24時間看護の施設特集
常に看護師に見守られている安心感

そもそも介護施設への入居を考えている方には、健康面に不安を抱いている方も多いでしょう。とはいえ、なにも病院が併設されているほどでも…という方にお薦めなのが、ここでご紹介する24時間看護サービスを実施している施設。看護師と触れ合う時間が多くなることで利用者一人ひとりの精神的な変化も素早く知ることができ、また医師との連絡もスムーズで、“もしも”の時の対応という面でも安心です。常駐している看護師による適切な投薬や医療器具のチェックなどの看護サービスは、きっと大きな安心感をもたらすはずです。
医療依存度の高い高齢者向けの老人ホーム
持病などによる各種疾病により看護ケアや医療ケアなどを必要とする医療依存度の高い方にとって、看護師の常駐する施設というのは安心感のある環境です。
特に、夜間も看護ケアを必要とする方や、急変など緊急時の対応への備えを考えたとき、常に看護師が常駐する24時間看護師常駐型の施設は夜間の対応への充実が期待されます。
看護師が24時間常駐する施設の多くが、医療依存度の高い方を受け入れられる体制を整えている場合が多く、たん吸引やインスリン対応、IVH(中心静脈栄養)、鼻腔栄養などの受け入れを行っている施設も少なくありません。
ただ、一方で夜間の急変時などの対応をスムーズに行うために看護師を夜間も常勤させているケースもあり、事前に確認が必要。
一般的に、介護スタッフだけを常駐させている施設と比べて、看護師が24時間常駐する施設は月額利用料など料金プランが高い傾向にありますので、予算と合わせて条件に合っているかどうかを判断しましょう。
また、看護師24時間常駐により、介護保険サービス外のサービスを提供している介護付有料老人ホーム、介護保険サービスは基本サービスに加えて別途契約が必要な場合もあります。ご入居先を検討する際には、必要な医療措置に対応する場合のサービス料が総額いくらになるのかは、施設側にきちんと確認することが大切です。
たん吸引、鼻腔栄養、気管切開の方は24時間看護の施設が理想的
24時間看護師が常駐する施設は、たん吸引や気管切開などの常時看護ケアが必要な方にとって安心の環境です。
介護職員は、利用者の方に対して行える医療行為が限られているため、看護ケアや医療ケアを必要とする方の場合、常時看護をしてもらうためにも看護師が24時間常駐することは特に大切な条件です。
看護師が24時間常駐する施設で行う医療ケアとして代表的な例としては、以下の通りです。
たん吸引・気管切開 | 数時間おきに必要な看護ケアを行う |
---|---|
胃ろう・鼻腔栄養・IVH(中心静脈栄養)など | 入居者の体調に合わせた時間で対応を行う |
インスリン注射 | 入居者に必要な回数や時間に応じて注射を行う |
導尿カテーテル | 看護師が24時間いることで適切なタイミングで行うことができる |
看取り・ターミナル | 夜間や早朝などの急変時に対応できるため、安心につながる |
24時間看護の施設は費用相場も少し高額に
介護付有料老人ホームでは、法律により入居する要介護者3人に対して、介護職員を1人以上の配置が定められていると同時に、看護職員も利用者30人未満の場合には1人以上配置することが義務づけられています。
とはいえ、制度上、看護師は日中常勤でもよく、必ずしも夜間は常駐していない点、30人未満に対して看護師1人という点において、夜間の看護ケアを必要とされる方にとっては少々心許ない体制といえるのも確かです。
こうした中で、公益社団法人全国有料老人ホーム協会が公表している平成25年度の「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究」では、全国にある介護付有料老人ホームのうち、看護師が24時間常駐していると回答している施設は全体の約20パーセントとなっています。なお、夜間も看護師を配置し、夜間看護体制加算を取得している介護付有料老人ホームは全体の63.3パーセントと報告されています。
また、住宅型有料老人ホームで24時間の看護体制を整えている施設は全体の約6.5パーセントとそれほど多くありません。
看護師を24時間配置しているホームは、そのほとんどが都市部に集中している点も大きな特徴の一つです。
看護師が24時間配置されていホーム数が平成24年4月時点で最も多かったのが東京都で80か所、次いで神奈川県の47か所となっています。さらに、大阪、兵庫、埼玉、千葉、愛知などが次いで多い傾向にあり、地域差があるようです。
安心の看護体制を整えている、という点ではメリットの大きい24時間看護対応施設ですが、費用相場は高めの傾向にある点は注意が必要です。
平成24年4月時点で介護サービス情報の公表システム上のデータを見てみると、24時間看護師を配置している老人ホームの45パーセント、半数近くが入居一時金1,000万円以上と高額ホームである実態が浮かび上がっています。
月額費用も同様に高い傾向にあり、全国の介護付き有料老人ホームの月額費用平均が14万7,000円だったのに対し、看護師が24時間常駐するホームの約半数が月額費用を21万円以上に設置。実に7万円程度もしくはそれ以上の差が毎月発生していることとなります。
入居先選びで費用面を重視される方は、あえて看護師を24時間配置せず、オンコール体制を採用するなどの対応で費用を抑えている施設を探してみるのもいいかもしれません。
老人ホームの看護師はどんな仕事をしてくれる?
看護師が常勤する有料老人ホームなどの入居型施設は、看護体制の充実や、医療対応の幅広さなどメリットが大きいもの。皆さんの中にも、看護師常駐、24時間看護師常駐などをこだわり条件として施設探しをしている方も多いかもしれません。
それでは、実際に有料老人ホームに勤務している看護師さんがどのような仕事をしているかを知っていますでしょうか?。
病院とは違い、有料老人ホームで働く看護師さんのお仕事は、医療行為よりも入居されている方の「健康管理」が中心となります。
朝のバイタルチェックから始まり、服薬支援、入浴前の体調チェックなど入居されている方の生活に合わせて健康管理を行う看護師は、入居者の気持ちの安心という面でも大きな役割を担っています。
また、施設には医師がいない場合が多いため、急変時の対応や体調不良時の判断などを行うのも、看護師の大切な仕事です。
日中常勤する看護師の1日の仕事の流れを見てみると、「入居者の体調などに関する引き継ぎ」からはじまり「バイタルチェック」「経管栄養介助」「服薬支援」「褥瘡処理」などを午前中に行います。
また、お昼には「食事介助」や「口腔ケア」を。午後には午前中と同様に服薬支援や経管栄養介助などを行いながら、夜勤スタッフへの申し送りのための書類作成などを行っています。
入居者の方の体調をサポートする要として働く看護師は、入居される方にとっても、気軽に不調などを相談できる頼もしい存在です。
夜勤にて夜も看護師が常駐している施設では、夜間はお休み前の服薬支援や夜間の体調不良対応、医療的なケアなどが受けられます。施設によっては、夜間は看護師がオンコール体制となっているところもありますので、必要な医療ケアを施設側に伝えて、対応可能かどうかをチェックすることが大切です。
胃ろうへの対応が可能な施設特集
手厚い看護サービスが待っています

胃ろうとは、物を食べたり飲んだりすることができない、または難しいといった「摂食嚥下障がい」を持つ人が、栄養を補給するために胃に開ける穴のこと。数カ月おきにカテーテルを交換する必要がある胃ろうでは、医師や看護師による定期的なケアが必要不可欠です。また、例えば認知症患者では、自分で胃ろうを引き抜いてしまったり…といったトラブルもあるため、24時間看護サービスを導入している施設がほとんど。ここでご紹介するのは、そうした手厚いサービスが受けられる施設ばかりなので、胃ろうをしている方でも安心して入居をご検討ください。
胃ろう対応可の施設では手厚い介護・看護が
胃ろう(PEG:Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)とは、病気や障害などで口から食事が摂れない方、または食事を気管につまらせやすく、誤嚥性肺炎を起こす可能性の高い方に対して行う「長期栄養管理法」です。
内視鏡を使い胃に小さな穴をあけて、そこに栄養を送るための胃ろうカテーテルを取りつけます。胃ろうカテーテルはお腹の皮膚と胃壁をつないでいるので、外部からカテーテルをとおして、直接胃のなかに栄養を送ることが可能となっています。この方法なら食事を飲みこむことができない、また誤嚥性肺炎を起こしやすい方でも安心して生活することが可能です。肺炎は高齢者の死因第3位。じつは高齢者にとって怖い病気です。できるだけリスクを避けてほしいという観点から、医師や介護スタッフが胃ろう造設をすすめる場合もあります。
従来は鼻からチューブをとおして胃に直接栄養を送っていましたが、患者が苦痛を感じることや介護者の負担が重いことが課題でした。今は、胃やお腹の皮膚に穴をあけ外から栄養を送ることで喉にチューブを入れる必要がなくなり、嚥下訓練や発声練習がしやすくなっています。胃ろうを造設しても食事は口から摂取可能です。胃ろうの必要がなくなった場合は、取り外すこともできます。胃は再生力の高い臓器なので「ろう孔」はすぐに回復するのです。
胃ろうの手術は大がかりなものを想像してしまいますが、大きな出血もなく5~10分程度で終わります。傷もほとんど目立ちませんしお風呂に入ることも問題ありません。できるだけ清潔にすることが望ましいため、PEG周辺部は石けんでよく洗い、きれいにしておくことが推奨されています。
こちらの表は「胃ろう造設者数」をまとめたものです。一般病院(一般病院・療養病棟・精神・結核・感染症病床)には16万9,543人の方が入院しています。さらに特別養護老人ホームや介護老人保健施設、訪問看護では25万6,555人もの方が胃ろう造設をされています。かなりの数の方が胃に直接栄養を流しこむ栄養摂取法で生活されています。つまり胃ろうはそれだけ安全な方法なのです。今後もさらなる高齢化により、胃ろう患者が増えることが予想されます。
<全国の胃ろう造設者数の推計結果>
胃ろう増設者数の推計 | 一般病院 | ||||
---|---|---|---|---|---|
合計 | 急性期 病院 |
慢性期 病院 |
ケアミックス 病院 |
||
一般病床 | 75445人 | 25866人 | - | 49579人 | |
療養病床 | 医療保険 | 60137人 | - | 28406人 | 31731人 |
介護保険 | 30954人 | - | 14643人 | 16311人 | |
精神・結核・感染症 | 3008人 | - | - | 3008人 | |
一般病院での合計 | 169543人 | 25866人 | 43049人 | 100629人 | |
特別養護老人ホーム | 36667人 | ||||
介護老人保健施設 | 21475人 | ||||
訪問看護 | 医療保険 | 9168人 | |||
介護保険 | 19702人 | ||||
合計 | 256555人 |
胃ろう造設した高齢者が老人ホームに入居する場合「胃ろうである」ことを理由に拒否されることは、以前にくらべて少なくなりました。胃ろうに対応できる老人ホームのスタッフが看護師だけだったため、胃ろう対応可能な老人ホームが少なかったのことが問題視されていました。今は研修を行えば介護職員でも対応可能となっています。
もし不安な場合は、老人ホームのパンフレットに医療・看護体制が明記されていますのでそちらを参考にしてください。もしわからないなら直接老人ホームに「胃ろうに対応できるかどうか」と確認すると安心です。老人ホームによっては、介護職員が研修を受けていない、看護師が常駐していないなどの理由で入居を断られる可能性があるため注意が必要です。
胃ろうに対応できる老人ホームを調査してみましたが、医療・看護体制がある程度ととのっているという共通点があります。看護師が日中、または24時間体制で勤務している、介護士が24時間体制で施設に常駐しているのがその特徴です。胃ろう対応可の介護施設なら、手厚い介護・看護サービスが期待できます。
老人ホームにおける胃ろう患者の受け入れ条件は?
2012年から、所定の研修を受けた介護職員が胃ろう患者に対応できるようになったため、以前よりも胃ろう患者受け入れ可能な老人ホームが増えました。しかし、受け入れ条件によっては入居ができない事例もあります。わかりやすくまとめていますので、ご参考にしてください。
1.認知症を発症した胃ろう患者は、受け入れがむずかしい……胃に直接栄養を送っている間は、できるだけベッドに横になり安静にしなければなりません。ところ認知症を発症するとソワソワと落ち着かなくなり、居室や共用部、また居室へと移動してまわる多動の症状がでるケースも。その場合、胃に確実に栄養が落としこまれているかどうかが確認できませんし、患者が認知症でアチコチ動きまわると栄養剤が逆流する可能性もあります。お腹につくられた胃ろうカテーテルは痛みやかゆみを感じることもあり、興味本位でいじるとカテーテルが抜ける場合もあります。患者の安全が確保できない場合は、胃ろうによる治療ができません。胃ろう治療が必要なうえに認知症を発症している場合、入居前に老人ホーム側との十分な話し合いが必要です。
2.たん吸引を行うかどうか……喉や口のなかに分泌物(痰など)を自力で外に吐きだすことができない高齢者は、看護師や研修をうけた介護スタッフにより機械を使って吸いとる必要があります。放置していると誤嚥性肺炎を引きおこす可能性も。嚥下状態(飲みこむ力)に問題のある高齢者は、吐きだす力も弱い傾向にあります。そのため胃ろう患者は、同時にたん吸引が必要なケースもあるとされており、これら異常行為が可能な看護師や介護スタッフが常駐する老人ホームでなければ対応できません。入居後に問題とならないように、入居前に施設側と話しをしておく必要があります。
3.介護スタッフが胃ろうの研修を受けているかどうか……胃ろうは医療行為のひとつなので、ずっと看護師のおこなう仕事とされてきました。ところが最近は、研修を受けた介護職員であれば胃ろう患者に対応できるようになり、以前にくらべて患者の受け入れが可能な老人ホームが増えています。ところが介護職員が研修を受けていない、看護師が日中、また24時間常駐していない、安全性を十分確保できない施設では入居を断られるケースもあるため、注意が必要です。
延命治療としての胃ろうをどう考える?施設入居前に考えてみよう
「胃ろう」は何らかの理由があり、口からの栄養摂取ができなくなった方に対して行われる医療行為です。口から栄養が摂れなくなる原因としては、口腔内のガンにより痛みで食事が摂れない、喉頭ガンや咽頭ガンにより食事がのどを通らない、脳卒中やALS、パーキンソン病などの神経性の難病により食事を食べることができない、また食べても吐き出してしまうなどがあります。このような嚥下障害により、胃ろうを造設することは純粋な「医療行為」です。腎臓の機能が低下した場合、人工透析を受けることになりますし、糖尿病の患者はインスリン注射で血糖値のコントロールをすることもあります。これら医療行為と胃ろうとは、まったく同じ医療処置のはずです。
ところが胃ろうに関してだけは「医療行為」や「医療処置」ではなく「延命治療」であるという認識をもつ方も多く、人によっては「胃ろうは不要」と口にする方もいます。なぜ胃ろうが延命治療と考えられてしまうのでしょうか。胃ろうを必要としている方のなかには、ある日突然脳梗塞や脳出血で倒れ、判断力や理解力が回復しないまま家族の意向によって胃ろうを造設する場合があります。認知症になり自分の意志で食事が摂れなくなった場合、胃に直接栄養を送る方法を採用するケースも。脳卒中で意識がなくなったり認知症で正しい判断がくだせない状況になったにも関わらず、胃ろうによって命をつないでいる状況が傍目には「延命治療をさせられている」ようにうつってしまうのです。
たとえ脳卒中で意識不明になってもその後回復し、嚥下リハビリで食事を摂取できるようになる方や、リハビリやレクリエーションで認知症の症状が緩和した場合、自分の意志で食事が摂れるようになった方もいます。胃ろうは、いつか回復するであろう嚥下機能回復までのつなぎでしかありません。もちろんなかには病状が回復しないまま、長期間栄養を外部から補給し続けることもあります。だからといって「無意味な延命処置、医療費のムダ遣い」とは言えません。治療として必要なものだと判断されたものに対して第三者が「ムダ」とは言えないはずです。
ただ胃ろうに関しては賛否両論ある現実を考え、脳卒中や認知症になる前に自ら「食事を経口摂取できなくなったときは、胃ろうを希望します」または「希望しません」と、ハッキリ意思を示しておくことが重要です。本人の気持ちがあらかじめ示されているなら、家族もその意向を優先させることができます。本人のしっかりした意思がベースにある以上「胃ろうはムダ」という議論が起きることもありません。
老人ホームに入居後、なんらかの事情で胃ろう造設が必要になることもあります。そのとき、本人がしっかりと状況を理解、判断、決断できればいいのですが、そうではない場合は家族が戸惑うことになります。あらかじめ「胃ろうは必要」「不要」という意思を、家族に伝えておきましょう。
胃ろうの処置は医療行為じゃなくなった!?老人ホームにおける介護士の役割とは?
胃ろうの処置は医療行為とされており、老人ホームでは看護師しかできないとされてきました。ところが看護師がいない時間帯に胃ろうの処置が必要なケースで、違法と知りつつ介護職員が胃ろうの処置を行う事例が起きていました。違法であっても必要に迫られて対処していたのですが、やはり問題があるということで介護士や看護師から「介護職員も胃ろうの処置ができるようにしてほしい」という声があがったのです。
そこで2012年から、一定の条件を満たした介護スタッフも胃ろうやたん吸引ができるようになりました。ある一定の条件を満たすその「条件」とは、定められた研修を定められた事業所で受講することです。受講時間は約50時間で、座学と実技がからなります。実技では実際に看護師から直接、胃ろうやたん吸引の技術や注意点を学びます。座学と実技でとくに問題がなければ、受講者(介護士)による胃ろうとたん吸引が可能となります。胃ろうとたん吸引はセットで研修を受けるように指導されています。
介護職員がこれら医療行為を行いやすい理由は、看護師よりも長い時間老人ホームに勤務していることがあげられます。看護師が24時間勤務する老人ホームは少なく、これが「胃ろう患者が介護施設に入所できない大きな理由」となっていました。ところが介護職員が一部の医療行為を行うことにより、入所者にとって大きなメリットがうまれます。痰がのどや口腔内にいつまでも残っていると誤嚥性肺炎を起こす可能性が高くなりますが、常勤介護士がすぐにたん吸引で処理できれば誤嚥性肺炎のリスクも低減され、入所者にとっても安心です。
老人ホームを選ぶときには介護士がきちんと研修を受けているかどうか、そして24時間胃ろうやたん吸引に対応できるかどうかを確認しておくとよいでしょう。