皆さんはフードバンクという言葉を聞いたことはありますか?
主に「食品ロス」の減少を目指すため、廃棄されてしまう食品を生活困窮者などに配布するボランティア活動を指しています。
今回は町田市の事例をもとに、フードバンク事業がどのように提供されているのかを解説します。
フードバンク事業の成り立ち
消費者庁では、フードバンクを次のように定義しています。
もともとは本来食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう「食品ロス」を減らしていくため、世界的な機運が高まったことから日本でも実施されるようになりました。
政府は2019年に食品リサイクル法を制定し、食品関連事業者から発生する事業系食品ロスを、2000年度に547万トンだったものを2030年度までに273万トンに半減させる目標を設定しています。農林水産省によれば、2019年には事業系食品ロス量が309万トンにまで減少しているとされています。
2019年10月には「食品ロス削減推進法」が施行され、2020年3月に食品ロスの削減の推進に関する基本方針を閣議決定。フードバンク活動の支援のための国の具体的方策が示されることになりました。
こうして政府の後押しを受けて広がりつつあるフードバンク活動は、食品ロスの削減という目的のほか、生活困窮者への支援などの観点からも意義深い取り組みとして位置づけられています。
農林水産省によると、2022年5月時点で約180のフードバンク団体(フードパントリー、子ども食堂を除く)があるとされています。
どんな方が利用できるのか?
では、実際にどんな方が利用しているのでしょうか。私が勤める町田市を例にすると、市内のひとり親世帯、生活困窮世帯、子ども食堂、無料学習塾、地域活動団体などです。
町田市では社会福祉協議会が中心となり、「フードバンクまちだ」という名称で運営を行っています。
このフードバンクまちだは、実にさまざまな団体が連携して構成されています。町田市社会福祉協議会やフードバンクTAMなどの福祉団体のほか、地元サッカークラブや無印良品などといった一般企業も参画しています。
各団体で対象となる食品※の受付を行って保管し、相談先が食品の配布を行っています。
※お米、お菓子、インスタント・レトルト食品、缶詰・防災品、乾物・乾麺など、未開封で外装の破損などがなく、賞味期限が2ヵ月以上あるもの
また、関連事業としてフードドライブ事業も行っています。フードドライブとは、企業だけではなく、家庭で余っている食品を持ち寄り、それらをまとめて地域の窓口へ持ち込んで寄付する活動です。
企業だけではなく、各家庭でも本来食べられるはずなのに捨てられてしまった食品がたくさんあり、未使用・未開封のまま捨てられていることがあります。
町田市内では常設でフードバンク事務局を担う社会福祉協議会で窓口を担い、各地域で臨時で窓口を開いて寄付を募っています。
ただし、町田市では直接利用対象者にフードドライブ事務局から直接食料品などの配布は行っておりません。基本的には町田市子ども家庭支援センターや高齢者支援センター(包括支援センター)、障がい者支援センターなどが対応をしています。

フードバンクは食料品を渡すだけの支援ではない
さまざまな団体が複雑に入り組んでいて、もっとシンプルな仕組みにしたほうがいいのではないかと考える人もいるかもしれません。
しかし、フードバンク事業を利用される方の中には、地域で何も支援を受けられず孤立していたり、食料品を渡しても再び生活上何らかの支障が出てしまう状況に陥ってしまうケースが多いからです。
つまり、生活上の支障が解決されない限り食料品が必要になり続けます。状況が悪化すれば、その方の生活自体が立ち行かない状況にも陥ってしまいます。
そのため、対象者の日々の暮らしを確認し、食料品の提供だけではなくさまざまな相談支援機関が介入することで、少しでも生活に困らないよう支援していくための仕組みにしたのです。
フードバンク事業は各自治体によって運営主体が異なります。各市区町村の窓口は、農林水産省のホームページで確認できますので参考になさってください。
不明な場合は、地域包括支援センターや各自治体などに確認してみてください。
まとめ
私自身も、昨年町田市内のボランティア団体が行った食料品や生活必需品を無償提供と併せて各種相談会につなげるイベントにかかわり、相談支援者として対応しました。
開始から終了まで大勢の方がイベントに来場されました。その会場でもフードバンクのように、ただ食料品や生活必需品を渡すのではなく、「何か困りごとはないですか?」と話を聞き、社会福祉関連の連絡先一覧を渡してご説明しながら回りました。
新型コロナウイルス感染症により、生活に困る人が増えました。あくまで私見ではありますが、高齢世帯だけではなく若い世代まで支援を必要とする人が増えたと私自身も感じています。
都市部では地域や会社、学校などで助け合う共助の力が弱まっていますが、同時に地域で支援する輪が広がっているとも感じています。町田市内でいえば、さまざまなビジネスセクターの方が、フードバンク事業・フードドライブ事業に参画することで、その輪は素晴らしい広がりをもっていると思います。
何か特別なことをするのではなく、今できることの延長で「プラス1」をしていただくだけで生活に困っている方の問題を解決するきっかけになります。
フードバンクやフードドライブ事業に少し協力していただくだけで、地域を守ることにつながります。本記事を読んでぜひ参加していただければうれしい限りです。
