Q.123 地域包括ケアシステムについて、医療と介護の連携にはどのような課題があると考えますか?(ランプ・会社員)
超高齢社会における”地域包括ケアシステム”について、医療と介護の連携にはどのような課題があるとお考えになりますか?
異業種間の円滑なコミュニケーション体制の確立と、その適切な活用が課題だと考えます
医療と介護は、業界として全く異なる特性を持っていますので、そういう他業種同士で連携を実現してくのは大変難しい問題だと思います。
私も経産省勤務時代に「農業と商工業の連携」という政策を担当していたことがあったのですが、零細体質でそれぞれが一国一城の主の農業と、企業化された商工業との世界では文化の違いが大きく、農水省の担当官と一緒に「どうすれば文化の違いを乗り越えられるのか」と頭をひねったことを思い出します。その時に双方で感じたことは、「情報の集約・共有」の重要性で、その地域の産業情報を集約・共有する拠点としてお互いの省庁の地方支分局を活用しようということになりました。
話はそれましたが、地域包括ケアシステムは利用者本位の姿勢に立って「医療」「介護」「生活支援・介護予防」という異なる業種が連携していこうという取り組みなので、やはりここでも関係する業種が患者の生活・健康情報を集約・共有していくことが不可欠になってくるのだと思います。
他方、医療と介護は同じ社会保障に分類されるとは言えど、業界特性も事業所の規模もITリテラシーの度合いも全然違いますから、その実現にあたっては異業種間のコミュニケーションを円滑するための専門の体制を整えていく必要があります。
基本的には、情報のやり取りというのは集約されればされるほど効率的になるので、医療側と介護側それぞれで地域包括ケアシステムの実現に向けた情報集約拠点を整備することが重要になります。こうした情報集約拠点となるのは、医療側であれば「地域包括ケア病棟」、介護側であれば「地域包括支援センター」ということになり、この両者で情報を共有・活用していくことが地域包括ケアシステムの本旨なのだと思います。
特に、訪問介護というのは零細事業者が多い事業所ですから、地域包括支援センターで情報の集約・管理が行われなければ医療と介護の連携は極めて困難になるのですが、この点、厚労省の審議会での議論を見ると地域包括支援センターが個別のケアマネジメントや予防プラン作成など介護側の業務に忙殺されて、必ずしも連携拠点としての役割が果たせていない問題がたびたび指摘されています。
月並みな結論ではありますが、今後こうした状況を改善して、地域包括支援センターが地域の介護サービス利用者の情報集約と、医療分野への情報の橋渡しという本来の役割に専念できる環境を整えられるのか、一方の医療分野においても地域包括ケア病棟が情報の受け手として患者の情報を適切に活用していけるのか、ということが普遍的な課題になってくるのだと思います。