高齢者の中には、パンやスナックなどのパサパサしたものが食べにくい、義歯をつけると痛みがあるという方がいます。
これらは、口腔内が乾燥すると起こりやすい症状の一つです。
今回は、高齢者の口腔内が乾燥すると、どのようなことが起こりやすいか、またその原因と予防法についてお話しします。
口腔内の乾燥で起こること
口腔内が乾燥すると、主に次のようなリスクが高まるとされています。
- むし歯
- 歯周病
- 義歯の装着困難
- 味覚異常
- 食べる機能の低下
- 感染症
外から入ってくる細菌が定着しやすくなるため、免疫力や体力が低下している高齢者は、感染症には特に注意が必要です。
有害な細菌が口腔内で増えると、さまざまな感染症を引き起こしやすなるだけでなく、全身的な病気にも影響を与える可能性があります。
特に真菌感染症である、口腔カンジダ症には注意が必要です。高齢者の口腔内の乾燥は、口の中の菌のバランスを崩す原因となり、口腔カンジダ症が生じやすい環境となってしまいます。
口腔内には多くの微生物が存在しており、カンジダ菌もその一つです。通常は、カンジダ菌で健康問題が生じることはありませんが、口腔内の菌のバランスが保てずにカンジダ菌が増えると口腔カンジダ症を発症します。
発症すると口の中が白い膜で覆われたり、びらん※や痛みなどが出るので、注意が必要です。
※皮膚や粘膜の表皮が欠損し、下部組織が露出した状態。いわゆるただれた状態
口腔内が乾燥する原因と予防的ケア
唾液の問題
人は1日に1~1.5Lの唾液を分泌し、口腔内は唾液に覆われて湿潤しています。しかし高齢者は、病気や薬の影響を受け、唾液が減少しやすくなっています。高齢者が服用している薬の多くに、唾液分泌が抑制される抗コリン作用があるためです。
抗コリン作用は、口腔内の乾燥に加えて便秘などの問題も生じやすくなります。長期間に多種類の薬を服用している場合は、かかりつけ医とよく相談したほうが良いでしょう。
脱水
唾液は血液からつくられているため、脱水症になると唾液が減少し、口腔内が乾燥しやすくなります。
脱水傾向になると、自然と水分が欲しくなりますが、高齢者は、口腔内やのどの渇きを感じにくくなっていることもあります。意識しないと水分が十分にとれていないこともあるので注意してください。
体に必要な水分を少しずつとると、脱水の予防に加えて口腔内の乾燥予防になります。日頃から水分の量を確認し、摂取の方法を工夫しましょう。
口呼吸
マスクをしていると口元が隠れるため、口が開いた状態でいることがあるのではないでしょうか?また、テレビなど何かに集中していると口を開けたままになっていることもあるかもしれません。
このように口を開けた状態での呼吸が日常的になると、口腔内が乾燥しやすくなります。
また、加齢とともに、口を閉じるための口唇の力が低下しやすくなります。口唇の力を維持するためには、体操を行うことも大切です。
口唇の体操の例
- 「イー」としっかり口唇を横に引く
- 「ウー」としっかり口唇をすぼます
- 左右のほっぺをしっかり膨らます

このような体操はマスクをしていてもできるので、すき間時間を利用して行い、口を閉じる力を維持していきましょう。
環境
口呼吸を予防するためには、口を閉じて鼻で呼吸することが大切になります。しかし、湿度が低い冬は、口腔内だけでなく鼻の中も乾燥しやすくなります。
そのため、普段過ごしている部屋の湿度を50%程度に調整しておくことを意識してください。特に、寝ている間は唾液の分泌量も減少するため、就寝時は枕元近くの湿度を確認しておきましょう。
ただし、普段から鼻づまりがある方は、鼻の病気の原因となる可能性もありますので、耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。
口腔ケアのタイミング
就寝中は口腔内が最も乾燥しやすくなるため、寝る前に口の中をきれいにし、湿潤した状態にしておくことが大切です。その際、口腔内用の保湿ジェルや保湿スプレーを使用するのも良いでしょう。
また、毎食後の口腔ケアにより、口腔内を清潔に保っておくことも重要です。
朝と寝る前には口腔ケアを行っても、昼食後には口腔ケアを行わないといった方も多く見かけます。しかし、食事での口腔内の汚れは、長時間そのままの状態であると、むし歯や歯周病、感染症などの原因となります。昼食後の口腔ケアも忘れずに行うようにしましょう。
そして、緊張状態も口腔内の乾燥と関係があります。
人前で話すときに口やのどの渇きを覚えたことはありませんか?これは緊張が原因なのです。緊張すると、サラサラの唾液の分泌が止まり、ネバネバとした唾液が分泌され、口腔内が乾燥しやすくなります。
しかし、リラックスした状態では、サラサラした唾液が多く出ます。普段から音楽を聴いたり、心がくつろげる時間をもちましょう。

今回は高齢者の口腔内の乾燥について、一般的な原因と予防についてお伝えしました。
一方で、シェーグレン症候群や糖尿病など、さまざまな病気によって口腔内が乾燥することもあります。乾燥状態が続く場合は、かかりつけ医などに相談するようにしましょう。