医療法人が運営の老人ホームのメリット
老人ホームを選ぶにあたって、医療体制がどのくらい整っているのかを重視される方も多いですよね。
60代以上の方だと、病院に通っていない方がむしろ少数であり、多くの方が日常的に何らかの薬を服用しています。
近年、医療法人が有料老人ホームを運営するケースが増えており、医療面が充実していることから人気が集まっています。
本記事では医療法人が運営する老人ホームのメリットについて、細かく紹介していきます。
病院やクリニックが併設されている場合が多い
医療法人が運営している老人ホームは同じ敷地内、あるいは近隣に系列の医療機関があることが多いので、通院に手間がかからず気軽に病院で診てもらうことができます。
さらに、医療法人が運営している施設では、同じグループの病院と連携し、病院の主治医が往診医として老人ホームを訪問してくれる場合があります。
月に1~2回ほどの頻度で回診してくれるのが一般的で、持病の経過を見てもらう程度のことであれば、病院に足を運ぶ面倒も省けるでしょう。
もちろん薬の処方にも対応してくれるので、普段から服薬している方は安心です。
また、医療法人が運営している施設では、基本的に系列病院と協力関係にあるので、入院する必要がある場合にはベッドの確保がスムーズです。
理学療法士や作業療法士が多い
医療法人が運営している老人ホームでは、医師・看護師のみならず、理学療法士や作業療法士も多く配置されていることもあります。
理学療法士と作業療法士の概要は以下の通りです。
- 理学療法士
- ケガや病気でからだに障害がある人に「立つ」「歩く」「座る」といった運動機能を回復するリハビリをおこなう医療職で、日常生活で必要な動作の改善を目指す。
- 作業療法士
- 「食事をする」「歯みがきをする」「家事をする」「文字を書く」といった、日常生活と社会生活で欠かすことができない手の動きや細かい作業のリハビリを行う。
理学療法士や作業療法士が配置されている施設だとリハビリや介護予防の面でも手厚いサービスを受けることができます。
対応できる病気が多い
医療法人が運営している老人ホームの場合は、株式会社や社会福祉法人が運営する老人ホームよりも多様な疾患に対する柔軟な対応を期待できます。
これまで複数の病院に通っていた方にとっては、施設に隣接する病院1つですべての受診を済ませられる可能性があるのでおすすめです。
通院の送迎が無料の場合が多い
通常、施設から病院に通院するときの送迎サービスは有料です。
なお受診に付き添いが必要な入居者に対しては、家族が対応できない場合には有料サービスによる職員の付き添いが行われます。
ところが医療法人が運営している施設だと、同グループの病院であれば、これらのサービスが無料で行われていることが多いようです。
また、同じグループの医療機関内で利用者の情報が共有される、何かあった場合に融通をきかせて対処してくれるなど、さまざまな恩恵を受けられる可能性が高くなります。
病院・クリニック併設の施設を探す医療法人が運営の老人ホームのデメリット
医療法人が運営する老人ホームのメリットがわかったところで、続いてデメリットを解説していきます。
プライバシーの確保が難しい
施設によっては完全個室ではなく、パーテーションや家具で部屋を仕切って居室にしている場合があります。
半個室の状態なので、一般的な個室タイプの老人ホームの居室に比べるとプライバシーで不安を感じたり、物音やにおいが気になったりするかもしれません。
完全プライベートな空間で生活したい方は、施設探し際に個室を用意している施設を探しましょう。
個室ありの施設を探す入居まで時間がかかることもある
医療法人が運営している老人ホームは、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームなどの民間施設に比べると、施設数が少ないため、入居待ちになることもあります。
医療法人の運営で医療ケアが充実しているため、入居希望者が多いことがその理由です。
そのため、即入居できる施設を探すとなると施設探しの時点で時間がかかってしまうこともあります。医療法人が運営している施設を探す際には、早めから施設選びをしましょう。
即入居可の施設を探す長期入居が難しい施設もある
施設の種類によっては、長期入所が難しいところもあります。
例えば介護老人保健施設では、3ヵ月ごとに入居者がそのまま継続して入居できるか判断されます。
もし継続判断がなければ、退所をしてほかの施設に転居しなければいけません。
もともと老健は、在宅復帰を目指すための「リハビリ施設」のため、長期的に入居する目的の施設ではありません。
運営法人ごとのそれぞれの特徴
介護施設の運営元は、大きく分けて「医療法人」「社会福祉法人」「株式会社」の3種類 があります。
運営者によってそれぞれ特徴が異なりますので、以下で解説していきます。
医療法人が運営する介護施設の特徴
医療法人が経営する施設は基本的に以下の施設です。
- 診療所
- 病院
- 介護老人保健施設
最近では、社会福祉施設の運営を行う法人も増えており、厚生労働省の『平成28年社会福祉等調査』によると、「障がい者支援施設等」の3.5%、「保護施設(授産施設、医療保護施設など)」の2.9%が医療法人によって運営されています。
さらに、介護予防を目的とするリハビリテーション、デイサービス、各種福祉サービスを提供する医療福祉法人も近年増えてきました。
医療法人の介護職員は、医療的な知識を身につける機会が多いので、緊急時の対応をはじめ、医療面も考慮した介護を提供してくれます。
しかし全国的にまだ数が少ないので、希望するエリアに立地していないことが多いことや、入居まで時間がかかることがデメリットとして挙げられます
社会福祉法人が運営する介護施設の特徴
制度上、事業内容が規定されているため、社会福祉法人が運営するのは主に以下の施設です。
- 特別養護老人ホーム
- 障がい者支援施設
- 児童養護施設
- 児童養護施設
- デイサービス
- 訪問介護
- ショートステイ
- 救護施設などの「第1種社会福祉事業」
- 保育所などの「第2種社会福祉事業」
また公益事業として、介護予防事業や老人保健施設、有料老人ホームなどの経営、食事や入浴などの支援事業、子育て支援事業などを実施することも認められています。
株式会社が運営する介護施設の特徴
株式会社は、一般の企業に代表されるような、営利を得ることを主な目的とする運営組織です。
株式会社が運営する主な施設は以下の通りです。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- グループホーム
事業内容を自由に幅広く設定できるので、既存の老人ホームとは違った視点でサービスを提供している施設もあり人気があります。
また、厚生労働省の『平成28年社会福祉施設等調査』によると、「老人福祉施設」の2.1%、有料老人ホームなどを含む「その他の社会福祉施設」(サービス付き高齢者向け住宅は除く)の71.3%が株式会社によって運営されています。
株式会社が運営する老人ホームの特徴として、福祉事業以外の分野での実績や経験を活かした運営手法が導入されているという点が挙げられます。
希望条件に合う老人ホームを探す医療法人以外が運営する老人ホーム
医療法人以外が運営している老人ホームでも、施設によっては看護師や医師が配置されている場合があります。
医療法人以外が運営している施設では医療ケアを受けられないということはありませんので、ご安心ください。
看護師が24時間常駐している施設もある
近年では施設が独自に、「看護師が24時間体制で常駐している」「協力医の指導のもと、リハビリ体制を充実させている」といったサービスを提供し、医療面の充実を図るケースが増えています。
看護師が24時間常駐している施設では、いつでも医療的管理が受けられます。
深夜や早朝の時間帯に急な体調不良やトラブルが起こったときにも対応してもらえるので、安心して入居できます。
24時間看護師常駐の施設を探す医療機関と連携している施設もある
制度上は看護師の配置義務がない住宅型有料老人ホームでも、協力医との連携を強化し入居者の体調急変時への対応強化を図っている施設が増えています。
なお、老人ホームを探す場合、協力医療機関については以下の点についてチェックしておきましょう。
- 入居する本人にとって必要な診療科目が含まれているか
- 緊急時における対応フロー
- 施設から病院までの距離
医療機関との連携以外にも、クリニックや病院が併設されている老人ホームもありますのでぜひチェックしてみてください。
病院・クリニック併設の施設を探す老人ホームで行われる医療行為
介護施設では、職員によって認められている医療行為は異なります。
医師や看護師をはじめ、介護職員のなかでも資格の種類などで「できる医療行為」と「できない医療行為」があるので確認しましょう。
医師ができる医療行為
医師は診察や応急処置をはじめ、注射や点滴、人工透析や処方箋の発行などを行うことができます。
ただし、施設では設備や医療器具などが限られているため、詳しい治療や検査などはできないケースが大半です。
専門的な医療管理が必要な人は、施設内に病院やクリニックを併設している施設や、すぐ近くに連携している医療機関がある施設を選ぶことをおすすめします。
看護師ができる医療行為
看護師は、主に以下の医療行為を行うことができます。
- インスリン注射
- 経管栄養(胃ろう)の管理
- 在宅酸素療法
- 痰の吸引
- ストーマ装具の張り替え
- 人工呼吸器の管理
- 褥瘡ケア
- 中心静脈栄養
- 導尿
- バルーンカテーテル
ただし施設によっては常駐する看護師が対応できる医療行為は異なるため、必要とする医療ケアが受けられるかどうか確認する必要があります。
介護士ができる医療行為
介護士が行える医療行為は主に以下の通りです。
- 体温測定
- 血圧測定
- 服薬管理
- バイタルチェック
- 薬の飲み忘れチェック
- 湿布を貼る
- 目薬の点眼
なお「認定特定行為業務事業者」の認定を受けている施設では、介護福祉士による「喀痰(かくたん)吸引」と「経管栄養」の医療的ケアにも対応しています。
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