Q.138 介護現場では、有給休暇がまともに取れません。ロビー活動で要望を聞き入れてもらえる余地はあるのでしょうか?(しゃんしゃん・施設職員)
主観ですが、介護施設はどこも人手不足で有給どころではないような気がしています。そのため、ロビー活動で気持ちを表明したいのですが、受け入れ側にその準備がないのであれば、せっかくの休みの時間を割きたくはないとも思ってしまうのです。
ロビー活動と並行して、労働運動をやっていかなければ成果はあがらないでしょう
結論から言いますと、ロビー活動すれば状況は変わるかもしれませんが、それと並行してみなさん自身の動きが必要です。
医療業界の待遇が比較的よいのは、1950年代の後半から1960年代前半にかけて激しい労働闘争を行なった結果です。
それまで看護婦は、太平洋戦争時代の流れを引きずって「決められた期間以外に妊娠した場合には中絶を迫られる」などといったことに代表されるように、社会に対して奉仕を強要される劣悪な労働環境にありました。診療報酬が低く賃金も非常に低い水準にとどまっていました。
こうした状況に、看護婦を中心とする日本医療労働組合連合会が立ち上がり、1960年にいわゆる「病院ストライキ」を決行して社会に労働問題を訴えた結果、1960年には「看護婦の恋愛・結婚・通勤の自由」を獲得、1968年には「増勤・夜勤闘争」で勤務体制が見直されるなど、少しずつ状況は変わっていきました。
こうした労働組合の活動は、社会党などの野党勢力と連動して行われたもので、そういう意味では医療業界の待遇の見直しの半分は現場の労働運動の成果、半分は政治家に対するロビー活動の成果と見ることができます。
仮にみなさんが介護業界の本格的な待遇の見直しを求めるならば、当時の医療業界と同じように労働運動とロビー活動を並行してやっていかなければ成果はあがらないでしょう。
単に政治家に陳情して介護職員の労働問題について国会質問などで官僚を吊し上げてもらったところで、社会の動きが伴っていなければうまく政治家なり官僚に窘(たしな)められるだけで、状況が変わることはないでしょう。