Q.186 経産省が介護人材について2035年時点で80万人不足すると試算しました。これって本当ですか?(わらしべ・会社員)
こういう推計って各省庁が定期的に行っているのを耳にしますが、いつもどういう手順で調査しているのかが気になっていました。加えて、もしこの数字が現実となったら結構問題だと思うんです。どうでしょうか。
これまでの厚労省の調査結果を基礎にして算出した、根拠の明確な確度の高い数値です
この「将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会報告書」と題する調査は、経済産業省の産業構造課という課が実施したものなのですが、現在の産業構造課長は私の元上司の蓮井智哉さんという人で、ユーモアがありつつも仕事ぶりは極めて王道を行く真面目な人でした。今回の調査手法も蓮井さんのキャラクターらしく奇をてらわない、地に足のついた推計手法を用いています。
具体的には以下のような手順で推計したようです。
①サービス需要については、地域別の将来人口予測に、過去の実績に基づく年齢別の介護サービス認定者割合(要介護度別)を乗じて算定。
②人材需要については、厚生労働省の統計から2015年の地域別・サービス種類別の介護職員数を推計し、それに将来の地域別・サービス種類別利用件数の増加率を乗じたものの総和をとることで推計。
③人材供給については、2025年までは厚生労働省の既存の推計値を流用。それ以降については、既存推計値の20年〜25年の間の介護職員数の増減率を26年以降の“生産年齢人口の減少率”で補正したものを当該年の増減率とし、前年の介護職員数に順次乗じることで将来の介護職員数を推計。
細かい部分を説明するつもりはありませんが、これまでの厚生労働省の調査結果や統計の結果を基礎データとして算出した、根拠の明確な確度の高い数値であるということです。
そんなわけで、これから年を追うごとに介護業界の職員不足が顕著になっていくことは、この報告書に書いてある通りほぼ確実でしょう。報告書ではこうした状況を、介護業界の専門性が低い仕事を切り出すことで、子育て世代の女性や高齢者のような4,400万人にも及ぶ非労働人口層に「介護サポーター」としての労働参加を促し、そうした人たちを徐々に育成してプロ化していくことで人材不足を解消する方向性が提唱されています。
そのように物事がうまく進むかどうかは別として、この報告書は推計から提言までデータに基づいた極めてまともなもので一読の価値はあると思います。私としては、やや個人的になりますが、「さすが蓮井さんの仕事だな〜」という感想です。