Q.121 税金にしろ保険料にしろ、お金のある人から多く取ればいいという意見について、どう思いますか?(あめ玉・会社員)
税金にしろ保険料にしろ、お金のある人から多く取ればいいという意見について、宇佐美さんはどう思いますか?事情がある場合の困窮者は救済されるべきとして、頑張って稼いだ人が、楽をして稼がなかった人より多くお金を払わなければいけないのは、なんだか腑に落ちません。
ある程度、累進課税を認めるというのが民主主義的なのではないでしょうか
まず前提情報として、主要先進国の国民負担率(2014年時点)を比べてみますと以下のようになります。
- イギリス:45.9%(租税負担率35.5%、社会保障負担率:10.4%)
- ドイツ:52.5%(租税負担率30.3%、社会保障負担率:22.1%)
- スウェーデン:56.0%(租税負担率50.2%、社会保障負担率:5.7%)
- フランス:68.2%(租税負担率40.9%、社会保障負担率:27.3%)
- アメリカ:32.7%(租税負担率24.4%、社会保障負担率:8.3%)
- 日本:42.5%(租税負担率25.1%、社会保障負担率:17.4%)
(※その後2016年に43.9%にまで拡大。なお同年6.7%分を国民からの借金として国債で調達しているため潜在的国民負担率は50.7%となっている。)
このように、日本はアメリカよりも税金が高く、欧州各国よりも税金が低いという位置付けにいます。OECD33か国全体で見たときの中央値がオランダの49.3%という値ですから、日本は先進国の中では税率の低い国ということになるのですが、今後消費税率の引き上げ(8%→10%)と社会保障負担率の引き上げ(厚生年金保険料率が18.3%まで引き上げ)が予定されており、イギリスの水準に迫ることが確実です。
そして将来的には、現在の潜在負担率の水準(50.7%)程度に近づいて行くことになろうかと思います。
前置きが長くなりましたが、こうした情報を基にしてご質問に答えますと、まず「頑張っている」のと「稼いでいる」のとの関係性は必ずしも明確ではなく、私の周りでは頑張ってないのに金を持っている人も、頑張っているのに金を全然稼げていない人もいます。金を稼げる能力と努力とは必ずしも相関しないものと考えるべきで、そうした不確定な情報に基づいて議論することはあまり意味がないように思えます。
他方で、仮に資産家・高所得者に対する累進課税を認めない場合どうなるか、というと、よほど散財するような人間でなければ単純にその資産は次の世代に受け継げられることになるわけですから、それは格差の固定化に繋がっていくことになるでしょう。そう考えると、ある程度累進課税を認めるというのが民主主義的なのではないかと思います。
以上から、私としては今後必要となってくる増税に関しては、率直に資産課税や累進課税の強化によって行われるべきと考えています。まぁ本当は税金なんてあがらないほうがいいんですけどね…。