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「介護より人間関係がつらい」(後編)

在宅介護をされている方や、ご家族が介護サービスを利用されている方は、“ほんとうのところ”どのような思いで日々の介護と向き合っているのでしょうか。介護当事者の皆さまに介護に対する本音に迫るべく、「みんなの介護座談会」を開催しました。それでは、介護当事者による介護の実情を聞いていきましょう。

この記事に登場するみなさんのプロフィール(敬称略)
こかじ さら こかじ さら 田中 (仮名) 田中 (仮名) 武田 (仮名) 武田 (仮名)
作家。近著に介護体験を“生々しく”綴った「寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ」がある。故郷へUターン後、92歳の父(要介護1)と90歳の母(要介護1)を在宅介護。近所に暮らす89歳の叔父(要介護1)と叔母(要支援2)の介護と生活の支援も行う。
ケアマネジャー。義父を亡くなるまで介護した後、91歳の義母(要介護3)も、特養への入居まで面倒をみる。現在は、88歳の実母と同居中。実母は、介護認定こそ受けていないものの、もの忘れや身体機能の低下がみられ「介護予備軍」となっている。
経営者。地元では「武田コングロマリット」の異名を取るほどの辣腕ぶりを発揮。老人ホームに7年入居していた母が2021年に92歳で逝去。現在は、大正生まれの99歳の父(要介護1)を、週2回のヘルパーサービスを利用しながら在宅介護でケアしている。

まだまだ続きます!本音が「見える」介護座談会

介護当事者の本当の気持ちを伺う「みんなの介護座談会」。

前編では、「家族の介護の場合は、やっぱり“しがらみ”や感情が先行します」という言葉も飛び出し、介護そのものではなく、人間関係にストレスを感じるというお話がありました。

介護は複雑な人間関係の様相を呈する「総決算」なのかもしれません。後編では人間関係にまつわる具体的なお話を伺っていきます。

介護は人生最後の甘え!?

みんなの介護(以下、―――) 皆さまのお話を伺っていると、介護に「人間関係」が集約されているような印象を受けました。

田中
そうですね。人生とこれまでの人間関係の「まとめ」という感じですかね……。
こかじ
紙パンツの交換も散髪も、兄にも義姉にも絶対させないのに、私にだけ頼ってくるのは、私が実の娘だからで、父が私に「甘えている」のかなと。

介護に関しての著書もあるこかじさんは、自宅を留守にする際、お父さんの介護を義姉に頼んだそうです。帰宅したこかじさんが「どうだった?」と聞くと、義姉からは「特に問題はなかった」との返答が。

こかじさんが実の娘だからこそ、あれやこれやと甘えてくるのではないかと、こかじさんは感じています。

田中
武田くんのお父さまは、自分で紙パンツを履いているって言っていたよね。
武田
そうなんだよ。でも、手がズボンにうまく入らないようで、収まりが悪そうだから、結局は手伝うことになるんだけど。どういうわけか、履くときだけは、「必ず」自分で履くんだよね。
こかじ
そうなんだ……。たぶんプライドというか、気概のある人なんだろうね。
武田
どうなんだろう。自分でやれるところは、自分自身でやろうとしているような気はするよ。

武田さんのお父さんは、99歳になった今でも介助なしでお風呂に「入る」ことができます。洗髪をし、身体を洗い、浴槽にも一人で入ります。

ある日、武田さんが確認のために浴室のドアを開けると、「寒いんだから開けないでよ」と、浴槽から少し気恥ずかしそうに言ったそうです。お父さんの性格が垣間見えるエピソードです。

田中
デイサービスに行ってくれれば、こうしたサポートも「全部」お願いできるんだけどね。
武田
そうなんだよね。でも、何度言っても行かないし、行かない理由も分からないんだよね。「来週の▲曜日はいないよ」なんて私が言うと、「なんでいないんだ」って何度も聞いて来て。
田中
いないことにしとけば、行くかもしれないよ。
武田
たしかに(笑)。ただ、それはちょっと気が引けるな。
こかじ
武田君のおとうさまも、無意識に「息子だから甘えてもいいんじゃないか」なんて思っているのかもしれないよね。
武田
どうなのかな。自分としては、よほどのことがない限りは「やってあげたい」みたいな気持ちもあるからさ。

「介護される側からの甘え」とは?

ご家族の介護をされている方ならではのお声ではないでしょうか。甘えであろうとなんであろうとも、「できるかぎりは介護をする」という武田さんの言葉も印象的でした。

続いて、老人ホームへの入居の是非について伺っていきます。

座談会写真

老人ホームの「良し悪し」を聞く!

――― みなさんは老人ホームにご家族が入居することに対して、どのような考えをお持ちですか。

武田
入居するまでの母は、症状が「まだら」に現れる認知症でした。

認知機能が低下している姿を見ると悲しくなりましたし、意識がしっかりしているときは、頻繁に「苦しい」と言うようになったので、気を許す時間がないというか、正直辛かったですね。

そうした母の姿は父も負担だったのでしょう。父を優先するわけでは決してありませんが、「申し訳ないけど母には入ってもらうしかないな」と思い、入居先を探しました。

武田さんのお母さんは、自分のことより家族のことを常に優先し、贅沢をほとんどしなかったとのこと。武田さんはそれを理解していたので、「懐」が許す限りの老人ホームを探したそうです。

お母さんが亡くなって数日が経ったある日、叔父さんが、お母さんの写真を持って訪ねてきました。額に入ったその写真を見たとき、お母さんが亡くなってはじめて涙が溢れたそうです。

座談会写真

老人ホームはどうやって探せばいいの!?

――― ありがとうございます。もし、老人ホームに“良し悪し”があるとすれば、どのような施設が“良い”施設だとお考えでしょうか。

武田
私の母の場合は、介護をしてくださる職員さんたちが、とても優しい方ばかりだったんで。いい施設というのは、いい職員さんがいる施設といっても過言ではないのではないでしょうか。

――― ケアマネとして業界をよく知る田中さんは、どう思いますか。

田中
職員の育成・教育体制がしっかりしているところは良い施設だと「仕事柄」感じています。職員の個人差がなく、みなさんきちんとしていますよね。

一方で「悪い」とは言いきれませんが、職員の入れ替わりが激しいところは敬遠してしまうかもしれません。

それと、ネットなどに掲載されている口コミも、判断基準のひとつにはなりますよね。

ネットの口コミだけでなく、実際に家族を預けている方から「直接」聞くことが大事だと田中さんは言います。ご家族は「シビア」に見ているので、参考になるそうです。

――― ありがとうございます。ご家族の入居先をこれから決める方に向けてなにかアドバイスがあれば教えてください。

田中
私の体験談をお話させていただくと、いろいろな施設に出向いて、できるだけ職員の方と話をして、時間が許す限り「施設の中」を見るようにしました。

難しい点は、施設の職員と家族の相性がいいかどうか。こればっかりは入ってみないと分からないんですけどね。
武田
確かに、相性はあるよね。

――― 入居先でも人間関係が重要になるわけですね。

田中
そうですね。例えば、認知症の症状があっても、認知症の患者としてではなく、一人の入居者として接してくれるのか。ただ、こういうことは施設に関する情報だけでは分からないですよね。

――― 「お金」の問題についてはいかがですか。

田中
人間関係も大事だけれど、実は、個人的には「お金」を90%ぐらいにしたいかな。介護をする上で、お金はかなり切実な問題だと私は思います。
こかじ
言うのは正直はばかられるけど、いつまで寿命が続くのかは分からない以上、貯金通帳を見ながら考えるよね。

――― 預金通帳と「にらめっこ」状態ですか。

こかじ
地獄の沙汰も金次第とはよく言ったもので。「うちは何年も入居できるほどの『金』はないぞ」と兄から言われてますし。収入に応じて入居できる特養は、要介護3からですし、100人待ちなんてザラですからね。
武田
そうだね。まずは「お金」のことを考えるよね。これからどれぐらいかかるか、予想が付かないんだから。
こかじ
施設の方も、入居費用を提示したとき「一晩考えてから連絡します」と返答するご家族からは、「二度と入居の相談がない」とも言っていました。
田中
施設側も、入居費用を支払えるかどうかは気になるよね。
こかじ
“取りっぱぐれ”は避けたいだろうしね。

お金の問題は本当に切実です。では、介護に関するお金の相談は誰にすればいいのでしょうか……。

座談会写真

お金の問題は誰に相談すればいいの?

――― 「お金」の問題は、どうしたらいいのでしょうか。恥ずかしさから、ケアマネさんに相談することを躊躇う方もいらっしゃるのでは……。

こかじ
でも、そんなことは言っていられませんよね。
田中
ケアマネとして働いているので恥ずかしいというのはよくわかりますので、相談に来られた方に対してお金の話は慎重に切り出します。

「毎月の年金の支給額はどのくらいですか」と聞いただけで、「なんでうちの資産を話さなきゃいけないんだ。介護とは関係ないだろ!」と、怒り出す方もいますので

ケアマネージャーの立場からすると、年金の支給額が分かるだけで、その後の展開がまったく変わってくると言います。生活歴、職歴などをヒアリングし、1カ月に使える介護費用を段階的に聞きながら、介護保険による訪問サービスやショートステイなどの提案を徐々していくそうです。

田中
「自己負担額は1割」ですけど、逆に言えば「1割は支払わないといけない」ということなんですよね。でも実際には、それさえも理解されていないこともあって。自己負担なしで、要するに“タダ”で介護サービスが受けられると思っている方も結構いらっしゃいます

家族はもちろん、ケアマネも頼りになる存在なので、まずは相談してみるのがいいと思いますね。

座談会写真

介護当事者の皆さん、アドバイスをお願いします!

――― いま介護をしている方、あるいはこれから介護する方に、皆さんは介護の「先輩」としてどのようなお声を掛けますか。

田中
難しい質問ですね。ただ、一人で抱え込んだり、我慢をしてはいけないとは言いたいですね。不満や悩みを吐き出せない方が大半だとは思いますけど。

――― 相手に気を遣って相談できなかったということも多々あるでしょうね。

田中
そうですね。誰にも相談できずに自分を追い込んでしまったり、「こうすべきだ!」って思い込んでしまったり。こかじさんが言う「介護は綺麗ごとじゃない」というのは本当にその通りだと思います。

――― 「もっと吐き出していいんだ」という認識が社会全体に広がれば、いまよりずっと悩みを第三者に打ち明けることが容易になるのかもしれませんね。

座談会写真

こかじ
そうですよね。実際、介護をされている方が追い詰められて自ら命を絶つような、悲しくて痛ましい事件も後を絶たないわけですから。
田中
そうそう。以前、ある高齢のご夫婦が相談に来てくれたんですけど。ご夫婦それぞれが悩みを抱えていて、本当に大変そうで……。ただ、そのご夫婦の場合、お金はたくさんあるんですよね。
こかじ
お金があっても、それを自分たちの介護に使うっていう考えに至らない方も結構いるのかもしれないね。
田中
施設の数が多い大都市に行けば、安心して入居できる施設があるとは思うんですけど、「ここを絶対離れたくない!」って言うんですよ。

――― 地元を離れたくない気持ちもよく分かりますよね。

田中
「妻が言うこときかないので、二人だけの生活をこのまま続けたら、僕はいつか認知症の妻を殴ってしまうかもしれない」と、旦那さんから相談されたこともありました。

「でも、それは犯罪になっちゃうから、そうならないように一緒に考えてみましょうね」と提案しましたが、最終的には「もう少し自分たちだけで頑張ってみます」と言われてしまって。
武田
その「もう少し頑張ってみます」というのがね。

――― 先ほど、こかじさんから「お金を自分たちの介護に使うという考えに至らない」という発言がありました。詳しく教えてください。

こかじ
サポートしてもらえる仕組みにアクセスする、という発想がそもそもない高齢者も結構いるような気がするんです。自身の生活圏がすべてだと思い込んでいて、情報のなさや頑固さから介護サービスを受け入れられない人も多いような気もします。

こかじさんの叔父さんは、当初デイサービスに拒否反応を示していましたし、叔母さんも「おじちゃんが行きたくないって言っている」の一点張りでした。

でも、こかじさんが「一度、見学に行ってみよう」と誘い、近くのデイサービスの施設に連れて行くと、二人ともアットホームな雰囲気を気に入ってくれたそうです。

実際にデイサービスを利用しはじめると「ここはホテルみたいだな」と言うまで変化したそうです。

アプローチの仕方ひとつで、介護サービスに対する考え方も印象もかわるのかもしれません

武田
自分が知るべきことがどんなことかもわかっていない可能性があるよね。
こかじ
「一人暮らしで亡くなった高齢者のお宅にタンス預金がたくさん残されていた」なんてニュースも目にしますよね。もし、もっと早くにサポートしてもらえる誰かにアクセスできていたら、そのお金で豊かな老後が送れたのに……。

座談会写真

終わり良ければすべてよし?

――― 最後の質問になります。介護を通じて発見できた“ポジティブ”なことがありましたら、教えてください。

こかじ
私たちの世代は、実際にさまざまな高齢者と接して、サンプルと言っては何ですけど、「年を取るとこうなっちゃうんだ。こんなことも出来なくなるんだ」と、日々痛感させられていますから。

そういう意味では、ある種の「予行練習」にはなってますよね。心構えを含めた自分の老後や逝き方を考えるようにもなりましたので、それは良いことなのかもしれません

――― 予行練習というのは面白い表現です。

こかじ
前向きに捉えれば、親は、年老いて色々なことが出来なくなっていく自分の姿を晒してまで子どもたちに生き様を見せてくれているんだとも思えますしね。
武田
そうだね。介護していると実際考えますよ、自分の最期を。

――― 不安ですか?

武田
それほど不安ではないかな。ただ、「あの豪快な父でも、こんな風になっちゃうんだ」っていう感情は湧いてきますよね。自分も恐らく、あんな風になっちゃうんだろうと。
田中
覚悟みたいな。
武田
うん。介護を経験するまでは、両親を亡くした方に対して「ご愁傷様。可哀想に」という感情があったけど、最近は「おつかれさま」「よかったね」という気持ちになるかな。
こかじ
長い間介護が必要だった高齢のお母様を亡くした友人から「そっちはまだ? これからが大変だよね」と言われたことがあって。長寿は喜ばしいこと。という考えは、もう今は昔。長寿はリスクにさえなりつつある感があるかな。
武田
こかじさんが著書に「寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ」とタイトルをつけたのを見たときに「ああ、ズバリだな」と。私の心を読んでいるのかなとも思いましたよ。
こかじ
武田君は一気読みしてくれて、今では、この本の宣伝部長に(笑)。“超個人的”な内容だからこそ、「うちもそうだ」って、多くの方から共感を得られたと思うんです。

田中さんがさっき話してくれた「お義母さまが1年以上もお風呂に入っていなかった」なんてエピソードも、介護を経験していない人にとっては驚きだと思うけど、経験してると、あり得るよなあって、妙に納得しちゃうんだよね。
田中
「あれ? いつも同じ服を着ているってことは、もしかして……?」。事実を知ったときには認知症がかなり進んでいて。
こかじ
こういう切実な出来事も、過ぎてしまえばネタになるんだけどね。
田中
それこそ、実の娘が毎日のように顔を出していたのに気が付かなかったんだよね。朝から晩まで一緒にいるわけじゃないし、こたつに座っているところだけを見てると、まさか1年も! って思うじゃない?
こかじ
でも……、下着はどうしていたんだろう。
田中
トイレには行っていたわけだから、定期的には取り替えていたのかな。

でも、いま思えば、パジャマにも着替えていなかったのかも。洋服を着たままこたつに入っていつの間にか寝て、また朝が来る、みたいな……。でも、もう過ぎたことだから笑ってもいいよね(笑)。

――― そうですね。では、先ほどのこかじさんの「過ぎてしまえばネタになる」という前向きな言葉で、座談会を締めさせていただきます。 みなさん、ほんとうに今日はありがとうございました。

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