山縣選手が
日本新記録!

陸上の山縣亮太選手(29歳)が6月6日ヤマタスポーツパーク陸上競技場(鳥取県)で行われた布勢スプリント男子100m決勝で9秒95の日本新記録を出した。日本の選手としては4人目となる9秒台突入だ。

2012年ロンドンオリンピック、2016年リオデジャネイロオリンピックでは男子100mで準決勝まで進んだ。リオデジャネイロオリンピックの4×100mリレーでは銀メダルだって獲得した。

山縣亮太選手
写真提供:(C)フォート・キシモト

山縣選手とは
中学校と高校が同じ

実は、彼は広島県出身でボクと同じ中学校、高校の卒業生である。彼が中学校に入学してきたとき「陸上ですごい奴がおるらしいぞ」と水球部の大先輩がやっている流川のバーですでに話題になっていた。

「どうやら小学生時代は野球少年で、陸上を掛け持ちしていて、スパイクを履いてる本格的な選手に混じって運動靴で優勝したんだってさあ」なんて話題で持ちきりだった。

山縣選手は、修道高等学校に入学後、数々の競技会で記録を残した。高校1年生のときは国体にも出場し、100mで優勝した。

修道中学校・修道高等学校というのは、男子校で進学校でもあったが、かなり自由な校風だった。だから、やりたいことを自分で考えてやっていける学校でもあった。

もちろん自由には責任が伴う。そんなことを肌から学べる学校だと思っている。山縣選手が活動しやすい環境にあったんじゃないかなと思う。

その後、慶應義塾大学に進学するが「慶應義塾體育會競走部の自由な環境なら自分のやりたいことができるのではないか」との理由で選んだそうだ。

ボクも修道の水球部で国体やインターハイに出場してやりたことをやらせてもらい、慶應義塾大学の水球部に進んだので、その選択のバランスが少しわかるような気がする。大学時代には、同じく故障で悩む時期もあった。

頑張っている姿は
励みになる

足元にも及ばないが、同じスポーツを志したものとして、同窓生として、今回の日本新記録は本当に胸が熱くなった。

残念ながらボクが病気を発症してしまって山縣選手の大学時代の活躍は生の記憶では残っていない。

だが、ロンドンオリンピックのとき「あの山縣選手がオリンピックに行くんだって」と聞いた。病院のベッドでうつうつとなりながら横たわっているときだったが、自分のことのように嬉しかった。

ボクだけではない。このように誰かが頑張っている姿を応援できることは、とても励みになる。知らない誰かが山縣選手の頑張りを見て勇気をもらう。

陸上とは違うことであっても、自分も頑張ってみようかなって気持ちになる。そんなことが日本中、いや世界中のどこかで起こっているとしたら、すごいことだなあって思う。

ロンドンオリンピックのときは100mで準決勝まで行った。走る姿を見て、涙が出た。感動で震えた。それから社会人アスリートとなり、リオデジャネイロオリンピックでは4×100mリレーの第一走者として銀メダルに輝く。

東京オリンピックは、コロナの問題があり、開催には反対の意見もあるのはものすごくよくわかる。「今の日本でできる状況なのか?」って聞かれれば「NO」なのだろう。

けれど、東京オリンピックを目指してきたアスリートの気持ちや、それを応援してきたみんなを思えば「やっぱりオリンピックは開催してあげたいなあ」と考えてしまう。そして、その晴の舞台で彼を見てみたい。

国立競技場

今の陸上選手は強豪ぞろいだ。山縣亮太選手(9.95秒)、サニブラウン アブデルハキーム(9.97秒)、小池祐貴(9.98秒)、桐生祥秀(9.98秒)、多田修平(10.01秒)である。誰が代表に選ばれてもおかしくない。

山縣選手は2019年に肺気胸で、日本選手権や世界陸上を欠場した。それに続いて靭帯を破損したり膝を壊したり、つらい時期を過ごした。その間、仲間達が相次いで9秒台を出した。

マスコミの情報だけを耳にし、かなり心配した。コーチもつけずやっているとも聞いていた。東京オリンピック開催と決まっていたから故障から復活できるのか陰ながら心配していた。

けれど、彼は見事、復活したのだ。病気をしている今のボクにとってはヒーローだ。さらにさらに胸が熱くなる。よく、「神足さんが頑張っているのを見ると、自分ももっと頑張れる気がする」と言われることがあるが、山縣選手の頑張りにはその100倍の力があると思う。

ボクも希望が持てる。今回の日本新記録のニュースは本当に震えた。コーチもつけて一緒に戦っているという。よかった。本当によかった。

そして6月末、大阪のヤンマースタジアム長居で行われた日本陸上競技選手権で、山縣選手は見事オリンピック代表に内定した。

ボクもその選手権を観に行った。これまでずっと応援してきた身としては、感激し、心から嬉しかった。

日本陸上競技選手権を観るコータリさん

注目選手は
たくさん!

もうずいぶん前に購入したのですっかり忘れてしまったが、東京オリンピックのチケットは何を購入できていたんだろうか。たしか、水球と陸上とバスケットボールだったはず。

それに、東京パラリンピックも同様に申し込んだ。この原稿を書いている時点では観客を入れてやるのかも定かではないが、テレビ上でもなんでも応援したい。常識人としては「何呑気なことを言ってるんだ」って言われるかもしれないが、それが本音だ。

山縣選手のここまでの道のりを思えば、地道な毎日の練習や何十倍の努力も、並大抵の精神力でなければ乗り越えられなかったと思う。「想像の、さらに何十倍なんだろうなあ」とも思っている。

最後の選手権やオリンピックでのパフォーマンスは、今までの集大成として美しい。今までの懸命さは、表の部分でしか見えない。その美しいパフォーマンスを見てみたい。

もちろん山縣選手に限ったことではない。オリンピックに出るということはその国の代表。その国の最高峰のパフォーマンスが見られるということだ。そこまでの努力と極める姿には感動する。

ほかにもいろいろ注目している選手がいる。水球は吉田拓馬選手。ポジションは、オールラウンダー。左右どちらでもできるという強みがある。2019年の世界選手権では成功率45%という精度の高いシュートを打つすごい選手。

あと、広島水球クラブOBの高田充選手も内定している。カウンター攻撃が持ち味。オリンピック初出場の楽しみな選手。水泳だと、池江璃花子選手や入江陵介選手、瀬戸大也選手、貴田裕美選手にも注目している。

パラリンピックでは、右半身だけで泳ぐバランスの王者、水泳の江島大佑選手。ボッチャの江崎駿選手。車椅子ラグビーの池透暢選手。数えると、きりがない。

コロナが発生する前には、パラスポーツの選手権をよく観に行った。ラグビーやバスケット、バドミントンに水泳。力強さがみなぎっていた。ルールや点数方法などが特殊なものもあるが、どれもトップアスリートの戦いが観戦でき、感動をもらった。東京パラリンピックのときは、是非また観に行きたいと思っていた。

応援するコータリさん

若者を
応援したい!

いつの頃からか、若者を応援したいという気持ちが強くなった。もちろん、自分のできる範囲でだが、好きなことをやっている大好きな若者を応援したい。

頑張っている姿に弱い。これも年齢相応の行いなんだろうか。

新国立競技場とコータリさん

自分が若い頃、スポーツの世界でも出版業界でも、大先輩にいろいろ教わった。社会勉強も然り、学んだり、練習したり、ライバルになったり。精神力も鍛えられたし、ときには喝も入れてもらった。

そんなことの真似事をしているのかもしれない。これからの世の中をおもしろく快適にしていってくれるのは若者たちである。自分のおもしろいと思ったことを続けるってことは結構大変なことではあるんだけど、やっぱり信じて続けてみる価値はあると思うんだよね。

あ、あと余談なんだけど、「山縣選手って気遣いのできる優しさがある人なんだ」って思う。忙しいだろうにTwitterで返信をくれたりもする。周りを見れるってことは気苦労もあるってことだけど、彼の人間性も含めて今のボクは大絶賛。頭のいい人なんだろうなあ。これからも応援したい。

日本陸上競技選手権の会場
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