『令和2年国勢調査』の速報値が続々と出てきました。最近では、衆議院選挙に向けて、「次の次の選挙では議席数が10増10減となる」という話まで出てきました。このままいきますと、地方の県から東京や神奈川に議席がごっそり移ってしまい、高齢化や人口減少に悩む地方社会にとっては不利な状況に拍車がかかっていくでしょう。これは、大変なことになってきましたね。

東京の1世帯当たりの人員は
「2.0未満」にまで減ってしまった…!

地方の定数減が懸念される一方で、民主主義の選挙では「1人1票」が原則とされています。地域格差をきちんと是正しようと思うと、地方選出の議員が減ってしまうのも当然のことかなと思います。下手をすると、人口減少が激しい地域では都道府県規模で合併せざるを得ない状況に追い込まれることもあるかもしれません。

例えば、鳥取県は人口が約57万人です。これが2025年には50万人強にまで減ると予測されています。東京都杉並区が57万人ですから、鳥取に1議席の枠を与えるなら杉並区でも1議席設ける必要が出てくるのです。

そんな中、「東京では世帯人数がついに2.0未満になった」という衝撃のニュースが舞い込んできました。東京は若いファミリーによる核家族世帯が、1980年代から一貫して増えていました。しかし、今回のケースは単身世帯の激増とともに平均値ですら「2.0を割ってしまった」ということになります。

各都道府県の平均世帯人数

東京都の公表する『世帯人口2021年度版』で見ると、すでに世帯人数は「1.89」となっており、猛烈な勢いで「おひとりさま」が増えていることを意味します。中でも、若年単身層(40歳未満の単身世帯)だけでなく、40歳以上の単身層も増えています。伴侶との離婚や死別も含まれますが、大多数は「結婚したかったけどできなかった男女」や「自らの意志で一人で生きていくと決断した人」による世帯です。

東京で「おひとりさま」が増加する理由は
結婚後に引っ越す人が多いから!?

もちろん、若い人たちが東京で一人暮らしをしているのには理由があります。ひとつは大学や就職で上京してきた単身者が、23区や市部に移り住んで、世帯を構える前の状態になること。そして、その若い人たちは結婚や出産などで世帯人数が増えると、より安く広い家を求めて、埼玉、千葉、神奈川、山梨、茨城などに移り住む傾向があります。東京が特別に単身世帯が多く、合計特殊出生率が低いように見えるのは、結婚したり子どもを二人以上つくると東京から出て行ってしまうためです。

もう一つの要因である離婚についてはどうでしょうか。人生ではいろんな出会いがあれば別れもあるのでしょう。2019年の東京都の離婚件数は22,707組となっています。うち7割の世帯では養育する子どもがいないので、夫婦二人暮らしの世帯が離婚することで、一人暮らしの世帯が2つできてしまうことになります。離婚は世帯人数に大きく影響するわけです。

他方、高齢者においても、「おひとりさま世帯」は増加しています。さらにその傾向は東京だけでなく、地方の世帯人員構成にも影響しています。確かに高齢者が介護サービスを受けながら一人で暮らすケースは、かなり一般的になりました。その独居となった経緯は、さまざまなようです。

東京都のエリアによる世帯人数の違い

日本は高齢者のコミュニティが未成熟…
今後は「社会の絆が大事」に

超高齢社会では、子どもが独立した核家族が増える傾向が強まっています。それに伴い、独居の高齢者も増えていきます。男性と女性の健康年齢には違いがあり、夫婦2人で暮らしていても人生の終わりにはどちらかが伴侶を先に見送ります。その後は、独居での生活を送ることになるのです。

そうなると、ご近所付き合いや介護サービス、ケアセンターなどでのコミュニティで、独居の高齢者が外部の人とかかわる必要が生まれてきます。「社会の絆が大事だ」というとクサい話に聞こえるかもしれません。しかし、日々の買い物から掃除、洗濯まで、健康だった頃は何の苦労もなくこなしていた家事などが、何らかの事情で困難になると、独居である限りは、誰かに助けを求めようにもその方法がなかなか見つかりません。

日本とアメリカの近所の人とのつきあい方の違い
出典:『令和3年版高齢社会白書』(内閣府)を基に作成 時点

また、2021年度の『高齢社会白書』では、「相談しあったり、助け合ったりする高齢者の割合が低い」という結果になっています。日本では、高齢者も交えた地域のコミュニティの形成に失敗してしまっているのでしょうか。

私自身の例で恐縮ですが、以下のようなことがありました。

  • 社員が体調不良で健康診断してみたらがんを患っていたことがわかった
  • 同業で仲の良かった人が突然の発作で倒れたのに、誰もそれに長く気がつかなかった

また、新型コロナウイルス感染症の影響で町内会の活動が抑制された結果、高齢者のゴミ出しや買いものなど、ちょっとした頼まれごとに対応できなくなりました。1週間ぶりにその方のご自宅に伺ったところ、孤独死されていた方もいました。どうして仕事帰りなどにフラッと立ち寄ってあげなかったのかと、今でも悔やまれます。

一方で、ヘルパーやデイケアの方に対して「自宅に他人を上げたくない」「気軽に相談をすることが気まずくてそんな気分になれない」とお話をされる高齢者も少なくありません。単に「もっとぐいぐい高齢世帯に介入せよ」という話ではないということです。日々の暮らしの中にちょっとした集まりが持てるとか、美化運動のような簡単なボランティアを通じて、生きがいの創出だけでなく地域の友人をつくることができるとか、そういう活動を地道に広げていくしかないのだろうな、と思います。

高齢者を受け入れる地域の「場づくり」が
超高齢社会への対策になる

一方、皆さんもご存じの通り、健康寿命の延伸とともに、「生涯現役」「65歳以上でもいきいきと働ける社会づくり」を進める方向で、高齢社会に向けた大綱が策定されています。

政府が定める大綱である以上、総合的になってしまうのは仕方ないとはいえ、「きれいごとではないか」「そんな話が実現できたら苦労しないよ」という気持ちになったりもします。しかし、やはり大事なのは「家庭」「職場」に続く「地域」という場所で、独居老人を受け止めていく必要があるということです。

「家庭」を失い、「職場」にも長くは居続けられないかもしれないと考えるおひとりさまが、安心して「地域」に根を張って暮らしていけるための対応が、今求められているのだろうなあと強く思う次第です。