あけましておめでとう
新しい年がやってきた。ボクにとっては65回目の新しい年だ。
「今年をどんな年にしたいか?」
あまりにも精一杯でそんなことも最近は考えたことがなかったかもしれない。
「とにかく無事に過ごせますように」お粗末だけど、切実な願いだ。
新しい年の始まりは、12月31日から一夜明けただけなのになぜか厳粛な気持ちになる。何も変わることのない部屋の中で、その年の新しい静かな日差しが部屋に入ってくるのを見ると「いい年になりますように」そんな言葉が自然と出てくる。
新年に「今年も家族が健康で幸せに過ごせますように」そんな願いを初詣のときに願う。いつもそんな年の始まりを過ごしてきた。
「今年をどう過ごすか」考えてみれば、ボクはもう人生の折り返しがとっくに過ぎているであろう。実際にはもう動ける体ではないのだけど、自由に動ける時間もそう長くないかもしれない。
そんな年齢のボクにとっては「どうしたいか?」を考えて実行するのも悪くないことかもしれないと思った次第だ。もちろんそんなに大それた目標を掲げなくたっていい。そう自分に言い聞かせながらあれこれ考えてみた。
今年の抱負を発表
大好きだった本屋にもすっかりご無沙汰だった。先日あった昔の知人にこんなことを言われた。
「神足さん、あんなに忙しくて、さらに夜の街にもよくお出かけになられて一日20時間ぐらいは稼働していたのに、それでも本をたくさん読まれていましたよね。しかも書評をしていただけるほど読み込んでおられた。どうやって過ごしていたか、本のチョイスは?いっぱい聞きたいことがあったのです」
本は、知識は、世界を広げる窓だとボクは思っている。全く違う考えや思いもつかない考え方も知ることができるから。
そして、ある人・団体の専門的な考えが詰まっている。知らない世界が、物語が、そこで繰り広げられているのだ。
そこにある言葉も情報もすべてが新しく、日本の歴史から世界の最新情報まで新しい発見がたくさん。映像と違って視覚的に左右されることもないので、頭の中にある自分の考えと混ぜてみることが容易である。
1週間に何回も行きつけの本屋に行っていた。本屋というのはその店によって陳列に特色がある。最近では「本屋大賞」などでメジャーになったが、店員さんが推している本や陳列の仕方で売れる本(手に取ってみたい本)が違ってくる。
なので、陳列の好みが合う本屋に自然に行ってしまう。いわば、本屋さんの店員に「推し」がいるってことだ。
三省堂書店の本店はそんな店員さんが有名な本屋さんだった(2022年12月現在は改装中で仮店舗)。
ボクにとっては「ああ、こんな並べ方するんだなあ」とか「この人の本が密かに売れそうだよなあ」とか裏の楽しみもあってアミューズメントパークに行くように楽しかった。そしてたくさんの本を買った。
買った本だけでなく、献本をしていたくこともあるので読みたい本がどんどん増えていく。今まで発掘できていなかった本も出てくるほどだ。
寝床の枕元には読もうと思っている本が積まれている。寝る前や起床後は時間が許すまでずっと読んでいるが、ボクにとって至福の時だ。
発病前は二階の和室で布団を敷いて寝ていたので、窓際の頭の上からボクの寝ている横にかけてびっしり本が積まれていた。妻が掃除をしようと布団を動かすと、布団の形を残して本が積まれていて笑ったものだった。
今はベッド脇の出窓にちょっとだけ。申し訳程度に読む本が置いてある。

なので1つ目の今年の抱負は「本屋に行って本に触れること」。世の中がどうなっているかまた本で確かめたい。本がないと薄っぺらい人間になっていくような気がしてならないのだ。
続けて2つ目の抱負は「足のリハビリを強化すること」
これは切実な話なのだが、発病してもう11年が経った。麻痺の左半身は一生懸命リハビリをしてきたつもりだけど、この1、2年拘縮が目立つようになってきた。
「リハビリは裏切らない」本当にそうだ。やればやるだけ返ってくる。もう11年経っているわけだけど遅いってことがないとも思っている。
この11年の間に取り組んできたのはHAL、川平法、マッサージ、リハビリテーション病院での訓練、大学病院の注射治療、高次脳機能障害の治療、理学、言語、作業療法などなどなど。
「継続は力なり」これもわかっている。でもできていない。信じて続けることの大切さもわかっている。
なのになぜ続かないのか。経済的な問題もあるし、施術している方から「無理かもしれない」なんて言われたこともあった。3ヵ月やってみてある程度の感触で自分に合っているか見極めるといいと言われているが、どうもしっくりこない。
今は、自宅で現状よりは悪くならないよう週3回マッサージで足を伸ばしてもらっている。このマッサージがなければもっと拘縮はひどくなっていたと思う。実際、旅行とかでマッサージが1週間抜けると足が曲がる。

いろいろやってきたが、徐々に足は曲がってきてしまっている。これ以上曲がると車椅子にすら乗ることもままならなくなるから、リハビリの強化は切実な目標だ。
今年はアプローチをちょっと変えて、足の拘縮がひどくならないように何か考えるつもり。候補は先日体験したので、これについてはまたお話したいと思う。
リハビリというのは結構辛い。辛いけれどがんばっただけご褒美がもらえる。今年はしっかりと取り組みたいと思う。今年の暮はどうなっているか?ご報告を楽しみにしていてほしい。
すっかり行けていない旅
3つ目の抱負は「旅行に行くこと」。
この数年コロナで旅も思い通りにできなかった。もちろん海外へもすっかりいけてないので、今年は復活してみたいと思う。
2つ目の抱負でも話したように足の拘縮も進んできて、車椅子に座りづらくなってきた。これ以上悪くなってしまうと、妻と二人で気軽にでかけることもできなくなる。
誰かに手伝ってもらわなければならなくなる前に、行けるところに行っておきたい。
世の中の情勢と追いかけっこなのだけど、うまく潜り抜けて旅をできればと思っている。今決まっているのは海外・国内それぞれ1ヵ所。海外だけでなく国内も続けて行きたい。

家族には「そんなに急がなくても大丈夫だよ」そう言われてしまった。体が思うように動かなくなるんじゃないかって少し焦っているのかな?
とにかく抱負2を少しずつ始めてゆっくり動こうと思う。体を壊した後、それでもちょっとは動けるようになったという頃にコロナのおかげで出歩けなくなった。
そういうこともあって、動けるうちに取材やプライベートでもいろいろなところに行ってみたいと思うようになったのだ。それが今年の抱負でもある。
仕事ではたまに出かけることはあったものの、なかなか旅に出ることは難しい時代だった。まだまだ制約も厳しい。ましてや体が思うようにならないボクが出歩くのはいろいろな心配もある。
余談ではあるがボクの主治医やケアマネさんはボクが突拍子もないことを言い出すから、いつもいろいろ考えてくれて大変だと思う。ごめんなさい。
寝返りも打てない、最近では真っ直ぐに車椅子にも座れないボクが海外に行きたいなんて突拍子のないことを言う。
福祉用具の業者さんにも「車椅子はこれの方が楽なんじゃないか」とか「これに変えてみようか?」などと言っているので、本当に大変な思いをさせてしまっていると思う。
要介護5で、見かけ寝たきりのボクが“旅に出る”という突拍子もない話を真面目にするから、周りの皆さんは「わっ」と思っているかもしれない。申し訳ない。
でもボクの希望をなんとか叶えようといろいろな方面で考えてくれる。「神足さん、これはだめですよ」そうはまず言わない。
ありがたいスタッフに囲まれて「要介護5」のしかも障がいのある身で、最大限やりたいことや仕事を続けさせてもらっている。
そんな方々に感謝しながらも今できることをやっていきたいと思う。3つの柱を今年の抱負に、もちろん仕事もしていきたい。
最後になりましたが、皆様にとって平和でいい年になりますように。