Q.4 よく「行政は縦割りだ」と言われます。省庁間の垣根があるからだと思いますが、なぜその垣根は取り払われないのでしょうか?その理由を教えてください。(トッティ・会社員)
わからないことがあって役所などに電話すると「それは○○課の管轄なので、電話回しますね」などと言われてたらい回しにされてしまいますよね。その最たる例が中央官庁だと思いますが、そもそもなんで役所は縦割りだなんて言われるんでしょうか?国民にわかりやすくしてくれるのも、役所の仕事だと思うのですが、違いますか?
省庁間の縦割りが激しい理由は、背後にいる政治家や団体にあります
霞ヶ関の縦割りはかなり激しいものがあります。
私が働いていた経済産業省には道路を一本隔てた隣に農水省があったのですが、二つの省庁で連携した政策を立案しようと協議した時に、激しく対立したことがありました。私はこの時の経済産業省側の担当だったのですが、痛感したのは「各省庁ごとに全くステイクホルダーが違う」ということでした。
当初から経産省と農水省の官僚同士は二つの省庁が連携することに比較的前向きだったのですが、いざ一緒に政策案を作ってお互いの省の関係者に説明してみると、全く反応が異なるわけです。
例えば「企業がもっと農業に参入しやすくする規制緩和をする」という案を作って経済産業省と関係が深い経済団体や政治家に説明すると、「それはいいことだ、もっと進めよう」ということになるわけですが、農水省に関係が深い農家の団体や政治家にその案を持っていくと「それでは既存の零細農家の経営に悪影響が出るのではないか」とか「農地に一般の土地と同じように投機的な投資が流れ込んで、まじめに農業をやる人が減ってしまうのではないか」とかいったネガティブな反応が出てくるわけです。そしてこうした業界団体や政治家の意見の違いは、それを代弁するそれぞれの省庁の官僚同士の対立につながります。
この時は結局「農家と中小企業の連携を促進する」というところに妥協点が見出されたのですが、何が言いたいのかと言いますと、行政の縦割りというのは必ずしも各省庁の官僚の対立を原因とするものではないということです。むしろ対立の原因はそれぞれの省庁の背後にいる団体・政治家、ひいてはそれに関係する国民なのだということです。