Q.27 官僚の世界にも、一般企業と同じような「派閥争い」はあるのでしょうか?(ジョージ・会社員)
中央官庁には東大出身者が多いでしょうから、学閥のようなものはなさそうなイメージなんですが…。もし、そうした派閥争いがあるのであれば、それに敗れた人たちがどうなるのか? 逆にないのであれば、派閥争いがない理由を教えてください。
あえて言えば「東大」VS「非東大」…ですが、それほど激しい派閥争いは官僚の世界にはありません
官僚の世界に学閥というものはありません。
その理由は二つで、「東大が当たり前の世界であること」と、「東大という場が、そもそも淡白でコミュニティが形成されない」というところにあります。あえて言えば「東大」VS「非東大」という対立軸はありますが、それも深刻なものではありません。
だからと言って派閥争いがないかというと決してそんなことはなく、幾つかの軸で常に争いが行われていますが、大きく分けて「事務官」VS「技官」、「キャリア」VS「ノンキャリア」、「制服組」VS「背広組」というような職員の属性を起因とするものと、政治家同士の政策をめぐる対立が官僚にまで波及する場合の二つがあります。
前者の職員の属性を原因とした派閥争いは人事制度に根付いているだけあって、表面上は燃え上りませんが、ポスト争いという形で常に水面下で行われています。ただそれがふとしたきっかけで大きく燃え上がることもあり、有名なところでは厚生労働省のキャリア組と社会保険庁のノンキャリア組の対立が年金記録問題をきっかけに激化し、与野党を巻き込んだ政治闘争になったことがありました。
この時、両者の間に立って調整をしたのは総務省だったのですが、総務省もこのような厚労省の派閥争いに直接的に巻き込まれることを恐れたため、その時の担当官は農水省から総務省に出向した官僚だったそうです。みんなずるいですね(笑)。
一方でキャリア官僚同士の派閥争いというのはどうしても政治家が関係していきます。官僚も、ある程度のレベルまで上り詰めると、政策を実現するために政局に巻き込まれるのは致し方なく、省内に政策の対立軸があるとそれが政治家を巻き込んだ大規模なものになることがあります。私の古巣である経産省はこの種の派閥争いが多い省庁で、そうした話の中には「官僚たちの夏」(新潮文庫)
のように書籍化されているものもあります。
まぁ、人が集まる以上、派閥争いが起きるのは仕方のないことなんでしょう。