赤羽雄二「「辻褄合わせ」で国民皆保険を延命してもいずれ限界は訪れる」
米国のコンサルティング・ファーム「マッキンゼー」で14年間、経営改革に携わり、2000年からはベンチャー企業の共同創業、経営支援に取り組んできた赤羽雄二氏。その目に、超高齢社会を突き進む日本はどのように映っているのだろうか?日本人が「思考停止」を脱し、先進国に先駆けて超高齢社会の良きモデルケースをつくるための方法について語ってもらった。
文責/みんなの介護
高齢化問題はいわば長寿時代の“肥満”問題
みんなの介護 まず、日本の高齢化と、それに伴う介護の問題について、赤羽さんはどのようにお考えですか?
赤羽 日本の高齢化と介護の問題は、日本人の平均寿命が延びることで引き起こされました。寝たきりの状態が長く続くことで、本人も家族もつらい思いをしているのではないでしょうか。
みんなの介護 たった半世紀の間に日本人の人生は20年も長くなりました。その劇的な変化に、私たち人間や社会の側がまだ対応しきれていないのでしょうか。
赤羽 人間が自らつくり出した社会問題であるという意味では、高齢化問題は「肥満」と似ていますね。人類がこの世に生をうけてから数十万年の間は、常に食べ物が足りない状態が当たり前だった。そんな環境を生き延びるため、人類は少ない栄養を体内に溜めておく機能を獲得してきたのです。
ところがこの数十年、飢えることがほとんどなくなったことで、今度は逆にその貯蓄機能が「肥満」の問題を生むことになってしまいました。
みんなの介護 人類が発展し暮らしが豊かになったことで、皮肉にも、高齢化や肥満など新たな問題が発生してきている、ということですね。特に日本では高齢化問題が深刻ですが、その解決は可能なのでしょうか?
赤羽 ある程度は可能だと考えています。例えば、介護の現場では排泄介助、いわゆる“下の世話”が一番大変ではないでしょうか。介護をする側にとっても、される側にとっても嫌なことですから、深刻な人手不足に悩まされていると思います。
中にはそうした労働力を外国人に頼るべきだという主張をする人がいるようですが、私はむしろ機械化、ロボット化を急いだ方が良いのではないかと考えています。日本人はやはり外国人をあまり得意とはしていませんし、「安価な労働力なのだから、下の世話をお願いしても良い」ということでもないと思うのです。
みんなの介護 介護労働は、すんなり機械化できるものでしょうか?
赤羽 技術的には、機械化がそう遠くないところまで来ていると思います。もちろん完全ではありませんが。あるベンチャー企業が、超音波センサーで排尿や排便のタイミングを予測するデバイスを開発したという記事が確かありました。排泄介助が必要な時間を予測することができれば、機械化に移行する前でも、効率的な対応をすることができるようになっていくと思います。
みんなの介護 しかし、介護をロボットにやらせるということに抵抗感を抱く人も多いのではないでしょうか?
赤羽 その機械が良いものであれば、抵抗感などはすぐになくなっていくでしょう。ウォシュレットなども一気に広まりましたよね。それと同じことです。
介護の負担を大幅に減らすことのできる機械は、十分開発可能です。行政からではなく、「吉野家」の牛丼や「ユニクロの服」のように、市場のニーズの要請から広がっていくことが望ましいと思います。
みんなの介護 しかし、介護を受ける本人は納得したとしても、家族が機械介護を受け容れないケースも多いのでは?
赤羽 そうでしょうか。むしろ家族は、介護が楽になるので喜ぶのではないでしょうか。また、私は「家族だから介護すべきだ」という考えにはそれほど賛成できません。というより「できることなら、家族が無理に親の介護をしないほうがいい」とさえ考えています。
例えば、先に述べた排泄介助はプロの介護士でも大変な作業ですから、家族がやるとなおさらきつい。家族はその人の元気な頃を知っていますから、自分ひとりで用も足せない状態になっているのを見ると、つらいですよね。
私は、家族だからと言って無理に介護をするのではなく、負担を減らす方法を本気で開発し、介護離職、介護自殺、介護殺人、介護離婚などをなくしていくべきではないかと考えています。
深刻な問題を先送りにしてきた日本人
みんなの介護 日本は先進国の中でいち早く高齢化を迎え、医療や介護をはじめとする制度づくりに取り組んでいますが、世界に誇れる超高齢社会のモデルをつくることはできると思いますか?
赤羽 可能だと思いますが、ただ“日本人の考え方”がその障壁になってしまうかもしれません。例えば、私は、人間には自分で死ぬ時期を決める権利があるのではと思っています。しかしこの考え方に同意してくれる日本人はそう多くなさそうですよね。一部の国や州では「安楽死」の権利が認められ、幇助(ほうじょ)自殺が合法化されていますが、日本ではまだまだです。
みんなの介護 なぜ、日本では安楽死が議論されないのでしょう?
赤羽 「面倒なことはあまり議論したくない」という日本人の資質が、そうさせているのだと思います。胃瘻(※いろう。胃に穴を開け、チューブで栄養を補給する医療技術)に象徴されるように、日本人は人間の尊厳を真剣に議論するよりも、過剰な延命治療に頼って問題を先送りにしてしまいがちなのです。
もし家族が決意して、患者の延命装置を外そうとしたらどうなるか。きっとその家族は、世間から非難されるでしょうし、それに関わった医師や医療機関のスタッフもまた何らかの罪に問われるでしょう。それが日本という国の現状なのです。
みんなの介護 そうした日本人の気質は、そもそもどこから生まれたのでしょう。
赤羽 少なくとも、ここ数十年といった短期間ではなく、長い歴史の中で培われたものだと思います。農耕民族であり、島国で外国からの影響をそれほど受けてこなかったこと、ムラ社会だったことなど、さまざまな環境要因があります。
もちろん、それには悪い面だけではなくて、良い面もあります。海外の国では、権力に対する民衆の不満や怒りが溜まったとき暴動や革命が起こりますが、日本ではそれに匹敵するような、根本から秩序をひっくり返すほどの動きはあまり起こっていません。
地震で大変な状況のときにも互いのものを奪い合ったりせず、きちんと列に並んで人に迷惑をかけないようにする日本人の姿は、海外で驚かれましたよね。日本人は、他国の人からすれば不思議に思えるほど平和的で穏やかな資質を持っていると私は考えています。
辻褄合わせには限界がある
みんなの介護 ところで、「団塊の世代」と呼ばれる人たち全員が75歳以上になる2025年、医療費は現在の1.4倍に、介護費は2倍に膨れ上がると言われています。さすがに、いつまでも問題を先送りにはしてはいられない状況だと思いますが。
赤羽 日本の国民皆保険制度は立派だと思いますが、高齢化が進めば、今の形で維持するのが難しくなるでしょう。
とはいえ、制度そのものが早晩破たんするとはあまり考えていません。医療点数の計算方法を変えるとか、費用のかからない薬の認可の枠を広げてコストダウンするとか、医療費の自己負担率を上げるなどの調整によって、制度を「延命」していく方向にこれから向かっていくでしょうから。
みんなの介護 日本人も意外にしぶといわけですね。しかし、いつかは本当に破たんする日が来るのでは…、と不安になってしまいます。
赤羽 もちろんです。政府は単に辻褄(つじつま)を合わせ、見せかけの平和を維持しているに過ぎない。ビジネスの世界で国際競争力を失い、海外の企業との間に圧倒的な差ができてしまったのも、そういった風土が一因となっていると思います。
「Google」や「Apple」「Microsoft」「Amazon」といった海外の企業の時価総額が50~80兆円であるのに比べ、日本では大企業と呼ばれる会社でもたかだか数兆円規模のものが多勢を占めてします。20兆円に達している「トヨタ」だけは唯一の例外ですが。
物事をしっかり考え抜く知恵と習慣が日本人には足りませんし、「出る杭は打たれる」と言われるように、日本社会は他に抜きん出た能力が出て来にくい土壌になってしまっているのです。今後、超高齢社会のモデルケースをつくっていく上で、まずはそのような日本社会の本質的な部分から改めていく必要がありそうですね。
高齢化問題は、日本人が自らの力で解決しなければならない
みんなの介護 日本人が「ことなかれ主義」や「出る杭は打たれる」社会を脱するための処方箋はありますか?
赤羽 とにかく日本人に欠けていると思うのは「自分の頭でしっかりとものを考え、積極的に行動する」という能力と習慣です。
例えば、生命保険なども過剰に保険に入っていると思われます。「とにかく保険に入っておけば安心」という考えで、保障の種類、条件、幅などを考えずやみくもに保険商品を購入している人が多いのではないでしょうか。
みんなの介護 「自分の頭でしっかりとものを考え、積極的に行動する」という能力があれば、そうした無駄は回避できるわけですね?
赤羽 そう思います。自分ではあまり考えず、うのみにしたり、あるいは現状の問題を政治家や行政のせいにし不安や不満をひたすら抱き続けたりする、というのはちょっと残念な姿勢だと思います。これは一人ひとりだけの問題ではなく、企業も官公庁も政治家も同様になんでこうなんだろう、おかしなことが続くんだろうとよく思います。
例えば、医療において、保険が適用されるのは厚生労働省が認めた治療法や投薬に限られ、それ以外の方法は「自由診療」になります。そこまではまだ理解できるとしても、一部だけ保険外の治療法が入ると、全額が自由診療になるのはなぜでしょうか。役人はもっともらしい説明をしますが、納得できないことは多いと思います。その点を突っ込むと、根本にある省益重視の考え方が出てきます。
みんなの介護 政府の福祉政策のみに頼るのではなく、市場原理を導入してサービスを自由に選べるようにすることが、介護・医療にとって望ましいのでしょうか?
赤羽 市場原理だけではなく、もっとよく考えた行動を取ることができるように変わっていかなければならない、と思います。言い換えれば、自分たちで議論し、よりよい方向に大きく変えていくということが比較的苦手な国だと思います。
これまで日本が何かしらの根本的な改革を進めることができたのは、海外などの外圧に影響されたときではないでしょうか。大政奉還、明治維新を進めることができたのは黒船が来航して開国を迫ったからですし、戦後の高度経済成長も、敗戦によって既存勢力・既得権益者が一掃され、新しい世代が台頭し大活躍した結果、実現したと理解しています。国の危機になるような大きな力が働くと俄然がんばって、力を発揮する国民性です。
しかし、現在の深刻な高齢化と介護の問題には、そのような外圧がありません。つまり、他国からの圧力なしに日本人が自らの力で解決していかなくてはならない。そういうときに力を発揮するかどうかは、過去の例からは微妙と言わざるを得ません。一刻も早く「自分の頭でものを考え、積極的に行動する」という能力を醸成し、ものごとを前に進ませるべきだと思います。
「年齢」というレッテルに、日本人はこだわり過ぎている
みんなの介護 人間なら誰しも、自らの「老い」というものに直面しなければなりません。そのことについて、どのように考えれば良いと思いますか?
赤羽 再生医療や創薬の技術は、「死ぬ瞬間まで、なるべく若々しく生きたい」という気持ちを実現する方向にどんどん進んでいくでしょう。
ところが日本では、寝たきりになりつらい状況のままで生きるということがかなり続きます。私はそういうふうには絶対なりたくありませんし、人間の尊厳にも関わる問題だと思います。延命治療をどこまですべきなのかなども含めて、私たちは真剣に考え、行動できるようになる必要があります。
みんなの介護 赤羽さんご自身60代を迎えられましたが「老い」にはどう向き合っていますか?
赤羽 健康については、ストレスを感じない、ストレスを溜めない、暴飲暴食をしない、過度な飲酒をしない、ということを常に意識をしてきました。そもそも私は酔うという状態が好きではないので、お酒でストレスを紛らわすことはしませんし、週に1回は必ずテニスをして身体を動かすようにしています。とはいえ、これは「60代だから」とか「年相応に」などと年齢を考えてしていることではなく、昔から常に意識していたことでした。
だいたい、日本人は「年齢」というレッテルにこだわり過ぎるところがあり、違和感を感じます。20代であろうが40代であろうが70代であろうが、健康を維持することは誰にとっても大事なことだし、それを維持する方法をいろいろ工夫する必要があります。年齢を過度に意識するのではなく、人生をもっと前向きに捉えればと思います。
なぜ私は『ゼロ秒思考』を書いたのか?
みんなの介護 赤羽さんの思考術を明かしたご著書『ゼロ秒思考』シリーズは累計28万部を数える大ヒットとなり、仕事や人生に悩む多くの人たちに読み継がれています。
赤羽 経営改革の仕事に携わる中で私が痛感したのは、日本の企業は国際競争力を失い、海外の企業との間に取り返しのつかないほどの差が生まれてしまっているという現状です。特にITやインターネットが発達した2000年以降、その差は凄まじく広がっていきました。
これは経営者や経営幹部だけの問題ではありません。部課長クラスや一般職に至るまで、「自分の頭で考えて積極的に行動する」という能力があまり伴わない人が多いのです。
みんなの介護 なぜ、そうなってしまったのでしょう?
赤羽 私は、普通に会話をしたり本を読んだりインターネットを利用できる人はみな、本来的には「頭が良い」のだと考えています。しかし残念なことに、日本では小学校から大学までどの教育過程でも「深く考え、発言し、行動する訓練」があまりきちんと行われていない。そのため、多くの人はどうやったら深く考えることができるのか、どう発言し、行動すれば良いのかわからずにいるのではないでしょうか。もちろん皆さん、考えているつもりにはなっているのですが。
『ゼロ秒思考』を書いたのは、そういう方々に「自分の頭で考えて積極的に行動する」能力を養ってほしかったからです。経営者や経営幹部だけでなく、すべての人がこういった考え方を身につけることで「ことなかれ主義」をなくし、きちんとした意思決定ができるようにし、日本がもっと良くなるようにしたかったのです。
みんなの介護 『ゼロ秒思考』を身につける最短、最良の方法が「メモ書き」だと言います。その具体的な方法を教えてください。
赤羽 A4用紙を横置きにし、頭に浮かぶことを一件一葉で書いていきます。左上にタイトル、右上に日付を書いて、タイトルの下に4~6行、各20~30字を書きます。
例えばこれは、ある大手流通業で1000人ほどの部下をもつ地域本部営業リーダーが、部下を指導する力について考えるために書いたメモの内容です。
自分ならどんな指導を受けたいか 2013-12-1
- 自分の課題を明確にしてほしい
- 自分の課題に対して具体的な行動指導をしてほしい
- フィードバックして、何が良くなっているのか明確にしてほしい
- 自分の課題を明確にしてほしい
- 良い、悪いをはっきり伝えてほしい
- やる気を持たせてほしい
- 自分でもできるかもし自信を持たせるフィードバックがほしい
このメモを書いた方は、非常に優秀で受け答えも素晴らしいのですが、部下に対しては我慢できずすぐに怒鳴りつけてしまうといった方でした。そこで「自分だったらどんな指導を受けたいか」と自問していただくことで、怒鳴りつけること以外のアプローチにも気づいていただきました。
このメモ書きは、習慣づけることがとても重要です。「1ページを1分で書く」「毎日10~20ページ書く」ということを3週間くらい続けると、頭にどんどん言葉が浮かぶようになります。もやもやしていた考えが明確な言葉になり、アイデアが次々と出てくるようになるでしょう。不安に思っていることや悩みなども抱え込むことなく、常にすっきりとした気持ちで過ごせるようになります。
本書で提唱している「A4メモ書き」法は、年間60回ほどの講演で必ず実施します。これまで1万人以上が実践され、大きな変化を体験された方が多くいらっしゃいます。
読み返すのではなく、とにかく書くことが重要
みんなの介護 メモを書くだけでアイデアを思いついたり、不安や悩みを解消したりすることができるのですか?
赤羽 その通りです。思いついたこと、気になること、疑問点、次にやるべきこと、自分の成長課題、腹が立って許せないことなど、頭に浮かんだことを何でも書く。頭に浮かんだそのまま、A4メモに書き留めるのです。
綺麗に書こうとか、かっこいい内容にしようとか考えず、頭の中の思考や感情をどんどん外部メモリーに吐き出していく感じです。1ページ書くのに1分以上かけてはいけません。最初は2行くらいしか書けなくても、また5~7字程度しか書けなくても全然構いません。1分を意識して必死に書いていると、十数ページ後には速く書けるようになります。また、夜寝る前にまとめて10ページとかではなく、思いついたその場で書くというのも重要です。もやもやを溜めず、すぐに吐き出すためです。
みんなの介護 「1日10ページも書くことが思いつかない」という場合は、どうすればいいですか?
赤羽 メモ書きは、頭に浮かんだことをそのまま言葉にすることが目的ですから、昨日書いたタイトルや似たような言葉・フレーズが浮かぶことがあるでしょう。そういうものも躊躇なく、もう1度書けば良いのです。また、書いたメモの行のどれかを次のタイトルにして、もっと思考を深掘りしていくこともできます。
そうやって浮かぶたびに何度でも似たようなテーマ、言葉・フレーズを書いていくと、もやもやがなくなって頭が整理され、気になっていることや課題の解決法がはっきりしてきます。そうなると、同じテーマに関してはもうメモに書こうと思わなくなります。書く必要がなくなるからです。
みんなの介護 書いたメモは、どうするのでしょうか?
赤羽 1日10ページのメモ書きを2週間続ければ140ページ、1カ月で300ページの量になります。これを放置すると収拾がつかなくなるので、7~10個程度のカテゴリーをつくり、そこにメモを保存することをおすすめしています。
具体的には、A4のクリアフォルダにラベルを貼って、「将来のビジョン、やりたいこと」「コミュニケーション」「チームマネジメント」「新しいアイデア」「悩みごと」「聞いた話」という具合にフォルダを分けます。そして、毎日寝る前に、書いたメモをフォルダに放り込んでいく。
以前に書いたA4メモは、そう頻繁に見直す必要はありません。見直すくらいなら、その時間は頭に浮かぶことをどんどん書くことに使った方が良いです。ただし、3カ月ほどたったらフォルダからメモを全部出して古いものから並べ直し、ざっと読み直してもよいかと思います。
自分が何を迷っていたか、どういうことを思いついていたか、どう進むことにしたかなど、成長過程がはっきり見えます。さらに3ヶ月ほどたったときにも同様にすれば、過去の自分が何に悩んでいたのか、どうしようと決めたのか、その後どれほど成長したのかがすべてわかります。自分への自信が湧いてきます。この2度の読み返し以降は、原則としてもうメモを読む必要はないと考えています。
「自分はなぜこの仕事をしているのか」を考える
みんなの介護 介護現場もストレスが溜まりやすい環境ですから、「メモ書き」法は役立ちそうですね。
赤羽 例えば仕事に就いたばかりの新人の介護士さんなら、何もかも初めてのことばかりで緊張しっぱなしでしょう。そういうときは、目につくこと、感じたこと、注意されたこと、こうなりたいと思ったことなどをメモに書くといいです。頭が常に整理された状態になり、感情に流されにくくなり、今何をやるべきか、次は何を準備しておくべきか、仕事の全体像がどうなっているのか、はっきりと把握できるようになります。
みんなの介護 「仕事がつらい」「辞めたい」といった悩みを解消するにも、この方法は使えそうですね?
赤羽 嫌なこと、気になること、腹が立つけどどうしたらいいかわからないことなどは、言葉にしないまま溜め込んでおくと大きなストレスになります。特に介護の現場で働いている方々は、仕事のつらさと自分の使命感との葛藤に苦しみ、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
そういうときは「自分はなぜこの仕事をしているのか」「自分の本当にやりたい仕事なのか」「この仕事は自分に向いているのか」「この仕事の社会的意義とは何か」「自分にとって天職とは何か」といったテーマでメモ書きをすることをおすすめします。
また、仕事がつらいのなら「なぜこんなにつらいのか」「つらさを取り除く方法はないのか」、「なぜ○○さんは私の悪口を言うのか」「なぜ私は悪口を言われるとすごく嫌なのか」というようなタイトルで書いてみます。腹が立ったとき、気分が悪いときは、それを全部メモに書き出すだけでかなり楽になります。
みんなの介護 大事なのは、頭の中でもやもやしているものを言葉によって整理し、明らかにすることなのですね?
赤羽 そうです。頭の整理ができるということは、「今何が大切か/大切でないか」「今何をすべきか/しなくてもよいのか」ということが常に明確にわかっているということです。
そうなれば、腹を立てることはほとんどなくなり、仕事の成果もどんどん挙がっていきます。結果的に自分に自信がつき、ポジティブになり、自分を大きく成長させることができる。何があっても容易には感情が乱れることなく、慌てずに状況把握し、重要・深刻なものから順次、解決していくことができるようになります。
撮影:公家勇人
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