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三宅義和「年を取ること「記憶」という資産を増やすこと。思い出に浸かる老後も悪くない」

最終更新日時 2020/11/09

三宅義和「年を取ること「記憶」という資産を増やすこと。思い出に浸かる老後も悪くない」

2020年、日本の高齢者率が世界一に。わが国で進行を続ける国民の超高齢化によって到来した「人生100年時代」をどのように生きていくべきなのか。英会話教室イーオンの代表取締役社長であり、各界著名人との対談を通して数々の知見をお持ちの三宅義和氏に、人生100年時代の豊かな生き方とご自身の生活を支える「心身の健康」の秘訣について語っていただいた。

文責/みんなの介護

人生の豊かさの定義と最後の時間の過ごし方は人それぞれ

みんなの介護 日本人の平均寿命や健康寿命が延びたせいか、ここ数年で「人生100年時代」という言葉があちこちで聞かれるようになりました。65歳で現役を引退した場合、まだ30年以上の人生が残っている計算になります。長い老後を豊かに過ごすにはどうすべきか、三宅さんはどのようなビジョンをお持ちでしょうか。

三宅 「豊かさ」は極めて主観的なものですから、皆さんのそれぞれの人生において、それぞれ異なる豊かさがあるはず。私がここであれこれ述べるのは、おこがましいような気がします。

とはいえ、最近五木寛之さんの『回想のすすめ』を読んで、「なるほど」と深く納得したことがあります。それは、「過去を振り返るのは決してネガティブな行為ではない」ということ。

これまで、高齢者の方が思い出を懐かしく反芻するのは、どちらかと言えば後ろ向きでネガティブな行為とされてきましたね。思い出に生きるのは、ただの現実逃避ではないか、と。しかし五木さんの本を読むと、人の記憶が一種の“資産”であることがよくわかります。そして年齢とともに増えていく「記憶という資産」を、自由に活用して楽しむのもアリだと実感しました。最近、私の身の回りから「老後の楽しみが見つけられない」という話を耳にします。ですが、特に何もしないで回想にとっぷり浸かる老後も悪くないのではないでしょうか。ゆったりと自分の人生を振り返ることも、それはそれで豊かな老後の過ごし方だと思うのです。

みんなの介護 「年を重ねるごとに『記憶』という資産が増えていく」と考えることができれば、年を取ることもそう悪くないと思えてきますね。

三宅 亡くなる直前まで仕事を続ける、という老後もあっていいでしょう。

私が通っている旧知の理髪店があるのですが、そこの先代のご主人は、かつてマッカーサー元帥やマンスフィールド大使なども担当された名物店主でした。今から6・7年前に亡くなりましたが、亡くなる数ヵ月前まで月に何日かお店に出て、昔話に花を咲かせながらお得意様の髪をカットしていました。

年を取ってから毎日仕事をするのはしんどいけど、月に数日程度であれば、最後まで実社会とのつながりを実感しながら生きることができる。それもまた素敵な老後だと思います。

現役時代から何か打ち込めるものを見つけておく

みんなの介護 三宅さんご自身はどのような老後をイメージしているのでしょうか。

三宅 私は新しいことにチャレンジするのが好きなので、新しい出会いや発見を求めて、毎日ワクワクしながら過ごしたいですね。「人生は学びの連続」だと考えています。昨日より今日、今日より明日と、できることやわかることが死ぬまで少しずつ増えていくような人生を歩んでいきたいと考えています。

もちろん、私のような生き方を皆さんに押しつけるつもりはありません。現に私の友人ですでにリタイアしている人は旅行が趣味で、いつも日本中のあちこちを旅行しています。今は新型コロナの影響で自粛していますが…。また別の友人は趣味の合唱サークルに入っていて、コンサート開催に向けて毎日練習に力が入っているそうです。

老後の過ごし方は人それぞれですが、現役時代に趣味の活動を一切したことのない人が、リタイアしていきなり何かを始めて趣味が充実する、というのは考えにくいと思います。豊かで自分らしく生きがいのある老後を過ごすためには、現役時代から何か打ち込めるものを見つけておいたほうがいいかもしれせんね。

みんなの介護 三宅さんが今打ち込んでいる趣味はなんですか。

三宅 ピアノと合氣道です。ピアノは子どもの頃に一時期習っていたのですが、半世紀以上経った6・7年程前に再開しました。一流のプロの先生に習いに通っていますが、やはり独学で学ぶのとは全然違いますね。自分が上達するほど、出てくる音が違ってくる。これは楽しいです。

また、心身統一合氣道に入門したのは60歳を過ぎてから。それまで、合氣道の道場で氣の勉強はずっと続けていましたが、そろそろ本格的に習いたいと一念発起して始めました。合氣道の稽古には毎回深い学びがあって、道場に通うたびに新たな感動があります。

これらの趣味は、仕事にも良い影響をもたらしてくれます。例えば疲れていて頭がうまく回らないとき、ピアノの練習曲を両手で弾いているイメージを自分で思い描くだけで、脳がしゃきっと活性化する。物ごとがなかなか思い通りに進まなくて閉塞感を感じたとき、合氣道の動きをイメージするだけで、体も心もスーと落ち着いてきます。

今日、私に何か素晴らしいことが起こると信じている

ストレッチと呼吸法で心身をほぐして気持ちも前向きに

みんなの介護 新たなことに挑戦し続ける三宅さんのバイタリティーはどこから生まれてくるのでしょうか。

三宅 活動的で充実した人生を送るためには、心身の健康がとても大切です。特に最近は体の健康が重要だと感じるようになりましたね。合氣道の稽古では、飛び込み前転のような動きを連続して行ったりします。目が回りそうになりますが、69歳の今でも、若い練習生と同じように稽古できることが、私の健康面での大きな自信になっています。また毎朝百数十段の階段を上り下りするのも日課にしています。

体を鍛えることとともに私が重視しているのは、体の柔らかさです。これは私だけの感覚なのかもしれませんが、体と心は連動していて、体が硬くなると心まで硬直して頑固になるような気がしています。ですから、心身統一合氣道の柔軟体操は欠かしません。

みんなの介護 体の柔らかさを意識されているとのことですが、実際にどのような場面で変化を感じるのでしょうか。

三宅 体が硬いと、呼吸が浅くなりがちだと感じます。呼吸が浅くなると体が緊張状態になって、イライラしたり、焦ったり、怒りっぽくなったり、良いことは何一つありません。逆に呼吸が深くなると、心身ともにリフレッシュできて、新たなエネルギーやアイディアが湧いてくる。「体を柔らかくすること」と「深く呼吸すること」は関連していると思います。

最近では心身統一合氣道の呼吸法を実践しています。自分の呼吸に意識を集中して、まず口から深く長く息を吐き、その後鼻から静かに吸います。私はできる限り眠る前に15分間、この呼吸法を行うようにしています。

みんなの介護 三宅さんのバイタリティーの秘密は、ストレッチと呼吸法にあったんですね。

三宅 もう1つつけ加えるなら、心の持ち方ですね。例えばクラシックの音楽会を聴きにいくとき、「今日のコンサートこそが生涯最高になる!」と自分に言い聞かせてから会場に行くのです。すると本当に、「これまでで最高!」という感動が味わえる。

毎朝出社するときも、私は“I believe something wonderful is going to happen to me today!”と何度か声に出してから家を出ます。「今日、きっと何か素晴らしいことが私に起こると信じている」という意味です。自分にしっかり言い聞かせると、不思議とその日を過ごすことにワクワク感が湧いてくる。この気持ちは、その日私と接する人たちにもお裾分けできているのじゃないかと思っています。

英語は「勉強科目」ではなく、会話を図る「ツール」

みんなの介護 老後の過ごし方に悩んでいるという方に、どんなアドバイスをされますか。

三宅 手前味噌で恐縮ですが、「英語の学び直し」などはいかがでしょうか。実は私自身、ピアノ、合氣道に次ぐ3つ目の趣味として、日々取り組んでいるものでもあります。

英語をお奨めする理由は2つあります。まず1つ目が、「ゼロからのスタートではない」ということ。高齢になってから、アラビア語やロシア語など完全に未知の言語にチャレンジするのはハードルが高すぎます。しかし英語であれば、中学高校で6年間学んだベースがあるので、無理なくスタートが切れると思います。学び直していくうちに、単語、熟語、文法など、懐かしく思い出されてくるはずです。

理由の2つ目は、オリンピックです。来年東京オリンピックが開催されれば、多くの国々からたくさんの観光客が来日するでしょう。その際、英語さえある程度マスターしていれば、さまざまな国の方との会話が可能になります。何と言っても、英語は世界共通語になりつつありますから、コミュニケーションの幅は格段に広がるはずです。

みんなの介護 「英語をもっとしっかり勉強しておけば良かった」という声はあちこちで耳にしますが、勉強を始めるのに“遅すぎる”ということはないんですね。

三宅 はい。遅すぎるということはありませんが、一方で、「早いに越したことはない」ということも事実です。文科省の教育改革で、小学3年生から英語の「外国語活動」がスタートしましたが、早いうちから英語の「音」に耳を慣れさせておくことには大賛成。やはり言葉は、母国語のように耳から自然と覚えさせるべきです。

これまで日本では、英語を中学から「教科」として学んできた。だから英語は、日本人にとっていつまでも「お勉強」だし、街で外国人から話しかけられると、テストを受けているかのように緊張してしまう。「失敗できない」という意識が、日本人の英語習得を難しくしてきたのではないでしょうか。

撮影:荻山拓也

英会話イーオン

1973年の創業以来、英語教育を通してお客様の人生を豊かにし、世界と日本で活躍できる人材を育成することを使命に、全国主要都市に直営250校以上英会話教室を運営。企業や自治体、学校法人への研修受託やインターネットレッスンなどのオンライン事業のサービスを展開している。

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森田豊
医師・医療ジャーナリスト
2022/11/07