Q.164 自己破産が増加の様相を呈する中、高齢者が占める割合も相当なようです。生活保護などの受け皿は大丈夫?(マドギワの男・会社員)
自己破産件数に占める高齢者人口の増加は、高齢化が進んでいるので当たり前なんでしょうけど、これって2025年くらいになったらけっこうな問題になりませんか?
仮に高齢者が自己破産しても年金を差し抑えることはできませんから、その意味でも保護されます
生活保護という受け皿があるため、また金融庁が取り締まりの姿勢を見せているためにそれほど大きな問題にならないと思います。
自己破産件数がピークだったのは消費者金融全盛の2003年で、当時は年間24.2万件にも及びましたが、その後、消費者金融に対する規制強化と歩調を合わせるように2015年まで減少を続け、6.3万件ほどになりました。それがこの2年間は6.4万件、6.9万件と上昇の兆しを見せ始めています。
この背景にあると考えられるのは、銀行のカードを通した無担保ローンへの積極的な姿勢であると言われています。異次元緩和環境で低金利が続き、国債保有や企業向け融資で利益を上げられなくなった銀行は近年、個人向け融資や投資信託商品販売を活発化させており、カードローンの拡大もその一環と言えると思います。
銀行の場合は消費者金融と違い、「年収の3分の1以上を貸し出してはいけない」という、いわゆる総量規制が適用されないという規制の穴に起因する優位性もありました。
このように、今までは貸してこなかった信用力の低い層へ上限なく融資を活発化させたのですから、自己破産が増えたのは必然的な結末と言えるでしょう。
では、これが大きな問題につながるか、というとおそらくそのようなことはありません。なぜかというと、自己破産者は資産がないことが法的に確定しているため、生活保護受給へのハードルが低く、生活自体が成り立たなくなるリスクは低いからです。
また高齢者の場合は、仮に自己破産しても年金を差し抑えることはできませんから、その意味でも保護されます。加えて金融庁が銀行のカードローンに厳しいスタンスを見せ始めています。
おそらくは、銀行も上記のような事情を見越した上でカードローン事業を強化していたのでしょうが、最近は金融庁が銀行に対して立入検査などでカードローン事業のあり方を見直すよう指導を加えており、銀行業界としてもこれを無視できずに「年収の2分の1の水準まで貸出水準を引き下げる」などの申し合わせを締結しました。まだ全行に浸透しているわけではありませんが、これも時間の問題でしょう。
このようにカードローン問題については、過熱する前に金融庁が沈静化に向けた動きを取り始めていることからおそらくは大きな問題にならないと思われますが、極端な低金利環境が続く限りは似たような事例が今後も出てくることになるのかもしれません。その意味では、日銀のいわゆる異次元緩和政策もそろそろ見直しの頃合いが来ているのかもしれません。