Q.189 中国残留邦人が介護施設に入るとヨソモノ扱いをうけるというのです。過去の政策の影響に対してどのように対応すれば良いですか?(メリー・会社員)
高齢化の影響は中国や樺太などの残留邦人にも及んでいます。戦前から旧満州に渡っていた人が帰国、介護施設に入る段になるとまるでヨソモノのような扱いをうけるというのが現実のようです。これは半世紀前に国が取った方針の影響を受けていますが、国はどのように対応すれば良いのでしょうか。
中国残留邦人にかかる介護問題には、半ば政府の予算、半ばボランティアで解決を図る予定がある
難しい問題ですね。
このような特殊専門的な問題に素人である私は明確な答えを持たないのですが、役人としての経験から思うことをいくつか述べます。
まずは現状の制度的な説明だけをしますと、中国在留邦人の帰国に対して日本政府は旅費等の実費相当の援助をするほか、身元引受人の斡旋などに取り組み、また特例として基礎年金等の一定の社会保険給付を認めています。そういう意味では中国残留邦人の問題に対して国は決して何もしていないわけではありません。
むしろご指摘のような問題は、国が帰国・生活支援をしているからこそ起きる問題と言えるでしょう。災害地の被災対策などでも共通ですが、一言で「移住(この場合は帰国ですが)を支援する」と言うことは簡単ですが、移住支援は必ず移住者の現地への適応に伴う問題を生じさせるため、こうした二次的な問題に国がどこまで介入・支援すべきかというのは非常に難しい問題になります。
一般的には移住に伴って移住者が孤立しないように、また既存のコミュニティが消滅しないように、政府としては移住者に対してなんらかの団体を組織することを促し、政府がその団体と交渉しながら現地適応を補助する事業を展開することになります。
その意味では、介護に関してもこうした体制は機能していて、各ブロックに「中国帰国者支援・交流センター」があり、2018年度には年間2,600万円弱ですが厚生労働省の援護局が「中国残留邦人等の介護にかかる環境整備」の予算を計上しています。内容に関しては予算資料で以下のように説明されています。
「平成29年度より、各ブロックの中国帰国者支援・交流センターに、中国残留邦人等の特別な事情を理解し、介護に関する知識を有する「介護支援コーディネーター(仮称)」を配置し、介護事業所や居宅等において中国語等による語りかけ支援を行うボランティア「生活・介護支援サポーター(仮称)」の募集・研修及び介護事業所等への訪問の調整等を行うほか、支援・相談員への情報提供・助言、相談対応等を行い、中国残留邦人等が安心して介護サービスを利用できる環境を整備する」
このように中国残留邦人にかかる介護の問題については、半ば政府の予算で、半ばボランティアで対応して解決を図る予定が組まれています。こうした枠組みが果たして機能するかどうかは私にはわかりませんが、とりあえず現状ではこうした取り組みを見守るということしかできないでしょう。こういう問題を知るたびに思うのですが、やっぱり戦争のない平和な状況を今後とも日本は貫きたいものですね(小並感)。