Q.60 「介護離職ゼロ」を実現するために、どのような法整備が必要になると思いますか?(ミルキー・会社員)
安倍政権が言うところの「新3本の矢」のうちのひとつに「介護離職ゼロ」というものがありますが、現状では現実味をまったく感じられません。これを実現するために、どのような法整備が必要になるか、または社会整備が必要になるか、宇佐美さんはどう考えますか?
唯一やり残されたことといえば、介護福祉士に対する所得税や社会保険料の減免…でしょうか
まず「介護離職ゼロ」という言葉の意味についてですが、普通に聞くと「介護業界の離職率をゼロにするってことでしょ」、と言われそうですが、意味していることは全く違います。そもそも職業選択の自由が認められた現代社会で離職率をゼロにすることなどどの業界でも“不可能”です。なので、この「介護離職ゼロ」という言葉は
①介護業界の離職率を下げる(現状の16.6%からダウン)
②介護業界の離職者からの再就職者を増やす(14万人増)
③新規参入者を増やす(20万人増)
の3つの介護業界の人材不足解消を目指す政策をまとめてさすものとされています。わかりにくいですね。
こうした目標のために政府もやることはやっていまして、介護報酬を若干ながら上げようとしていたり、事業者に対して再就職採用を支援する助成金を創設したり、介護福祉士を目指す学生に対する給付型の奨学金を創設したり、介護ロボットの開発を加速化させたりとしています。私の印象としては現状で政府としてできることはやっているという感じですね。
唯一やり残されたことといえば、介護福祉士に対する所得税や社会保険料の減免ですが、これは法の下の平等に反する可能性もあるのでなかなかハードルが高い政策です。とはいえ現状、社会福祉法人は法人税が非課税なのですから、社会福祉法人に課税するかわりに、介護福祉士に対して減税を断行するという税制改革も理論上は不可能ではないので、そういった思いきった政策がとられることを期待するところです。