Q.49 増大する生活保護費について、宇佐美さんは「維持すべき」か「抑えるべき」か、どちら派ですか?(ARRA・会社員)
社会保障問題の中でも、私が注目しているのが、生活保護費の増大です。総額で3兆円にもなるこの生活保護費について、まず「抑えるべきなのかどうか」について伺いたいです。抑える必要があるとすれば、抑えるための方法について。もし生活保護費を抑える必要がないとお思いなら、その理由について教えてください。
生活保護制度を軸に、ベーシックインカムの導入などの方向で議論をすべきだと思います
生活保護費が増大して財政を圧迫していることは間違いありませんが、財政的な理由をもって「生活保護費を抑えよう」という発想は非常に危険です。なぜなら生活保護は国民の命の最後のよりどころだからです。
金がなくて身寄りもなく、日々の食に困って明日も見えない、そういう時に最後に頼るのが生活保護という制度です。そうした予算を単に財政上の都合といって斬って捨てるのは、国家としての役割の放棄に近いものです。もちろん生活保護を不正受給するような輩は許すべきでなく、今後マイナンバー制度の普及などで個人の所得把握を進めて排除すべきですが、それと生活保護費の抑制とは別問題です。
生活保護が話題になる時に私がいつも思い出すのは「京都認知症母殺害心中未遂事件」です。この事件は86歳の認知症の母の介護と仕事の両立が困難になった54歳の男性が、役所に生活保護の受給を断られて生活が行き詰まり、困窮の果てに京都の河原で母親と心中を図ったという事件です。生活保護というのはまさしくこのような人々のためにあるべきだったのに、それを断る役所の姿勢は、「市民の生活を守る」という役割の放棄とも言えるものでしょう。
社会保障制度全体が行き詰まっていることは間違いありませんが、だからといって生活保護制度を縮小させることは、国としての本来の役割を放棄することにつながります。既存の枠組みで考えることをやめて生活保護制度を軸に、ベーシックインカムの導入などの方向で社会保障制度を包括的に見直す議論をすべきだと思います。