Q.196 介護休業制度を利用していない家族介護者が9割以上にものぼりますが、啓蒙担当の厚労省はしっかりと機能するのでしょうか?(ぼん・会社員)
介護休暇制度自体をそもそも知らない人が多く、その割合は家族介護者の6割を占めているそうです。この制度の啓蒙は当然、厚労省主体で動くということになるのでしょうが、その体制は万全なのでしょうか。2025年に向けて必ず必要な制度だと思いますので。
厚労省は正面切って広報予算が取れ、企業に対して働きかけを強めることができるようになる
まずは事実関係を確認しましょう。
6月19日に総務省から「介護政策に関する行政評価・監視」と題する調査が出されました。これは各省庁の政策が効果的かどうか検証するために実施するものです。
この調査では、特に「介護離職」をテーマに介護政策に関するレビューが行われたのですが、その中で以下のような問題が数多く指摘されました。
- 現在仕事をしている家族介護者のうち介護離職を経験していない者では、仕事と介護の両立について可能又はある程度可能と認識している者が約半数、困難と認識している者が約3割。特に介護離職を経験した者では、その半数が両立について困難との認識を有している。
- 介護離職を経験した者は、比較的要介護度が高い者を介護している状況がみられた。
- 仕事と介護を両立するに当たり必要となる基礎的な情報すら知らない者がおり、介護をする前に知らなかった者は半数以上。情報の提供・周知が、不十分・やや不十分とする者が多数、中には介護離職の原因となっているとする者あり。
- 60%以上の家族介護者が介護休業・介護休暇をそもそも知ず、家族介護者における介護休業制度等の認知度は低い。
- 介護休業制度を知っている者も4割近くいるが、勤め先において介護休業制度等を利用する環境が整っておらず、実際に利用したことがある者は極めて少ない。
このように、報告書の主眼は制度そのものというより、厚生労働省の情報周知体制や企業へのアプローチ不足におかれたものであり、介護休業制度そのものを批判的に捉えたものではありませんでした。
この種の行政評価報告書はその性質上、制度をよく知る所管省庁の担当者と意見交換しながら作られていくものですから、実のところ、こうした総務省の指摘には、厚生労働省の担当者が持つ問題意識や不満が反映されている可能性が非常に高いといえます。
報告書において、総務省から厚労省へ指摘された勧告も以下の通り、極めて現実的なものでした。
① 家族介護者への周知については、地域包括支援センターにおいて的確に行うよう労働局に指示すること。
② 事業所への周知については、労働局において、周知要請すべき関係機関・ 団体を明確にし、その要請を徹底するとともに、周知要請をした関係機関・ 団体における取組状況を把握するものとすること。
厚労省としては、これで正面切って広報予算を取れるわけですし、なによりも企業に対して働きかけを強められるわけですから、この方針に基づいて動くのでしょう。その意味で総務省の勧告は厚労省の担当者にとって、ある種の応援歌となっていると言えるでしょう。
総務省の担当者も表向きは怒りつつも、心の中では「しっかりやれ、頼むぞ」と応援していて、厚労省の担当者の方も「これからはきちんとやります。反省します。」と表向きは総務省に頭を下げつつも、心の中ではガッツポーズをしているはずです。これを出来レースととるか、阿吽の呼吸ととるかは皆さんにお任せします。