みんなの介護アンケート
【アンケート】介護が必要になった原因
自立した生活を長く続けるためにも、要介護状態に陥る原因を知り、備えておくことは大切です。
記事内では『みんなの介護』が要介護者・要介護者の家族を対象に実施した「介護が必要になった原因」のアンケート結果を紹介します。
回答として多かった3つの原因と予防方法、介護が必要になったときの対応について解説していますので順に見ていきましょう。
認知症
アンケート結果で最も多かった原因は「認知症」です。
認知症と聞くと「もの忘れ」をイメージする方が多いですが、加齢とともに誰でも記憶力が衰え、忘れてしまうケースは少なくありません。
「認知症」と「加齢」によるもの忘れの違いはエピソード記憶の喪失が挙げられます。
例えば、認知症の方は朝ご飯を食べたことを忘れたり、さっき会ったばかりの人のことを思い出せなかったりします。
よく耳にすることの多い「家族や友人の顔と名前が一致しない」といった症状もエピソード記憶の喪失が原因の一つだと考えられています。
このような症状がみられる場合は、なるべく早く専門医に相談しましょう。
認知症が最も多い理由
アンケート結果だけでなく、2019年に厚生労働省が実施した調査(国民生活基礎調査)でも、認知症が要介護状態の原因として最多を記録しています。
認知症が多くの割合を占めている背景には「平均寿命の伸び」「認知症診断数の増加(知名度の高まり・介護保険制度の改定・認知症薬)」があります。
以下は2000年と2021年の平均寿命(男女別)をまとめた表です。
調査年度 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
2000年 | 77.72歳 | 84.60歳 |
2021年 | 81.47歳 | 87.57歳 |
上記表からもわかる通り、2000年と比べると2021年時点では男女ともに平均寿命が3歳近く延びています。
高齢者人口の増加に比例して、介護原因に占める認知症の割合も増えていると考えられています。
認知症は加齢とともに発症リスクが高まることから、高齢者が増えれば増えるほど介護原因として認知症が占める割合も増えると考えれています。
また、「抗認知症薬の開発」「介護保険制度の改定」などによって認知症の知名度が高まり、医療機関を診断する人が増えたことも要因の一つとして挙げられます。
認知症について以下の記事で詳しく解説しています。合わせて確認してみましょう。
転倒などによる骨折
大腿骨の骨折の患者数は1987年は5万人程度でしたが、2007年には15万人近くまで増加しています。
加齢によって骨密度が減少し、ちょっとした転倒でも骨折してしまうことが原因の一つとして考えられています。
特に女性は閉経により、骨密度が急速に減少します。そのため、骨粗しょう症になりやすく、骨折のリスクは男性よりも高くなります。
高齢者が転倒しやすい理由
骨折の原因は骨密度の減少以外に、「視力や聴力の低下など」も影響しています。
例えば、目の調節機能が低下することで、明るさや暗さに慣れるまでに時間がかかります。
白内障や緑内障による影響も考えられ、白内障の場合は視界が白くかすんだり、光をまぶしく感じたりします。緑内障の場合は視野が狭くなると言われています。
聴力の低下では、まわりの状況を正確に把握することが難しく転倒につながると考えられています。
また筋肉量の減少による影響も理由の一つです。下半身の筋肉の衰えはちょっとした段差でも転倒しやすい状態にあります。
以下は高齢者に多い骨折の種類と部位をまとめた表です。
骨折の種類 | 部位 |
---|---|
脊椎 | 背骨 |
上腕骨近位部 | 腕の付け根 |
橈骨(とうこつ)末端部 | 手首 |
大腿骨・転子部骨折 | 太ももの付け根 |
いずれもバランス感覚が悪くなって転びやすくなる、尻もちをついたことで骨折するといった、些細なきっかけで骨折するケースがほとんどです。
老化に伴う身体機能障害
加齢とともに適応能力や判断能力、身体能力が衰えます。
原因は筋肉などの複数の臓器や器官が若い頃と比べて弱くなるからです。衰弱が進むことで徐々に自力で立ち上がれなくなったり、歩行が難しくなったりします。
フレイルは介護の前段階
フレイルとは「高齢者の衰弱状態」を意味し、要介護の前段階だとされています。フレイルになる方の割合は高齢になるほど高くなり、男性よりも女性のほうが陥りやすいことがわかっています。
フレイル状態の方の約3分の2が複数の病気を抱えており、約4分の1の方が自立した生活が難しい状態であることがわかっています。
ただし、フレイルは回復・改善できる状態なので、早めに対策をすれば、要介護状態に陥るリスクを減らすこともできます。
脳血管疾患(脳卒中)
認知症や不慮の事故、加齢以外にも脳血管疾患などの病気が原因で要介護状態に陥ることがあります。
なかでも脳卒中は、脳血管が詰まったり破れたりして起こる病気の総称です。医療技術の進歩により、死亡者数は年々減少していますが、後遺症が残ったり寝たきりになるケースがあります。
脳卒中は主に脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3つに分かれます。症状は突然動かなくなる片麻痺、呂律が回らなくなる言語障害、立つことや歩くことが難しくなる失調などがあります。
さらに、視野の一部が見えなくなるといった症状が現れることもあります。
脳卒中になりやすい生活習慣
脳卒中が起きやすい原因は生活習慣病ですが、なかでも食生活は大きな要因と言われています。
食生活の欧米化により、動物性脂肪を多く摂取すると血管が詰まりやすくなります。さらに、味噌やしょう油などの調味料から塩分を摂りすぎることがあります。その結果、高血圧となり、脳卒中を引き起こすケースは少なくありません。
また、肥満についても脳卒中と関連性があります。肥満は動脈がコレステロールで詰まりやすくなるため、脳卒中のリスクが高いです。
【男女別】介護が必要になった原因
この項目では上記で紹介した原因のうち、男女別に最も多かった原因を解説します。
【男性】脳血管疾患(脳卒中)
男性の脳血管疾患(脳卒中)が多い背景には喫煙とメタボがあります。
喫煙率は男性27.1%、女性7.6%です。男性の喫煙率は減少傾向にありますが、女性に比べて男性の方が高いため要因の一つになります。
同様に、メタボも女性より男性の方がメタボの予備軍や疑わしい人の割合が高く、40〜74歳の男性では2人に1人が当てはまります。
【女性】認知症
女性は認知症による介護が多く、平均寿命の長さや女性ホルモンの減少が要因だと考えられています。平均寿命も男性より長いため、認知症患者の割合も女性に多く見られます。
また女性ホルモンが減少すると、エストロゲンも減っていきます。すると、アルツハイマー病の原因であるアミロイドβが増加し、認知症の発症リスクが高まります。
要介護状態にならないための対策
要介護状態にならないための対策として有効なのが、以下の2つです。
- 生活習慣病を予防する
- 社会参加の機会を増やす
それぞれの概要について見ていきましょう。
生活習慣病を予防する
生活習慣病(高血圧や糖尿病、肥満、脳血管障害など)は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症を引き起こす原因になることがわかっています。
そのため、生活習慣病を予防することが間接的に認知症予防につながると言えます。
すでに何らかの生活習慣病を発症している方は早急に治療に取り組むことが大切です。
そうでない方は暴飲暴食を控えるなど食生活の改善を心がけ、適度な運動を取り入れて生活習慣病の予防につとめましょう。
以下で代表的な生活習慣病の予防策を紹介します。
運動習慣を身につける
適度な運動、特に有酸素運動は生活習慣病の予防に欠かせません。運動することは脳に刺激を与える効果も期待できます。
また、足や腰などに疾患があって運動に制限がある場合、生活の幅が狭まり、脳への刺激が十分に得られなくなるので、認知症のリスクが一気に上がります。
日頃からバランスの取れた食事をとり、運動習慣を身につけて体調管理を心がけましょう。
知的トレーニングを行う
運動だけでなく知的トレーニングも組み合わせることで、認知症予防の効果を高めます。
知的トレーニングといっても、何も難しいことをする必要はありません。例えば、散歩をするときに簡単な計算をしたり、動物や植物の名前を思い出したりしながら歩くと良いでしょう。
また、俳句や短歌などを考えながら歩くのも効果的です。ただ、本人に興味がないことをしても続けられないので、無理なく取り組むことが大切です。
生活環境の改善
高齢者の転倒事故は、いつも生活している自宅の中でも起こり得るので注意が必要です。
例えば、介護用品を活用したり、介護用のリフォームをしたりすることで予防することは可能でしょう。
ちょっとした段差を解消したり、廊下や浴室に手すりをつけたりするだけでも転倒を防ぐことができます。
なお、介護リフォーム費は介護保険を利用すれば補助金の対象となります。まずは自治体の担当窓口に問い合わせてみましょう。
社会参加の機会を増やす
社会参加は、精神を健康に保つうえで非常に効果的です。
高齢になると、外出することが億劫になったり、人と接するのが憂鬱になったりします。しかし、社会との関わりが減ってしまうと脳機能の低下や精神状態の不安定化(うつ状態)を招くおそれがあります。
社会参加は地域の介護予防教室や趣味の会など多様なので、興味のある会に積極的に参加することをおすすめします。
地域包括支援センターなどを活用しよう
認知症予防を各家庭だけで取り組むのには限界があるため、認知症や介護に関する情報を集めて在宅介護に活かすことが大切です。そうした際に活用できるサービスとして、地域包括支援センターや各自治体の介護福祉課があります。
このようなところでは定期的に「認知症予防のセミナー」や「高齢者向けの運動教室」が開催されています。
コミュニティへの参加を通して、身体を動かしたり、さまざまな人とコミュニケーションをとったりすることで、認知症の発症リスクを軽減できるでしょう。
介護が必要になったときの対応
上記では、要介護状態にならないための予防方法などを紹介しました。しかし、どんなに対策をしていても、いつかは介護が必要になるときが来るかもしれません。
要介護状態になったときに慌てることなく、対応できる知識を身につけましょう。この項目では、要介護状態になったときの対応方法を解説します。
介護にかかる費用を確保する
介護が必要になったとき、年金だけで賄えるか気になるところです。
2020年度の厚生年金の平均受給額は14万4,366円、国民年金で5万6,252円です。老人ホームの入居に必要な月額は平均は15万円なため、年金だけでは余裕のある生活は送りにくいでしょう。
そのため、現在の貯蓄と将来の収入を把握することが大切です。
貯蓄は銀行の預貯金、退職金、満期の生命保険などから、現在の貯蓄を確認しましょう。そして年金を含めた今後の収入を調べます。
想定収入の計算が甘いと、老人ホームに入居後に支払いが滞り、退去を余儀なくされる可能性があります。
もし貯蓄が少ないときは、「マイホーム借上げ制度」「リバースモーゲージ」といった老後のための資金の捻出方法を検討します。詳しくは以下の記事で解説しています。
介護保険サービスを利用する
介護保険サービスを利用するためには、要介護認定を申請をする必要があります。
以下は申請からサービス利用開始までの流れをかんたんにまとめた表です。
- 1.要介護認定の申請
- 市町村の窓口で申請します。申請できる人は原則、第1号被保険者の65歳以上です。
- 2.申請書の提出
- 必要書類をまとめて申請書を提出します。
- 3.訪問調査の日程調整
- 市町村の担当者から訪問調査を実施するための日程調整が行われます。
- 4.訪問調査
- 訪問調査員が自宅を訪れ、生活状況や心身の状態などを確認します。
- 5.一次判定
- 客観的で公平な判断をするため、コンピュータを用いて判定します。
- 6.二次判定
- 一次判定の結果と主治医の意見書をもとに二次判定を実施します。
- 7.要介護認定の通知
- 要介護認定結果の通知が届きます。
介護保険サービスを利用できるまでには少なくとも30日程度かかることから、できるだけ早く行動することが大切です。
在宅介護か施設入居かを決める
在宅介護のメリットは、要介護者が住み慣れた自宅や地域で暮らしを続けられることです。同居する家族に支えられながら過ごせるため、精神的な負担が少なく安定した状態を保てます。
また、近所付き合いや友人関係も変わらずに楽しめるのも利点の一つと言えるでしょう。
一方で、在宅介護のデメリットは、介護をする人が介護の負担(肉体的・時間的・精神的)を一人で抱え込み、限界を迎えてしまうことです。
移動介助や入浴介助など、介護者の肉体的負担は重くのしかかります。さらに介護の時間が長くなり、自分の時間や仕事の時間を確保することが難しくなります。
要介護者の状態によっては、24時間365日の介護が必要になる場合があります。そうした状況が続くと、介護者は疲れ果てて限界を迎えるかもしれません。
少しでも限界を感じたら、できるだけ早く施設入居を検討しましょう。
身体状況にあったおすすめの老人ホーム
介護が必要になったとき慌てることのないよう、今のうちから施設の種類や特徴を理解しておくことは大切です。
以下では、要介護状態に合わせたおすすめの施設をいくつか紹介します。
認知症ケアを受けたい方は「グループホーム」
グループホームは、認知症の進行や症状を緩やかにするサービスが整う施設です。
認知症の方のみを対象としており、職員も認知症ケアに詳しいため、手厚いケアを受けられます。
グループホームでは1ユニット9人以下の少人数制で共同生活を送ります。ほかの入居者同士で家事を分担し、支え合いながら自立した生活を目指します。
また、共同生活を送るメンバーは基本的に一緒です。環境の変化に戸惑いを感じやすい認知症の方が、穏やかに過ごせるように配慮されています。
【図解】グループホームとは?入居条件や認知症ケアの特徴・居室の種類を解説
グループホームを探す介護をほぼ必要としない方は「サ高住」
サ高住の一番の魅力は、自宅で暮らしていた頃と遜色のない自由度の高さです。
例えば、ほかの施設種別では外出時に申請が必要なケースがほとんどですが、サ高住は自由に外出ができます。
さらに、居室にキッチンを完備した施設も多く、好きなタイミングで料理を楽しむことができるでしょう。
また、自立から入居できるサ高住ですが、高齢者支援サービスも充実しています。
提供するサービスには安否確認や見守り、生活相談などがあり、異変が起きたとき、しっかり対応してくれるので本人・家族は安心です。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは?入居条件や食事・認知症対応を解説(有料老人ホームとの違いも)
サービス付き高齢者向け住宅を探す生活の一部で介護が必要な方は「住宅型」
住宅型は見守りや食事、掃除、洗濯などの生活援助や健康管理といったサービスを受けられます。
介護サービスは外部のサービスを利用できます。自分が必要とする介護サービスを自由に組み合わせて、一人ひとりに合ったケアを受けることが可能です。
さらに、在宅介護で利用していた介護サービスも継続できるので、変わらないケアに安心できます。
また、住宅型はレクやイベントが充実しており、入居者同士のふれあいを楽しむことができます。
【図解】住宅型有料老人ホームとは?入居条件や特徴・1日の流れを解説
住宅型有料老人ホームを探す24時間介護を必要とする方は「介護付き」
介護付きは要介護5までを受け入れる施設であり、介護体制が充実しています。
また、介護付きは特定施設の指定を受けているため、介護サービス費は定額です。要介護認定ごとに定められた定額を毎月負担するので、介護費を抑えられます。
そのほかに、生活支援や医療などのサービスも受けられます。地域の医療機関との連携も義務付けられているほか、看護職員も常駐していることから持病のある方も安心して過ごせます。
なお、介護付きの居室はほとんど個室タイプです。プライベート空間を確保できるので、一人の時間を大切にしたい方におすすめです。
【特徴がわかる】介護付き有料老人ホームとは?(入居条件やサービス内容など)
介護付き有料老人ホームを探すまとめ
要介護状態に陥る可能性は誰にも等しくあります。
ただ、今回紹介した予防方法や老後の備えをしっかりしておくことで、明るく楽しい老後の一助になるでしょう。
高齢者自身は食事に気を配り、適度な運動を心がけることが大切です。また、一緒に暮らすご家族や親族の方も、要介護にならないためのサポートや環境づくりに取り組みましょう。
介護はご本人のみならず、ご家族にも大きな負担になることですから、ともに協力しあうことが大切です。