Q.199 社会保障の財源はこれから来る時代に向けては完全に不足してますよね。その主たる消費税は、つまるところ何%まで上がるのでしょうか?(ぬまえび・会社員)
社会保障の財源は、大企業に対しての課税という手もありますが、いろいろな影響を考えるとうーんという感じで、やはり消費税なのでしょうが、現在の水準からどの程度上昇する可能性があるのでしょう。その他の財源の可能性を含めてお教えいただきたいのですが。
消費税収を1%=2.0~2.5兆円と仮定すると、現在の水準から6.4%~10.0%程度の消費増税が必要です
ご質問の点については、最近出した私の新著「逃げられない世代」で数十ページに渡ってかなり詳細に書いたのですが、さすがにここでその全てを説明しきることは困難なので、簡単にその内容を踏まえて大きな構図だけ説明しておきます。
まず、社会保障については大きく分けて3つの財源、「社会保険料・税金・年金積立金」があります。皆様には釈迦に説法ですが、前者の2つについては、原則単年度ベースで収支が回されています。利用者が医療・介護サービスを受けるときは社会保険に基づく補助がなされ、保険料負担、国庫負担でその費用が分担され、余分を患者が負担する、という構造になっています。
年金に関してもほぼ同様で、基礎年金の半分が社会保険料、半分が国庫負担、という構造になっています。他方で最後の、年金積立金は単年度ベースの財源ではなく将来の財源不足に備えて積み上げられており、その基金額を増やすことを目指して現在資産運用されています。
増税というのは、このうち国庫負担分の不足を補うための政策になるわけですが、他方で増税するにしても年金積立金の資産運用への影響を考えなければいけません。例えば主要3税(法人税・所得税・消費税)の中で、法人税などの形で会社向けに大幅な増税を図ろうとすると、年金積立金はその相当部分を株式市場で運用していますから、その運用成績に悪影響を及ぼすことになります。
株価というのは、基本的に上場企業の資産と利益配当で決まるわけですが、法人税をあげると配当原子が減るため、株価に対しては明確に下方圧力がかかることになりますからね。
所得税に関しては、表面上は上がっていないものの、実質的には社会保険料の引き上げという形で10年近くかけて上昇してきており(2003年13.58%→2017年18.3%)、これ以上の所得増税にそれほど余地は残っていません。そう考えると、やはり主たる増税は消費税ということにならざるを得ません。
では、消費税をどの程度上げなければいけないかというと、これは政府規模をどれくらいにするか、また国債をどれだけ発行できるのかということにも依存し、単純には答えられません。
ただ単純に、例えば現在の日本政府の規模を前提とした上で基礎的財政収支を黒字化することを目指すとすると、ここ数年の日本政府のプライマリーバランスは毎年16~20兆円程度の赤字ですから、消費税収を1%=2.0~2.5兆円と仮定すると、現在の水準から6.4%~10.0%程度の消費増税が必要ということになります。
本にも書きましたが、実際にはこの辺の前提はダイナミックに変わるので確定的なことは言えないのですが、頭の中の整理として、ここに書いてきたような構造があることは理解しておいても損はないと思います。