割合は原則1割とされていましたが、2015年8月の介護保険改正で、一定以上の所得がある方の自己負担割合が2割に引き上げられました。また、2018年8月の介護保険制度改正からは、現在2割負担の人の一部が3割負担に引き上げられます。以下の図で確認してみてください。

残りを保険者が負担します。介護保険で離床者の窓口負担割合が増えても、介護事業者の収入が決して増えるわけではないのです。
今後、介護報酬は社会保障給付費を抑えたい政策から、引き下げられることが高確率で予想されます。介護報酬が引き下がると、介護サービスを提供する事業所は、収入が減るため経営が難しくなることが必至です。
その一方、私たち利用者・家族にとっては、今までと同じ介護サービスで、窓口負担が今までよりもお安くなるという恩恵を受けられることになります。ですので、介護報酬改定は、国レベルのお話だけではなく、私たち利用者・家族にも直接影響するのです。
平成30年度介護報酬改定は2月に内容が明らかになる予定になっています。介護保険は仕組みがコロコロ変わってわかりにくいですが、要は「国の負担する高齢者のケアの金額をどう減らすか」という目的があることが理解できればOKです。
介護保険がなかったころ

お互いさまの介護保険。祖母の介護をしている20年前はありませんでした。医療の限界を感じ、介護の大切さを身に染みる経験をしたと思っています。祖母がおぼつかない足元で、ふらふらと街中に出かけて転倒…案の定、見事に頚部大腿骨骨折。急性期病院で骨折の治療を受けることになりました。
今であれば、骨折の治療が終わると次の病院や介護施設を紹介してもらえる仕組みなのですが、当時はそのような仕組みや制度はありません。
骨折で自宅に戻された認知症高齢者を、家族が介護できるでしょうか。私たち家族は在宅介護をしていく中で、日を重なるごとに限界を感じていきました。そんな日々を送り、どうしようかと悩んでいる矢先、たまたまやってきた民生委員に相談してみると、自宅から50㎞離れた認知症治療の専門病院をご紹介いただきました。彼女がいてくれなかったら、家族もボロボロになっていたでしょう。
介護保険が浸透した今だったらどんなに良かっただろうか、と思うことがたびたびあります。在宅介護ならヘルパーに訪問してもらえますし、施設入所なら家族も介護を休むことができますよね。
利用料(利用者負担分)を支払ってでも、このような悩みを解決したいのが、利用者・家族のニーズです。
まとめ
介護保険はお互いさまで成り立っている仕組みです。依存しすぎず、かと言って遠慮しすぎず、適切に使うことが大切です。国もかかわっているため、介護サービス利用料金のもととなる介護報酬は国の影響を受けます。
平成30年度、介護にかかわるすべての人にとって大きな節目の年。さて、どう変わるでしょうか?今後も注目ポイントをピックアップ!
利用者・家族にとっても、負担割合や料金など支払うお金が変わります。次回は介護報酬改定の流れを追います。仕組み大切なことなので、わかりやすく説明いたします。ぜひご期待ください。