いいね!を押すと最新の介護ニュースを毎日お届け

施設数No.1老人ホーム検索サイト

入居相談センター(無料)9:00〜19:00年中無休
0120-370-915
第290回

ドナネマブの効果と副作用は?日本承認されたアルツハイマー新薬を専門家が解説

最終更新日時 2024/09/03
目 次

ドナネマブとは?日本での承認状況と期待される効果

アルツハイマー病の治療に、新たな希望の光が差し込んできました。その名も「ドナネマブ」。この薬は、2023年9月に承認されたレカネマブに続く、アルツハイマー病の進行を遅らせる新薬として注目を集めています。

2024年8月1日、厚生労働省の専門部会がドナネマブの製造販売を認めると発表したのです。これにより、日本でも近い将来、アルツハイマー病患者さんの新たな治療選択肢として使用できるようになる見込みです。

レカネマブに続き、ドナネマブも日本で使えるようになれば、アルツハイマー病の患者さんやそのご家族にとって、治療の選択肢が広がり、新たな希望をもたらすことになりそうです。

ドナネマブの特徴と働き方:脳内のやっかいものを片付ける

ドナネマブは、私たちの体にある「抗体」という物質を人工的に作ったもので、脳内にたまった有害なアミロイドβタンパク質の塊を見つけ出し、それを取り除く薬です。

特筆すべきは、ドナネマブが「ピログルタミル化」という特殊な変化を受けたアミロイドβに選択的に作用する点です。これにより、より効率的にアミロイドプラークを除去できると考えられています。

実際の効果はどうなのでしょうか。臨床試験の結果を見ると、驚くべきことがわかりました。ドナネマブを使った患者さんでは、18ヵ月後には脳内の有害なタンパク質の塊が平均で84%も減っていたのです。一方、薬を使わなかった人では、わずか1%しか減っていませんでした。これは、かなりの違いと言えるでしょう。

日本におけるドナネマブ承認の流れと今後の見通し

ドナネマブの日本での承認手続きは、着々と進んでいます。2024年8月1日に厚生労働省の専門部会で承認が了承されたことを受け、今後は厚生労働大臣による正式な承認を経て、薬価(患者さんが支払う薬の値段)が決定されます。

専門家の間では、2024年の秋から冬にかけて、実際の臨床現場でドナネマブが使用可能になるのではないかと予想されています。これは、アルツハイマー病患者さんとそのご家族にとって、大きな希望となるでしょう。

ただし、新しい薬なので、使い始めてからも慎重に様子を見ていく必要があります。特に気をつけなければならないのが、ARIA(アミロイド関連画像異常)と呼ばれる副作用です。これは、脳の一部が一時的に腫れたり、小さな出血を起こしたりする症状です。定期的に脳のMRI検査を受けて、変化がないかしっかりチェックすることが大切です。

臨床試験から見えてきたドナネマブの効果

ドナネマブの効果を調べるため、大規模な臨床試験が行われました。これは、「トレイルブレイザー・ALZ 2試験」と呼ばれるこの試験には、60歳から85歳までの方々で、軽い物忘れがある人から軽度のアルツハイマー病の人まで1,736人を対象にしたものです。

結果はとても興味深いものでした。ドナネマブを使った人たちは、使わなかった人たちと比べて、記憶力や日常生活の能力の低下が明らかに遅くなっていたのです。

具体的な数字を見てみましょう。CDR-SBという、認知症の進行度を測る物差しでは、29%も症状の進行が遅くなりました。また、iADRSという別の指標でも、22%の改善が見られました。

ドナネマブ臨床実験の結果

さらに詳しく分析してみると、もっと面白いことがわかりました。まだ症状が軽い人ほど、薬の効果が大きかったのです。例えば、軽度認知障害の人では、なんと60%も症状の進行が遅くなりました。また、75歳より若い人たちでも、45%以上の改善が見られました。

これらの結果は、アルツハイマー病の早い段階で治療を始めることの大切さを教えてくれています。

では、実際の生活にどのような影響があるのでしょうか。

いくつか具体的な例を挙げてみましょう。

ドナネマブを使った人の47%は、1年後に症状がほとんど進行していませんでした。薬を使わなかった人では、29%しかそういう人がいなかったことを考えると、大きな違いです。

また、症状が次の段階に進むリスクも39%も下がりました。つまり、今の状態を長く保てる可能性が高まったということです。さらに、同じくらい症状が進むまでの期間が、平均で7.5ヵ月も延びました

ただし、大切なことを忘れてはいけません。これらの数字はあくまで平均値です。人によって効果の現れ方は違います。また、ドナネマブはアルツハイマー病を完全に治す薬ではありません。進行を遅らせる薬だということを、しっかり理解しておく必要があります。

ドナネマブとレカネマブ、新しい2つの薬の違い

ドナネマブ以外にもアルツハイマー病新薬として最近話題になっているのがレカネマブです。レカネマブはドナネマブに先駆け、2023年9月に承認されています。

どちらも脳内の有害なタンパク質を取り除く働きがありますが、それぞれに特徴があります。ここでは、この2つの薬の違いを、わかりやすく説明していきましょう。

アミロイドβへの作用の違い

ドナネマブとレカネマブは、どちらも脳内の有害なタンパク質の塊であるであるアミロイドβを標的としていますが、その作用の仕方に違いがあります

レカネマブは、タンパク質が固まり始めた比較的小さな塊から、大きな塊まで幅広く対応します。特に、「プロトフィブリル」と呼ばれる中くらいの大きさの塊に効果があるとされています。この中くらいの塊が、特に神経細胞に悪さをすると考えられているのです。

一方、ドナネマブは主に、長い間脳内にたまった大きな塊を狙い撃ちします。特に「ピログルタミル化」という変化を受けたタンパク質の塊に効果があります。

この違いは、それぞれの薬の特徴を表しています。レカネマブは、病気の比較的早い段階から使えるかもしれません。対して、ドナネマブは長年たまった塊を効率よく取り除けるので、ある程度病気が進んだ段階でも効果を発揮する可能性があります

効力の強さと副作用

ドナネマブとレカネマブ、どちらの薬がより効くのか、直接比べた研究はまだありません。でも、それぞれの臨床試験の結果から、ある程度の比較はできそうです。

まず、効果について見てみましょう。

ドナネマブを18ヵ月使った人たちは、使わなかった人たちと比べて、認知機能の低下が29%遅くなりました。一方、レカネマブでは27%遅くなりました。数字だけ見ると、ほとんど変わらないように思えます。

ところが、脳内のタンパク質の塊を取り除く力では、少し違いが出ました。ドナネマブでは18ヵ月後に平均84%の塊が減少したのに対し、レカネマブでは68%でした。ドナネマブの方が、塊を取り除く力が少し強いように思えます。

ただし、これらの数字を単純に比べるのは難しいです。それぞれの薬で、試験に参加した人たちの条件が違うからです。どちらが優れているかを断言するのは、まだ早いでしょう。

次に、副作用について見てみましょう。特に注目されているのが「アリア」と呼ばれる副作用です。これは、脳の一部が腫れたり(ARIA-E)、小さな出血を起こしたり(ARIA-H)する症状です。

ドナネマブでは、ARIA-Eが24.0%、ARIA-Hが31.4%の人に見られました。レカネマブでは、ARIA-Eが12.6%、ARIA-Hが17.3%でした。数字だけ見ると、ドナネマブの方が副作用が出やすいように思えます。

でも、心配しすぎる必要はありません。多くの場合、このアリアという副作用は症状が出ません。また、定期的な検査で早めに見つけて、適切に対処すれば問題ないことがほとんどです

通院回数と生活への影響

ドナネマブとレカネマブは、使い方にも違いがあります。これは、患者さんやご家族の生活に直接関わってくる大切なポイントです。

ドナネマブは月に1回、レカネマブは2週間に1回、それぞれ点滴で薬を投与します。単純に考えると、ドナネマブの方が通院の回数が少なくて済みそうです。特に、病院が遠い人や、仕事や家事で忙しい介護者の方にとっては、この違いは大きいかもしれません。

ただ、レカネマブを作っている会社は、今、自分で注射できる薬の開発も進めているそうです。もしこれが実現すれば、通院の回数をさらに減らせるかもしれません。

薬を使う期間にも違いがあります。ドナネマブは、脳内のタンパク質の塊が十分に減ったら、薬の使用をやめられる可能性があります。実際、臨床試験では半分くらいの人が12ヵ月で、7割くらいの人が18ヵ月で薬の使用を終えることができました。

一方、レカネマブは今のところ、ずっと使い続ける必要があるとされています。

ドナネマブの「薬を使い終わる」という考え方は、患者さんの気持ちを前向きにする可能性があります。治療の終わりが見えることで、頑張ろうという気持ちになれるかもしれません。

ただし、専門家の中には、タンパク質の塊を取り除いても、認知機能の低下が続く可能性があるため、長く薬を使い続ける必要があるかもしれないと指摘する人もいます。この点については、もっと研究を重ねて、長い目で見ていく必要がありそうです。

通院の回数については、一見するとドナネマブの方が患者さんの負担が少なそうです。でも、認知症の専門医の中には、定期的に病院に行くことにもいいところがあると言う人もいます。例えば、通院をきっかけに外出の機会が増えたり、家族との時間を作ったりすることで、患者さんの生活が豊かになる可能性があるのです。

画像提供:イラストAC

結局のところ、どちらの薬を選ぶかは、患者さん一人一人の状況や生活スタイル、そして主治医との相談によって決めるのがよいでしょう。両方の薬の特徴をよく理解した上で、自分に合った選択をすることが大切です。

ドナネマブ治療の実際~誰が使えて、何に気をつけるべき?

ドナネマブは確かに画期的な薬です。でも、すべてのアルツハイマー病の患者さんに向いているわけではありません。ここでは、ドナネマブを使える人の条件や、治療を始める時の注意点、そして治療中に気をつけることについて、くわしく見ていきましょう。

ドナネマブを使える人

ドナネマブは主に、アルツハイマー病の初期段階の方に効果があると考えられています。具体的には、こんな方々が対象になります。

まず、軽度認知障害(MCI)の方。これは、年齢相応以上の物忘れはあるけれど、日常生活にはあまり支障がない状態です。次に、軽度のアルツハイマー型認知症の方。この段階では、物忘れが進んで日常生活に少し影響が出始めますが、まだ自立した生活が可能です。

年齢的には60歳から85歳くらいの方が対象です。また、認知機能を測る検査で、ある程度以上の点数(MMSEという検査で20~28点)の方が適しています。

特に興味深いのは、ドナネマブがより早い段階で高い効果を示す可能性があるという点です。臨床試験の結果を見ると、軽度認知障害の人では症状の進行が60%も遅くなったそうです。また、75歳より若い人では、45%以上の改善が見られました

これらの結果は、アルツハイマー病の早期発見と早期治療がとても大切だということを教えてくれています。でも現実には、多くの方が症状がかなり進んでから病院を受診するケースが多いのが現状です。

早めに気づくために、こんな症状に注意してみてください。最近の出来事を忘れやすくなった、同じことを何度も聞いたり言ったりする、約束の日時や場所を間違えることが増えた、慣れた道でも迷うことがある、財布や鍵など物の置き場所を頻繁に忘れる、複雑な作業や計画を立てることが難しくなった、などです。

これらの症状があるからといって、必ずしもアルツハイマー病というわけではありません。でも、心配な時は早めに専門医に相談してみるのがいいでしょう。早く分かれば、それだけ対策を立てやすくなります。

なお、アルツハイマー病の診断には、いくつかの検査が必要です。認知機能検査はもちろん、脳のMRI検査や、アミロイドPET検査、脳脊髄液検査なども行われることがあります。これらの検査で、脳内のタンパク質の状態を確認し、ドナネマブが効果を発揮できるかどうかを判断します。

副作用と安全性~定期検査で安全に使う

ドナネマブを使う上で最も気をつけなければならないのが、「アリア(ARIA)」という副作用です。アリアには主に2種類あります。一つは脳の一部が腫れる「ARIA-E」、もう一つは脳内で小さな出血が起こる「ARIA-H」です。

臨床試験では、ドナネマブを使った人の24.0%にARIA-E、31.4%にARIA-Hが見られました。一見するとこの数字は高く感じるかもしれません。でも、大切なのは、多くのアリアが症状を伴わないこと、そして適切な対応で管理できるということです。

アリアへの対処法としては、まず定期的なMRI検査があります。治療を始めてからも、決まったスケジュールでMRI検査を受けて、変化がないかチェックします。また、頭痛やめまい、視力の変化などの症状が出たら、すぐに医師に相談することが大切です。

重度のアリアが起きた場合は、症状が落ち着くまでドナネマブの投与を一時的に中断することもあります。症状の程度によっては、投与量を調整する場合もあるでしょう。

なお、アリア以外にも注意すべき副作用があります。副作用のリスクを最小限に抑えるため、治療中は定期的な検査と丁寧な経過観察が欠かせません。医師や看護師とよくコミュニケーションを取り、気になることがあればすぐに相談することが大切です。

画像提供:イラストAC

ドナネマブの治療にかかる費用負担

ドナネマブの薬価(患者さんが支払う薬の価格)はまだ決まっていませんが、アメリカでの価格を参考にすると、年間の治療費は約500万円台になる見込みです

日本では、ドナネマブは保険が適用される予定ですが、患者さんの自己負担額は決して少なくないかもしれません。例えば、1割負担の場合でも年間50万円程度の自己負担が必要になる可能性があります。

ただし、高額療養費制度を利用すると、月々の医療費の自己負担額に上限が設けられます。例えば、70歳以上で年収が370万円以上770万円未満の方の場合、月々の上限額は44,400円です。これにより、経済的な負担をある程度抑えることができます。

ドナネマブの投与期間は人によって違います。臨床試験では、約半数の人が12ヵ月で、約70%の人が18ヵ月で投与を終了できました。これは、脳内のタンパク質の塊が十分に減ったためです。つまり、すべての人が何年も続けて治療を受ける必要はないかもしれません。

しかし、治療費以外にもいろいろな費用がかかることを覚えておきましょう。定期的なMRI検査の費用、アミロイドPET検査の費用(現時点では保険適用外です)、病院への交通費、介護する人の負担(時間的にも経済的にも)などです。

これらを全部合わせると、ドナネマブ治療はかなりの出費になります。認知機能の低下を遅らせることができれば、患者さんの生活の質を保ち、介護の負担を減らせる可能性があります。とはいえ、服用している間も認知機能の低下が完全に止まっているわけではないため費用対効果を感じにくいようです。

ドナネマブ治療を検討する時は、家族でよく話し合い、主治医とも相談することをおすすめします。治療費の負担は可能か、期待される効果と副作用のリスクのバランスはどうか、定期的な通院や検査は可能か、家族のサポート体制は整っているか、といった点をしっかり考えましょう。

また、お住まいの地域によっては、認知症治療に関する独自の助成制度がある場合もあります。地域の福祉課や地域包括支援センターに相談してみるのもいいでしょう。

ドナネマブは確かに画期的な薬です。でも、万能薬ではありません。適切な人を選び、慎重に治療を進めていくことが大切です。また、薬による治療だけでなく、バランスの取れた食事、適度な運動、人との交流なども、認知機能を保つ上で重要な役割を果たします。総合的なアプローチで、アルツハイマー病と向き合っていくことが大切です。

関連記事
「認知症の親がお風呂に入らない…」嫌がる理由や家族の対応方法、声かけ例まで詳しく解説
「認知症の親がお風呂に入らない…」嫌がる理由や家族の対応方法、声かけ例まで詳しく解説

髙橋 秀明
一般社団法人 千葉市認知症介護指導者の会 理事
2025/03/04
認知症・介護を描いたおすすめ映画10選!感動作から介護のヒントを得られる作品まで紹介
認知症・介護を描いたおすすめ映画10選!感動作から介護のヒントを得られる作品まで紹介

山崎 晋平
介護経営コンサルタント
2025/01/23

認知症で『人が見える』幻覚の正体とは?家族介護者が知るべき対応法

!
記事へのご要望
お待ちしてます


この記事へのご要望、
お聞かせください

みんなの介護は皆さまの声をもとに制作を行っています。
本記事について「この箇所をより詳しく知りたい」「こんな解説があればもっとわかりやすい」などのご意見を、ぜひお聞かせください。

年齢

ご要望を
受け付けました!

貴重なご意見を
ありがとうございました。

頂戴したご意見は今後のより良い記事づくりの
参考にさせていただきます!

【まずはLINE登録】
希望に合った施設をご紹介!