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5万人が利用する「埼玉県コバトン健康マイレージ」日本一速い高齢化にウォーキングで備える

東京のベッドタウンとして栄え、約732万人もの人口を抱える埼玉県。「埼玉都民」と呼ばれる働き盛りの世代も多く住む、県民平均年齢45.4歳の「若い県」だ。そんな埼玉県が今、県の将来に深刻な危機感を抱いている。2025年までに、全国で最も速いスピードで高齢化が進むというのだ。社会保障の持続性を保つため、健康づくりに力を入れ始めた埼玉県の取り組みについて、上田清司知事に話を聞いた。

監修/みんなの介護

楽しみながら健康になる「埼玉県コバトン健康マイレージ」

埼玉県では、「健康長寿日本一の県」の実現をめざして、2017年度から「埼玉県コバトン健康マイレージ」というサービスを実施しております。

これは、歩数計やスマートフォンアプリを使ってウォーキングや特定健診の受診などでポイントを貯め、抽選で賞品が当たるというものです。「コバトン」とは、県の鳥であるシラコバトをモチーフにした埼玉県のマスコットで、以前から県民に親しまれています。

忙しくて運動する時間がない方や、健康に関心が薄い方も、歩数計やスマホアプリをもって歩くだけで、楽しく健康づくりができます。健康に良く、県産品などの賞品も当たるということでご好評をいただき、現在で既に約5万4,000人の県民の皆様が参加しています。

スマートフォンの専用アプリからも参加が可能に

「埼玉県コバトン健康マイレージ(以後、コバトン健康マイレージ)」は、18歳以上で埼玉県在住・在勤者、またはこの事業に参加している健康保険組合などに所属していれば参加できる。

スマートフォンユーザーは、アプリをダウンロードし、専用のウェブサイトから申し込む。スマートフォンの専用アプリを使えない場合も、データ送信機能付きの歩数計が送料自己負担で貸与される(市町村ごとに条件が異なる)。また、アプリは「お試し」で参加することも可能だ。

担当部署の職員によると、面倒な登録作業などを極力省き、すぐに始められるように簡単さを重視したと言う。

スマートフォン以外にも、通信機能つき歩数計やウェアラブル端末も選べる。自動販売機からもデータの送信が可能だ

歩数計は県内の公共機関や協賛店などに設置されているタブレット端末にかざし、スマートフォンは歩数送信ボタンをタップすることで、その日の歩数データが送信され、歩数に応じたポイントが貯まるという仕組みである。

端末画面では自分の歩数記録のほか、ランキングの確認も可能だ。上田知事も「歩数だけでなく、ほかの人と比べたときの自分のレベルがわかるので、励みになりますよ」と語る。

3ヵ月ごとに県産品などが当たる抽選会

歩数ごとのポイント付与は3,000歩で300ポイント、以降は1,000歩ごとに100ポイントが加算され、最大で1万歩・1,500ポイントまで付与される。この事業には県内の40市町村と7事業者、7保険者が参加しており、市町村や企業によっては独自のポイントも設けられている。

また、ウォーキングだけではなく特定健診や人間ドックを受診した場合などにはボーナス・ポイントも付与される。

このほか、歩数を送信した際には端末から抽選で10~50ポイントが獲得でき、月間で1万歩以上歩く日が20日以上ある場合には、さらに1,000ポイント獲得できる。

野菜や果物のほか、クーポンやdポイントなど、さまざまな賞品が用意されている。右上は「コバトン」

貯まったポイントは、3ヵ月ごとに30,000ポイントを1口として自動で抽選が行われ、当選すれば登録した住所にプレゼントが送られるという手軽さも注目されている。

「賞品は、県内特産の季節の野菜や果物、お米やお茶、豚肉などのほか携帯電話のポイントや健康ドリンクなどいろいろあって、これも楽しみですよ。口コミで聞いて、『プレゼントが当たるなら参加したい』とおっしゃる方も多いようです」

急速な高齢化は目前。今すぐ取り組まなくてはならない

2015年の国勢調査によりますと、埼玉県は全国で人口が5番目に多く、平均年齢も45.4歳と全国で6位の「若い県」となっています。しかし、その一方で、2025年には全国一速いスピードで高齢化が進むとの試算もあります。

そこで、持続可能な社会保障づくりのために、今から高齢者の元気と健康を保って活躍していただこうと、2012年度から「健康長寿埼玉プロジェクト」を推進して参りました。

このプロジェクトは、誰もが、毎日を健康で、医療にかからずに生き生きと暮らすことができる「健康長寿社会」の実現を目指すもので、とりわけ12年度からの先行モデル事業である東松山市の「毎日一万歩運動」と、加須市の「筋力アップトレーニング」は大きな成果を上げました。

この事業の参加者について、東松山市で1人あたり年間約2万4,000円、加須市では1人あたり年間約7万9,000円の医療費を抑制できたのです。また、加須市では体力年齢が8歳若返ったことも報告されています。

これらの先行事例を受け、コバトン健康マイレージでは、ウォーキングに特化することにしたのです。このような健康推進事業に県をあげて取り組んでいるのは、「全国初」と自負しております。

後期高齢者人口が2025年までに2倍に増加

埼玉県によると、県内の高齢化率は2013年で23%だったが、15年には24.8%と上昇した。微増傾向が続いており、35年には31.8%になると試算される。これに伴って医療費も上昇しており、2008年度の1兆6,393億円に対し、17年度には2兆3,700億円と1.4倍にのぼっている。

2020年以降は「日本の市町村別将来推計(2013年3月推計)」より算出(出典:埼玉県)

「15年で後期高齢者の人口が2倍になるという推計に、県としては大きな危機感を抱きました。高齢者の方に、今よりもっと健康でいてもらわないと、社会保障制度を維持することが難しくなってしまいます」

そこで、①誰もが毎日を健康で生き生きと暮らせること、②健康寿命を延ばすこと、③医療費を抑制すること、の「一石三鳥」を達成するために誕生したのが「埼玉県コバトン健康マイレージ」なのだ。

「健康長寿埼玉プロジェクト」の先行モデル事業で効果のあったウォーキングに重点を置き、健康づくりに楽しんで取り組むための事業として企画された。

「健康のためには身体を動かしたほうが良いとわかってはいても、仕事などでなかなか運動できないこともあります。そこで、ふだん運動をされない方が自分のペースで無理なくウォーキングを続けるためには、どうすれば良いかを考えました」

県が主導することで規模の大きな取り組みに

健康づくりは全国の自治体で行われているが、自治体が運営するスポーツ施設などは利用時間が限られており、仕事や生活の事情で通えない人も多いのが現状だ。

「コバトン健康マイレージは、いつでも誰でも好きなときに取り組めるようにするために、スマホアプリの開発や端末の設置を行っております。多様な参加形態を可能にすることで働き盛り世代にもアプローチができます」

県内全域が対象となっているので、市をまたいでウォーキングする人も。右は賞品を提供している企業の例

全県でこうした事業に取り組むのは日本初であるが、本来、健康づくりは基礎自治体の役割だ。しかし、すぐに効果が出るものではないため、基礎自治体の厳しい財政状況などから重視されていないこともある。

「こうしたICT(情報通信技術)による通信技術を活用した事業には、端末の導入などで初期投資はかかりますが、いったん仕組みをつくってしまえば、その後のランニングコストは低く抑えられます」

県全域が対象地域であるため、健康経営に関心のある地元企業の保険組合からも参加が増えている。今後、登録者数のいっそうの増加も期待できる。

将来は利用者を40万人に増やしたい

コバトン健康マイレージの登録は2019年3月現在で約5万4,000人ですが、利用者を40万人に増やしたい。もともと埼玉県はスポーツが盛んなので、利用者が増える素地はあると考えています。

例えば、40年以上も続いている、3日間のウォーキングイベント「日本スリーデーマーチ」は、2017年の40周年の際には国内外からの参加者が延べ10万人となりました。このスリーデーマーチに参加すると、コバトン健康マイレージのボーナス・ポイントが1日につき1万ポイント、3日で3万ポイントも付与されます。

しかし、健康づくりで大切なのは運動を日々、継続することです。コバトン健康マイレージはただ歩数を記録するだけでなく、団体ごとの歩数ランキング戦などのゲーム的な要素を盛り込み、「楽しく続けられる」ということを重視しています。団体戦では、皆さんけっこう“熱く”なられているようですよ。

この楽しくて健康に良い事業を埼玉県から全国に発信したいと考えています。

「楽しく続けられる」仕掛けづくり

コバトン健康マイレージの特徴は、ランキング戦に参加したり、歩いた場所の写真を投稿するなど、ゲーム的な要素を入れて楽しめることだ。ほかにも、ログインするだけでもらえるボーナス・ポイントがあるなど、さまざまなかたちで継続的にコバトン健康マイレージに触れる機会を設けている。

「コバトン健康マイレージは多忙であったり、健康づくりに興味がなかったりして運動をしていない方に、運動する習慣をつくっていただくことを目的にしています。不健康な人ほど健康づくりに取り組まないんですね」

「楽しめる」要素も、コバトン健康マイレージの特徴のひとつ。上田知事も健康維持に余念がない

上田知事も毎日のウォーキングを継続して、健康を維持している1人だ。

「衆議院議員時代は電車通勤のほか、議員会館と国会を一日に何往復も歩いていたのですが、知事になってからは車での移動が中心で、運動不足で腰痛になりました。そこで、毎朝30分のウォーキングを続けています。普通に歩くだけではなく速度を上げて後ろ向きにも歩いたりして、いろいろな筋肉を使うので、若い職員にも負けませんよ。神経質に健康に気を使いすぎるより、楽しく歩いた方が結果として健康につながります」

地元大学生とのコラボレーションでさらなる進化を

「利用者数40万人を目指すにあたり、基礎自治体の働きかけにも期待している」と知事は語る。

「国保は市町村が運営するが、加入者の層を考えると赤字になりやすい。だからこそ市町村が主体となって健康維持のために広めて欲しい」

コバトン健康マイレージの利用を増やすため、県をあげてのさまざまな工夫も行われている。

そのひとつが「PR大使」によるアピールだ。2017年4月28日に開かれた「埼玉県コバトン健康マイレージキックオフ宣言式」で、フリーキャスターの堀尾正明さんに知事から「埼玉県コバトン健康マイレージPR大使」の委嘱状が手渡された。

埼玉県コバトン健康マイレージキックオフ宣言式にて。埼玉県立浦和高校出身の堀尾正明キャスターがPR大使を務める。

このほか、埼玉大学の学生からPR方法に関する提言を受け、「春のお友達紹介&PRキャンペーン ボーナスポイントプレゼント」も実施された。これは参加者が新規の登録者を招待して参加した場合などにボーナスポイントを付与するもの。

上田知事は、「コバトン健康マイレージの企画に際しては、いろいろ工夫したつもりでしたが、若者たちの視点からの提案は参考になりました」と評価する。

2025年に向けて日本一の健康長寿をめざす埼玉県。今後の新しい挑戦にも注目していきたい。

※2019年3月22日取材時点の情報です

撮影:丸山剛史

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「ビジョナリーの声を聴け」は超高齢社会に向けて先進的な取り組みをしている自治体、企業のリーダー“ビジョナリー”にインタビューし、これからの我々が来るべき未来にどう対処し、策を練っていくかのヒントを探る企画です。普段は目にすることができない高齢福祉の最先端の現場を余すこと無くお届けします。
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