「問題行動」がひどいので施設の入居を断られてしまった…。かといって、このまま家でみるのにも限界がある。途方にくれていたら、近所の精神科病院に入院することをすすめられた。精神科病院は認知症専門の病院だから、安心ね!
精神科病院への入院でかえって認知症が進行してしまうケースも
精神科病院に入院させることの意味
精神科病院は、ほかの病院に比べて職員が少なくてもいい決まりになっています。職員が少ない精神科病院では、十分な看護が行えていないこともありますが、そういう病院に「問題行動」があるお年寄りが入院すると、閉じ込めるか薬でおとなしくしてもらうしか方法がありません。
家族は、認知症の人がいなくなることで問題が消えたかのように錯覚し、精神科医も「当然のことをした」と思っています。しかし、本人にとってはどうでしょう。いいわけがありません。
多くの認知症の人が、精神科病院への入院でかえって認知症を深めています。それを見て、家族も結局つらい思いをするのです。
日本には精神科病床が多すぎる
全世界の精神科病床(入院ベッド)は約175万床ですが、その約20%は日本にあります(2014年の推計値)。日本には精神科病院が多すぎるのです。
多くは民間病院なので、国が削減したくても簡単に削減できません。
近年は統合失調症患者の在宅化(外来への通院)が進んで入院が減ったため、空きベッドを認知症高齢者で埋めようとする傾向があります。
うまく言葉で伝えられなくても、欲求があることを喜ぼう
「問題行動」は人間らしい欲求の現れ

認知症になると、お年寄りは自分の欲求をうまく言葉で伝えられなくなっていきます。だから言葉の代わりに「問題行動」で表現しようとするのです。
むしろ欲求があることを喜び、落ち着いて行動の裏に隠された気持ちに目を向ければ、適切なケアのヒントは必ず見えてきます。
入院させたり薬で鎮静するのは、欲求を力づくで押さえ込むようなもの。お年寄りを衰弱させるばかりです。

問題行動の裏にある「欲求」に目を向けよう