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宇佐美典也の質問箱

質問 Q.86 「サ高住の事故が1年半で3000件超え」というニュースが目につきました。その社会的背景について、宇佐美さんはどのように考えますか?(アマゾン・会社員)

先日、朝日新聞に「サ高住の事故が1年半で3000件超え」というニュースを見かけました。サ高住の開設には国から補助金が出ることもあって、そこかしこにどんどん建っている…という印象がありますが、一方で、そこで働く職員には“アメ”が与えられず、つまり「箱=ハードを増やしたはいいものの、人材=ソフトが充実しないからこんなことになっている」というようにも見えます。その点について宇佐美さんはどう思いますか?

厚労省と国交省。省庁の縦割り問題が生んだ社会的な問題だと考えます

「サ高住」こと「サービス付き高齢住宅」に関しては2011年10月に「高齢者の居住の安定の確保に関する法律」に基づく登録制度が創設され、優遇税制と補助金が手当てされるようになり、不足する介護施設を代替するものとして政策的に建設が促進されています。制度開始6年での登録棟数は6,669棟にせまり、足下ではやや建設ブームが落ち着いているものの、一時期は質問者様のおっしゃる通り「そこかしこにどんどん建っている」という状況で「とにかく“サ高住”を増やす」という意味では政策は成功したとみられています。

この建設ブームには、高齢者社会到来と介護施設の不足に伴うそもそものニーズ増加に加え、前述の補助金・税制優遇も大きく貢献したわけですが、こうした政策は建設業・不動産業を所管する国土交通省が主導したためハード中心となりました。他方で「人材」というソフト面を担当していた厚生労働省は予算や減税財源が乏しかったため、こうしたハード業界の盛り上がりに比して置いてきぼりにされ、今になって運営に伴う問題が噴出しているということなのだと思います。

つまり「サ高住に関する予算のハード面への偏り」の背景には、省庁の縦割りという問題があるということです。「サ高住」に関しては、本来は高齢者住居特有の運営リスクが存在するため、建設を支援するハード補助金と、事業運営人材を育成するソフト補助金がバランスよく振り分けられるべきだったように思いますが、補助金の財源を提供した国土交通省から見れば人材というソフトに予算を振り分けると「厚生労働省に予算を奪われる」という状況に陥るため、そのような柔軟な運用が図られなかったのではないかと推測します。

こうした予算の硬直性に伴う補助金の偏りは、省庁連携政策でよく見られることです。ただ、だからといって現状の政府の枠組みではこれを解決する手段もないというのが現実です。予算のありかたをより柔軟にするには、省庁のような縦割りのない地方自治体への分権を進めるしかないのですが、他方で現実を見ると都道府県という細切れな自治体の枠組みが時代に即しておらず分権を進めることが難しいという状況にあります。

そろそろ日本も道州制のような広域自治体制度を創設して、予算権限を政府から地方に劇的に分権すべき頃合いだとは思うのですが、これが政治的に難しく実現するめどが立っておらず大変悩ましい…というのが私から見える全体像です。「当たり前のことを当たり前に実現できる政治」って実は本当に難しいんですよね…。

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