Q.72 遠距離介護に利用できる補助金や助成金の制度があれば嬉しいのですが…。宇佐美さんは、こんな助成制度の現実味について、実現性をどう考えますか?(うすしお・会社員)
離れて暮らす親の介護が必要になりました。親は地元を離れるのは嫌だと言うので、遠距離介護を行っていますが、交通費がかさみ困っています。こういった遠距離介護に利用できる「補助金」や「助成金」の制度があれば嬉しいのですが…。そんな話、政治家や官僚の間で話題に上ったことはないのでしょうか?宇佐美さん的に、こんな助成制度の現実味について、実現性をどう考えますか?
現状介護分野では、柔軟な予算執行は難しいと言わざるを得ません
「遠距離」がどの程度かという問題があるのですが、実現に向けてのハードルは高そうです。
現在の介護関連予算は、国から地方自治体に予算が交付されて、地方自治体が執行する形が取られています。地方自治体は、それぞれ管轄する区域がありますから、その枠を超えて予算を執行するのはかなり難しいです。
ただ、育児・保育など里帰りがある程度普及している事業ですと、①住民からの依頼に基づき②住民登録している自治体から、育児・保育が行われている自治体へ依頼文を送付し③依頼を受けた自治体でサービスが行われ、これを、一時住民が立て替え、後に住民登録をしている自治体で清算する、という予算の運用がなされています。
現状介護分野では、このような柔軟な予算執行があまり行われていないようですが、可能性としては介護に関しても、今後、域を超えた予算の運用が広がっていくこともありえます。
ただ、育児・保育予算の場合、将来的には母子共々住民登録している自治体に住民が戻って税金を納めてくれる、という前提で予算の域外適用をされているわけですが、遠隔介護でもこのような前提が成り立つかどうかという問題があります。
例えば、遠隔介護対策の予算を出さなければ、当該自治体の労働人口が急減してしまう、というような危機が現実としてあるならば、どこかの自治体が交通費を助成する可能性もありますが、現実にはそのような例は限定的でしょう。
他方で、一部の交通機関は「介護割引」のような制度を用意しているので、そうした民間の制度が使える余地はないか、模索することをお勧めします。