こんにちは。理学療法士でライターの中川恵子です。
介護で疲れているのに、イライラしたり、落ち込んだりして眠りたいのに眠れない、そんなお悩みはありませんか?
アロマは未病と呼ばれる不調状態に働きかけることができ、睡眠の質向上にも役立つとされています。
今回は、これまで20年にわたって父母や義父母の介護をされている福祉アロマケア心香・芳崎欣子(よしざきよしこ)さんに、介護に役立つアロマ活用法についてお話をお伺いしました。
なぜ香りがストレスにいいのか
介護によるストレスで、眠れなくなったという話をよく聞きます。例えば、次のような事例です。
- 夜中の排泄介助に付き添い、睡眠が中断。朝起きたときに頭がボーっとしている
- 要介護者さんが夜中にごそごそ、ウロウロして、転倒したらどうしようなど心配、気になって眠れない
- ついイラっとして「あんなこと言わなければよかった」と気持ちが落ち込み、気になって眠れない
- 介護のイライラを思い出して眠れない
- 仕事や介護に追われて、神経がピリピリして目が冴えてしまって眠りが浅い
こういった場合、アロマはどのような効果を生むのでしょうか。嗅覚では何の香りかわからなくても、アロマの香りの芳香分子が鼻から脳に届き、先に脳の感情を司る部分を癒してくれる作用があります。
強いストレスやイライラを感じたときは、外出して気分転換でもしたほうが良いのですが、そもそも在宅で介護をしていると、なかなか外出できませんよね。
そんなとき、「精油(エッセンシャルオイル)」を試してみてください。精油の小瓶を活用し、イライラして眠れない負のスパイラルを断ち切るときに使っていただけたらと思います。
ぐっすり眠りたいときのアロマおすすめベスト3
3位:爽やかな酸味のある甘酸っぱい香りの「ラベンダー・アングスティフォリア(真正ラベンダー、イングリッシュラベンダー)」
ラベンダーといえば、リラックスの代表選手。神経系統を鎮静させる効果が期待でき、よく睡眠時に活用されます。抗菌や抗ウィルス、抗真菌などにも優れ、お掃除やクローゼットの防虫、心身の調整を期待できるなど、万能な精油といわれています。
ラベンダーの香りは意外なことに大好き派と苦手派、好き嫌いがはっきり分かれる香りなので、第3位にしています。
2位:甘みの中にちょっとほろ苦い、柑橘系の香りの「マンダリン」
「気になることがあって眠れない」「あんなふうに言わなければ良かった」など、緊張や不安が原因で眠りにくいときにおすすめの精油です。マンダリンの香りは、不足するとうつ病発症の原因にもなるセロトニン(幸せホルモン)の合成にも関係しており、中枢神経に働く香りといわれています。
また、強い抗不安作用が期待できる「アントラニル酸ジメチル」が含まれており、「休んでいいよ」「よくがんばってるね」と、優しく包み込んでくれる香りです。
1位:上品で優しい大人の柑橘系の香り。アールグレイの香り付けにも使われる「ベルガモット」
ベルガモットに含まれている「酢酸リナリル」「リナロール」などが神経バランスを整えて、不安を和らげ、穏やかな眠りを誘ってくれます。ベルガモットは「天然の抗うつ剤」ともいわれ、季節性の冬季鬱の際に生じる抑うつ的な感情を和らげます。
番外編:ユーカリに似た、すっきりとした香りの「ラヴィンツァラ」
メーカーさんによっては扱っていない精油ですが、原産のマダガスタルでは、無人島に行くならラヴィンツァラを持っていけというくらいの使い勝手の良い精油です。
ラヴィンツァラに含まれている「α-テルピネオール」は、神経をリラックスさせ、安眠を誘う香りといわれています。また、気管支に働きかける「1.8シネオール」が含まれており、感染症予防の活用としてもおすすめの精油です。

おすすめのアロマ活用法
介護や仕事で忙しい方でも活用しやすいように、道具いらずの簡単なアロマ活用法をご紹介いたします。
準備するもの
- ハンカチやティッシュ
- 好きな香りの精油
使い方
- 好きな香りを選びましょう。
- 眠るときに、ハンカチやティッシュにアロマをぽとっと1~2滴垂らします。
- 香りを垂らしたハンカチやティッシュをパタパタして、空間に香りを広げましょう。
- ハンカチやティッシュを枕の下に入れて寝ます。
注意していただきたいこと
アロマをたくさん垂らしたほうが効果的だと思うかもしれませんが、量が多すぎると香りが強すぎて脳が疲れてしまい、かえって眠れなくなってしまいます。
特に、ラベンダーは濃度が高くなると交感神経を刺激し、眠れなくなってしまうので注意が必要です。必ずハンカチやティッシュをパタパタさせて、香りを揮発させてから枕の下などに入れましょう。
柑橘系の精油は開封後半年、そのほかの精油は開封後1年を目安に使いきりましょう。
精油の中には、使用上の注意やタブーがあるものがありますので、確認してから使用することをおすすめいたします。例えば、血圧を下げる効果があるといわれているラベンダーは、起立性低血圧などの症状があると、悪影響を及ぼすことがあるので気をつけて使用してください。
毎日同じ香りを使っていると、香りに慣れてしまい、効果を感じにくくなります。植物であるアロマは人間にとっては異物になります。アレルギーを起こすリスクが高まりますので、同じ香りばかり使い続けないようにしましょう。
親世代へのアロマ導入の方法
アロマでリラックスできると思っても、親世代になると「慣れないことはしない」「新しいことには拒否が強い」という方もいます。信頼関係が築けている身内の方が「私はこれをしたらよく眠れたよ」「今日試してみようか?」と、やんわりすすめてみてはいかがでしょうか。
仕事や家事に忙しいと、毎日アロマを使用するのが面倒になってしまうかもしれません。そんなときはアロマシールを活用してみてはいかがでしょうか。
アロマシールは、ネットなどで購入することができます。すでに香りが染み込んだアロマシールも販売されていますので、お好みの香りタイプを用意して、枕にシールを貼ってみると良いでしょう。

今回は、眠れないときに効果が期待できる精油を、芳崎さんにご紹介していただきました。
個人差はあると思いますが、私はベルガモットとマンダリンを購入して、寝る前にティッシュに垂らしてパタパタしてから枕の下に置いて寝たところ、睡眠の質が良くなったと感じています。
アロマを上手に活用してぐっすり眠ることで、体調を整えてもらえたらうれしい限りです。