こんにちは。千葉県の房総地域の地域包括支援センターで、社会福祉士として勤務する藤野雅一です。
今回は年末から年始に実際に発生したケースを基に、「独居高齢者の方の入院事情」についてお話ししたいと思います。
腰痛が原因でショートステイの受け入れを拒否される
私たちの担当する天羽地区には約4,800人の高齢者の方がおり、そのうちの約1割が独居高齢者の方です。もちろん独居高齢者の方と言っても、すべての方が介護を必要としているわけではありません。とはいえ、身寄りの少ない独居高齢者の方が徐々に増加していることは、日々の活動の中でひしひしと感じます。
それを一番実感する場面が、体調が急変して入院が必要となったときです。
昨年末、千葉県の房総地域では大規模な断水が約1週間ほど続きました。そのときに給水所から水を運んでいるとき、腰を痛めてベッドから起き上がることができなくなってしまった独居高齢者の方のケースを取り上げたいと思います。
このケースについて私たちが関知したのは、主治医の連絡からでした。腰痛が悪化してから数日間は、主治医が往診で様子を見ていました。しかし介護ベッドからの起き上がりも困難になり、主治医から「福祉施設におけるショートスティの検討を」と連絡があったのです。この連絡を受けて、私たちは地域のショートスティ事業所に連絡を行いました。
しかし、どこの事業所も満床であったことに加えて、新型コロナウィルスの感染防止のために、利用要件のハードルも高くなっていました。また、腰痛がひどく起き上がれない容態では福祉施設での受け入れが困難だったのです。
福祉事業所はあくまでも生活の場です。体を動かすことが困難なほどの痛みがあったり、認知症を発症していて自傷・他害の行為を行う方の受け入れについては困難なことが多いのです。福祉施設での受け入れが難しいことがわかりましたので、その旨を主治医に報告して救急搬送による入院を提案。結果、主治医より入院についての許可が出ましたので救急車の要請を行いました。
入院時の保証人探しで苦心するケースも
救急搬送された病院で検査をしたところ、腰椎(ようつい)圧迫骨折との診断が下りましたが、医師からの判断は「入院までの対処の必要はない」とのことでした。とはいえ、独居でベッドから起き上がることも困難であり、1人でトイレにも行けない状況の高齢者の方をこのまま自宅に帰すことはできません。
そこで、私たちは近隣の整形外科で病棟を持っている医療機関に事情を説明して入院のお願いをしました。運良く連絡をした病院でベッドが空いており、入院までこじつけることができたのです。
今回、入院の手続きなどは近隣にご親族が住んでいましたので対応していただきました。しかし、身寄りのない高齢者の方の場合は入院時の保証人について苦慮することが多いです。そんなときは関係性があまりない場合でも親族を探し、書類の対応について依頼を行います。
近親者がいない独居高齢者の方には「成年後見制度」を
近親者がいないケースも数多く存在します。生活保護の対象者であれば生活保護担当者が入院時の諸対応を担ってくれるのですが、そうでない方の場合は対応が難しくなります。
私たちは日頃から、地域住民や身寄りの薄い独居高齢者の方には「成年後見制度」について説明しています。成年後見制度の活用はすぐには行えず、場合によっては認定まで半年ほど時間を要することもありますので、日程調整が必要な方には早期にご案内をしているところです。
すぐに体調の変化に気づける体制を構築
独居高齢者の方の場合、心身に不調が発生しても気がつく方がおらず、気づいたときには重篤化していることが多いです。なので、私たちは早期の段階からヘルパー利用やデイサービス利用につなげることで、心身に変調があった際に気づける体制の構築を目指しています。
ヘルパー利用やデイサービス利用を頑なに拒む方もおります。そのような方には、往診してくれる先生を紹介し、定期的に人の目が入る体制を構築しましょう。また、配食サービスなどの介護保険外のサービスの導入や民生委員の方、近隣住民などにも協力いただいております。
何より、主治医を持つことが重要となります。入院が必要な状態となったとき、単に救急車を呼んで入院先を探すよりも、主治医の指示で動く方が物事の運びが速くなるからです。
地域の機関や住民と協力して適切な医療を
独居高齢者の方の入院には多くの対応が必要です。私たちは高齢者の方が心身の健康を保ち、在宅で元気にご生活できるようさまざまな取り組みをしています。しかし、それでも入院が必要となる事態も生じます。そんなときは、医療機関を含め地域のさまざまな関係機関や住民と力を合わせ、適切な医療が受けられるように活動していきましょう。