Q.173 「VR認知症」の取り組みについて、その課題や今後の可能性についてどう思いますか?(根無し草・会社員)
VRやARが各方面で盛んに取り上げられていますが、以前テレビで特集されていたのVR認知症が興味深いものです。この取り組みについてご意見をお聞かせ下さい。VR自体高価な技術という認識がありますが、やはり費用面が一番の課題でしょうか?
VR認知症のような取り組みは、建築やデザイン業界に大きな影響を与えるのでは
「VR認知症」という取り組みは私も初めて知りましたが、映像を見て衝撃を受け、初めて認知症の人の気分というものを少しだけ体感できました。
個人的に思うのは、こうした取り組みは、のちのち建築やデザイン業界に大きな影響を与えていくことになるだろうということです。今世紀に入って、建築・デザイン業界には高齢化社会を反映して「ユニバーサルデザインやバリアフリー」といったコンセプトが、特に公共施設を中心に広がりました。
これには中央省庁や地方自治体がさまざまな指針を作り、公共工事や公共施設の運用にその指針を適用したことも非常に大きな役割を果たしました。ただ、この中で特に意識されたのが身体的な障害であったように思います。
今後、超高齢社会が進んでいく中では、さらに一歩踏み込んで「認知症」のようなソフト面での補助も意識した設計をデザインしていかなければならなくなってくるのだと思います。実際、デザイン業界では認知症を意識したデザインの研究なども進んでいるようです。
このような時代の変化の中で、設計者やデザイナーに認知症の世界観を伝えるツールという意味で「VR認知症」という技術は大きな役割を果たすように思えます。文字で読むのと実際に体感するのは大違いですからね。
おそらく「VR認知症」のような取り組みを広めるにはそれなりに費用がかかり、誰しもが使うようなものにはならないと思うのですが、建築のような元々のプロジェクト規模が大きい分野であればそうした費用も吸収でき、また波及効果も大きくなるでしょう。業界としても差別化の要因になりうるもので、投資する価値も見いだせるでしょう。
時代の変化に応じて新しい技術が適用されていくのは、いつの時代もワクワクするものですね。