Q.20 「官僚が政治家を操っていて、傀儡(かいらい)政権と化している」などとよく言われますが、そうした言われようについて、当の官僚本人はどのように感じているのでしょうか?(TOPPO・会社員)
国会中継を見ていると、答弁の時、国会議員に耳打ちをしている官僚…という風景をよく目にします。政治家と官僚の関係性って一体…と思ってしまうんですが。宇佐美さん自身は「政治家を動かしている感」みたいなものを実感したことはありますか?あるとしたら、それはどんな時でしたか?
「優秀な政治家は官僚を操り、愚鈍な政治家は官僚に操られる」ということでしょうね
よくテレビなどで「私は国民のために働こうとしたが、官僚の抵抗で台無しにされた」と主張する政治家や学者がいます。こういうことを言われると「そうか、官僚っていうのはそんな汚い人たちなんだ」と思ってしまう人もいると思いますが、一度冷静になってこの類の主張をしている人たちの顔を思い浮かべてください、そこに一流の政治家、学者はいるでしょうか???いませんよね???
官僚にとって一番大事なのは「世の中を混乱させないこと」です。そのため、たとえ偉い地位にあったとしても、いわゆる「能力のない政治家」やそのブレーンが提案する実現が難しい政策は、それを潰すように、官僚が政治工作をして立ち回ります。典型的な手法としては「実質的に意味がない骨抜きの政策を作る」か、それが通じないようならば「より上の立場にある能力の高い政治家に言い含めてもらう」というようなところです。
私もとある法律を作るときにこうした官僚の政治工作の一部に参加しましたが、当時は未熟で「自分たちが政治を動かしている!」という感覚を覚えました。ただ、今振り返ると「より大きな権力を持つ優秀な政治家が、官僚を使って、敵対する政治家の未熟な主張を潰している」という構図の中で、歯車として機能していたに過ぎなかったと感じます。
そんなわけで、「官僚が政治家を操って、傀儡政権と化している」という種の主張は、「自らがそうした官僚の抵抗を乗り越えて政策を実現した」という武勇伝のダシに使われるか、もしくは本当に能力と力のない政治家が自らの失敗の責任を官僚に転嫁して「負け犬の遠吠え」をしているかのいずれかというわけで、一種の都市伝説のようなものです。
傀儡(かいらい)政権:表面上は独立したように見える政権が、実態では事実上の支配者である外部の力によって管理・統制・指揮されている様。