Q.119 「排除アート」は必要だと思いますか?公園のベンチなども不便なデザインに変えてしまったり、高齢者の休憩場所まで奪うことになりませんか?(スナッチ・学生)
野宿する人が立ち入らないよう設置された「排除アート」と呼ばれるものがありますが、それに加えて、憩いの場となるべき公園のベンチなども長居できないよう不便なデザインに変えてしまうというのは、高齢者の休憩場所まで奪うことになりませんか?宇佐美さんは、「排除アート」は必要だと思いますか?
ニーズがあるからこそ排除アートは生まれ、例えそれを否定したところで同じような機能を持つ他の仕組みが生まれるだけ
一般論で議論してもあまり意味はなく、その地域の住民が「排除アート」についてどう考え、それを踏まえて地方自治体が何を決め、実行したのか、ということをまちづくり全体を見て考える必要があると思います。
綺麗事を言うのは簡単ですが、率直に言ってホームレスの方々というのは地域住民にとって迷惑な存在です。私も昔住んでいた家の近くにホームレスが住み着いていたのですが、やはりいい思いはしませんでしたし、私以上に付近に住んでいたファミリーの方、特に女性、は激しい嫌悪感を示していました。そういう地域住民にとっては、「排除アート」のような形でもホームレスをある種「追い出す」ことができれば、生活の厚生が豊かになることは間違いないのだと思います。
他方で排除アートによって他の問題が生まれるのもまた事実で、まずもって「追い出されたホームレスはどこで生活するのか」という問題がありますし、質問者様がおっしゃるように排除アートによって高齢者にとっては休憩しづらい空間が出来上がるのかもしれません。
そうした問題は、“それはそれで”別に対策を取る必要があって、例えば東京で言えば山谷、大阪で言えば西成のようなホームレスを集中的に受け入れる環境を作る必要があるかもしれませんし、高齢者でもくつろげるバリアフリーな公園を整備して、その周辺を巡回する地域バスなども整える必要があるのかもしれません。
そんなわけで前置きが長くなりましたが、「排除アートが必要か否か?」と聞かれれば、むしろニーズがあるからこそ排除アートは生まれたのであって、例えそれを否定したところで、同じような機能を持つ他の仕組みが生まれるだけの話だと思います。
ただ排除アートにネガティブな側面があるのは間違いなので、そのネガティブな側面をカバーするような仕組みを、皆で知恵を絞ってまちづくりとして調和をとっていくのが、地方政治というのものの役割なのだと思います…でもやっぱり排除アートって気持ち悪いですよね。