アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」!アデュカヌマブとの違いや効果を解説

アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」
9月28日、株式会社エーザイよりアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」が発表されました。
株式会社エーザイの発表した「抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体「レカネマブ」について、1,795人の早期アルツハイマー病当事者様を対象としたグローバル大規模臨床第Ⅲ相CLARITY AD検証試験において、統計学的に高度に有意な臨床症状の悪化抑制を示し、主要評価項目を達成」によると、全般臨床症状の評価指標であるCDR-SBスコアの平均変化量は、レカネマブ投与群がプラセボ投与群と比較して-0.45となり27%の悪化抑制(p=0.00005)を示したと報告されています。
今後は、結果をもとに2022年度中にアメリカでのフル承認申請、その後に日本やヨーロッパでの承認申請を目指すとのことです。
「レカネマブ」の効果や承認のタイミングについて
アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」について、認知症の世界的権威として知られる順天堂大学医学部名誉教授の新井 平伊先生(アルツクリニック東京 院長)にお話を伺いました。

――実際「レカネマブ」の効果はどこまで期待できるのでしょうか?
(新井)レカネマブは、アルツハイマーが治るような夢の新薬とまでは言えず、まだ発展途上の段階での薬です。27%の悪化抑制は、臨床的に言えば、現在使われているドネペジルなどと違って継続的に進行を抑制する点で優れているのですが、その効果はそれほど大きなものではありません。
しかし、レカネマブが優れているのは、学術的にその効果が極めて明瞭に証明された点です。
アデュカヌマブでは、評価項目によっては効果が不明瞭なものもありました。レカネマブは、主要な項目すべてで明確に効果を発揮した点が素晴らしいと思います。
また、アリセプトなどの従来からある薬剤とは異なり、1年以上経過しても進行を抑制する効果が持続しています。この点が素晴らしいです。
さらに、世界の認知症研究者が注目している点がもうひとつあります。それは、「レカネマブ」が認知症の予防にも繋がるかもしれないという点です。
予防の観点で有効かどうかについては、まだ臨床試験が行われている最中なので確定的なことは言えませんが、「レカネマブ」のメカニズムを考えると予防効果も期待できる可能性があります。
もし、予防にも繋がるとなれば、私たちと認知症との付き合い方が根本から変わる可能性もあります。
―― 副作用などはどのようなものがあるのでしょうか
(新井)主な副作用としては、アデュカヌマブ同様、動脈のまわりに水が溜まる血管周囲の浮腫が報告されています。
しかし、この副作用については、レカネマブのもたらすベネフィット(利益)を考慮すれば、リスクとしては比較的少ないものだと私は考えます。
――実際に利用するとなるとコストはどのくらいかかるのでしょうか
(新井)アデュカヌマブの例を考えれば、年間で数百万円単位でかかるのではないかと思います。
――アデュカヌマブについては米国で承認されたのにも関わらず、残念ながら日本では承認がされませんでした。「レカネマブ」の承認の可能性などはどれくらいなのでしょうか。
(新井)これまでの状況を考慮すると日本でも承認される可能性は高いのではないかと思います。承認されるということに、まず大きな意味があります。自費でも利用できる道が開けますからね。
ただ、薬価が高いことに加えて、対象者をどうスクリーニングするかなどまだまだ検討すべき課題が多くあります。日本の健康保険制度の中で、どのような範囲で保険適用になるかは予想が難しいのですが、若年性アルツハイマー病にはぜひ使えるようになって欲しいと思っています。
――現在も認知症症状の進行を遅らせる薬はいくつかありますが、そのなかでもどのような人におすすめの薬なのでしょうか。
(新井)アルツハイマー病による軽度認知障害の方など、できれば早期の方に利用して頂けると効果が高いのではないかと思います。残念ながら、症状が進行してからでは効果は期待できないので、早期発見が今後は今まで以上に大切になります。
「レカネマブ」の取材のまとめ
現在、日本における認知症の患者数は800万人にも及ぶと言われています。今後、日本の高齢化がさらに進めば、アルツハイマー病など認知症の当事者の数はさらに増えていくと考えられます。
今回、認知症の世界的権威・新井 平伊先生への取材を通して、アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」は症状の進行を明確に抑制できるだけでなく、予防薬としての可能性も秘めていることがわかりました。
実用化に向けてはまだまだハードルもありますが、「レカネマブ」のような薬が実用化されて広く普及すれば、認知症との付き合い方もより良い形に変わっていくかもしれません。
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