当事者に聞く “ワンオペ介護” 何がつらい?負担軽減の糸口は?

最近、“ワンオペ介護”という言葉を検索する人が急増しています。一体、どんなことなのか?何が特に辛いのか?負担軽減できるのか?当事者への取材を元にお伝えします。

“ワンオペ介護”とは…

周りの助けが得られず、介護を1人でこなす

周りの助けが得られず、介護を一人=ワンオペで、こなさなければならない状態のこと。

2017年ごろから育児で先駆けて“ワンオペ育児”という言葉が登場し、社会問題として広く認知されるようになりましたが、介護でも同様の使われ方をするようになりました。

“ワンオペ介護” 何がつらいのか

“ワンオペ介護”の当事者であり、『お父さんは認知症 父と娘の事件簿』などの著書があるライターの田中亜紀子さんに話を聞くことができました。

田中さんは独身で、母はすでに他界、きょうだいも近くに住んでいるものの介護については頼るのが難しい中、認知症の父(86歳)の介護を5年ほど続けています。

”ワンオペ介護”のつらさとは…

“ワンオペ介護”のつらさとは…

「とにかくマンパワーが足りないことがつらいです。平日は毎日10時半から13時半まで看護小規模のデイサービスを利用していてケアマネさんにも助けられています。しかし、日々悩み事は多く、途方にくれることも正直あります。実は、細かい事やサービス外の事はやはり自分でやらなくてはならず、抱え込んでしまうんです。友人には悩みを聞いてもらえますが、細かい介護の問題を相談できる家族がいないんです。認知症はよくなることはまず無い病気ですから、どんどん悪化して、希望が見えないのもつらさに拍車をかけましたね」

“ワンオペ介護”は周囲に協力を得ようにも得られないパターンも多いといいます。きょうだいや夫・妻などの家族がいても、協力を得るのが難しいのが現実だそうです。

協力して貰いたくても、それが叶わないうちに、当事者に「助けを求める気力さえなくなってくる」点が特に辛いそうです。

「当事者は本当に肉体的にも精神的にも参っていることが多いんです。当事者はただでさえ疲弊しているので、ほかの家族に協力を求めてもうまくいかないという経験を重ね、やがて一人で抱えてしまう。“便りがないのは良い知らせ”ではなく、その反対。周りに介護をしている人がいる方はそのことを気に留めてもらえると嬉しいです」

また、“ワンオペ介護”は金銭的負担も、ひとりに集中することになります。介護にかかるおカネについても聞きました。

「父の介護費用は、年金を原資に介護保険を利用して、あとは高額療養費制度などで対応しています。こうした制度などを活用することで、金銭的な負担はいくぶん軽減されました。父は、認知症と診断されたあとに、精神障がい者手帳の申請をして認められたので、『心身障害者医療費助成制度』も使うことができましたが、この制度はプロのケアマネの皆さんでも、全ての方がご存知というわけではありません。自分から情報を取りに行くことも重要です」

田中さんからは、同じ“ワンオペ介護”に悩む当事者に向けて伝えたいアドバイスも頂きました。

それは、「介護保険や公の制度のサービスを工夫して利用することが負担軽減のためには大切です。抱え込まずに、友人を頼ったり、コミュニティに参加して外部との接点を持つこともオススメしたいと思います。リアルのコミュニティへの参加が難しい場合は、SNSでも繋がりを持てると気が楽になるはずです」ということ。

ひとりで抱え込んでいると、肉体的にも精神的にもどんどん負担が大きくなり、どこかでパンクしてしまう可能性があります。

地域包括支援センターに相談するのも手

どうすれば、“ワンオペ介護”の当事者が、外部との接点を持つことができるのか?相談窓口としては、地域包括支援センターを活用するのも有効です。

富津市天羽地区地域包括支援センター長・藤野雅一さんにもお話を聞きました。

“ワンオペ介護”に陥ってしまう要因には、古い価値観もあると指摘する藤野さん。

「“ワンオペ介護”をしている方は、周りに親族がいないという環境的な問題の他に、介護について“子どもがやるべき”“配偶者がやるべき”といった固定観念にとらわれている方も多くいらっしゃいます。しかし、心身をすり減らして介護をしている姿を親や配偶者はどう思うか?きっと嘆かれるのではないかと私は思います」

地域包括支援センターは、①総合相談支援業務 ②権利擁護業務 ③介護予防ケアマネジメント業務 ④包括的・継続的ケアマネジメント支援業務という4つの役割を持っていて、介護にまつわる様々な悩みを相談し、支援に繋げてもらうことができます。

「介護福祉サービスは自分の人生と日常生活を維持する安全弁。私たち地域包括支援センターはまだ知名度は低いですが、事件が起きたら110番、火事が起きたら119番というレベルで、介護の悩みが出来たら頼ってもらえたらと思います」

藤野さんは、介護などを抱える当事者の方の“安全弁”として、困ったときにはぜひ気軽に頼ってほしいとおっしゃっていました。