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「おしゃれは元気のみなもと」76歳の“おしゃれ番長”柏木由紀子さんが輝き続ける理由に迫ります

「くらたまのいま会いたい手帳。」今回のゲストは女優・タレントの柏木由紀子さんです。故・坂本九さんの奥さんとしても知られる柏木さん。76歳のいま、日々の私服姿をSNSに投稿すると「おしゃれ番長」と言われるほど大反響を呼ぶようになりました。多くの方から憧れを集める柏木さんの魅力に漫画家くらたまが迫ります。

著者:柏木由紀子 扶桑社 (2023/12/13)

おしゃれなファッションを紹介して好評を博した『柏木由紀子ファッションクローゼット』に続く第2弾。ファッション・インテリア・お料理・趣味・お花・アクセサリーなど、日々の暮らしにおける柏木さんのこだわりを詳しく紹介しています。手間ひまかけたおしゃれなライフスタイルは、見ているだけで楽しくなります。

子どもの頃から洋服を見るのが好きだった

くらたまくらたま

柏木さんのおしゃれ、ますます注目が高まっていますね。実は私の妹も柏木さんの大ファンで、インスタグラムをずっとフォローしているんです。「年齢を重ねても柏木さんみたいにおしゃれを楽しみたい」なんてお声も多いですよね。

柏木柏木

ありがとうございます。本当にうれしいことです。でも、もともとは、自分の楽しみのためにおしゃれをしていただけなんです。

柏木由紀子さん(撮影:熊坂勉)

くらたまくらたま

そうなんですね。柏木さんの印象に残ったフォロワーの方の声ってほかにもありますか?

柏木柏木

「このスニーカーは〇〇のブランドのものですか?」という質問なんかもよくいただきます。すでに売ってない靴の場合もあるのですが、販売中のスニーカーだった場合は、マネして買ってくださる方がわりといらっしゃるとも聞きます。

それから、伊勢丹で必ず食べるアフォガードのアイスクリームがあるんです。それをインスタグラムで紹介したら、お客さんがたくさん来るようになったので、多めに仕入れをしているという話も聞きました。わざわざ地方から食べに来られる方もいるみたいで……。

お気に入りのお店で「私のインスタグラムを見て来た」と言ってくださる方とばったりお会いすることもあります。想像以上の反響で本当にありがたいです。

※柏木由紀子公式Instagram(@yukiko_kashiwagi)より、アフォガードアイスクリームを楽しむ柏木さん

写真:アフォガードアイスクリームを楽しむ柏木さん(柏木由紀子公式Instagram(@yukiko_kashiwagi)より)



 
くらたまくらたま

まさしく柏木さんが「おしゃれ番長」と言われるゆえんですね。昔と今ではおしゃれの仕方は変わりましたか?

柏木柏木

若い頃は、原色をあまり着なかったんです。でも、この10年ぐらいは赤を着るようになりました。すると不思議なことに色から元気をもらうんですよね……。それに、これまで避けていた服を着てみたら、意外と楽しめるということもあります。




 

38年前に主人を亡くし、失意の中にいた私に前を向く勇気を与えてくれたのも、お洋服でした。そのとき選んだ明るく華やかなピンクの服が、仕事に復帰した私に力を与えてくれたんです。1枚の服で、こんなにも気持ちは変わるんだ……と実感した私は、おしゃれを楽しむことで、少しずつ元気を取り戻していきました。

(『柏木由紀子ライフクローゼット』P4より引用)
 
くらたまくらたま

ご著書に載っていたお洋服、どれも素敵でした。おしゃれのセンスはどうやって磨いてこられたんですか?

柏木柏木

お洋服は子どもの頃から興味があったんです。当時のファッション雑誌は子どもが見るような感じではなかったけど、私は大好きでした。それに、街でおしゃれなお洋服を着ている人やお店に飾ってある服を見るのも好きでした。テレビを見ていても、大人がしているおしゃれな腕時計とかに見入っていましたね。
柏木由紀子さん(撮影:熊坂勉)

くらたまくらたま

おしゃれな人って、見ているところが違うんですね。

柏木柏木

もしかしたら、ジュニアのモデルをしていたことも関係しているのかもしれません。それから、お洋服を「作ってもらう」のも好きでした。

くらたまくらたま

作ってもらうんですか?

柏木柏木

私の子どもの頃は、今のように既製品のお洋服を選ぶスタイルではなかったんです。雑誌に載っていたお洋服で気に入ったのがあれば、それを注文して作ってもらっていました。

くらたまくらたま

雑誌を見せながら「こういう服を作ってほしい」という感じで?

柏木柏木

生地を買って、雑誌に載っていた型紙を参考にして作ってもらうんです。昔はそういう時代でした。私は当時から、そうやって服を作ってもらうのが好きでした。

くらたまくらたま

子どもの頃に好きなものって、その後の人生にも影響を与えますよね……。柏木さんは、1970年代に買ったお洋服とかも大事に着られてますね。

柏木柏木

それぞれのお洋服に思い入れがあったので大事に保管していたんです。私、断捨離できないタイプなんですよねぇ。高いなぁと思いながらも買ったお洋服とか、思い出のお洋服なんかは捨てられませんね。

くらたまくらたま

50年前の服であっても、今の方が新鮮に見えることもありますよね。

おしゃれは元気のみなもと

くらたまくらたま

柏木さんは、誰に会うわけでなくても毎日おしゃれをしてますね。私、自分にそういうところが欠けているから、すごいなぁと思います。

柏木柏木

ありがとうございます。おしゃれが好きなので、続けられているんです。

くらたまくらたま

本当におしゃれな人って、人と会わなくてもおしゃれですよね。

柏木柏木

自分の満足につながってるんでしょうね。

朝起きて、ずっとパジャマっぽいものを着て一日おうちでだらだらしていると、具合が悪くなっちゃうんです。だからメリハリをつけています。午前中は、動きやすい恰好でお掃除をする。それが終わったら、パチッとスイッチを切り替えておしゃれをする。そうすると、やっぱり気分が上がります。

それから、用事を作るのも大事だと思うんです。例えば、「買わなきゃいけなかったものないかな」とか「新しくできたあのお店に行ってみたいな」とか。

柏木由紀子さん(撮影:熊坂勉)

くらたまくらたま

用事を作るのってすごく大切だと思います。外の世界と関わって何かをしようと考えることで生活にハリが出てきますよね。年配の方だと、往診のとき絶対口紅塗る方とかもいますけど、そういうおしゃれ心は持ち続けたいと思います。

柏木柏木

ボランティアなどで介護施設に行って、ネイルを施すサービスがあると聞いたことがあります。自宅や施設にいる高齢者のもとへ行ってカットする美容師さんとかも……。ああいう美容のためのサービスは、いくつになってもうれしいでしょうね。

くらたまくらたま

うれしいと思います。柏木さん自身ネイルがお好きなんですよね。やっぱりネイルをすると気分が変わりますか?

柏木柏木

全然違いますね。

くらたまくらたま

「今日は何色にしようかな」とか考えるんですか?

柏木柏木

ネイルの色はお気に入りがいくつかあるんです。そのなかから選んでいます。

くらたまくらたま

ネイルも楽しみのひとつになってるんですね。ご著書に「おしゃれは月謝を払うようなつもりでしている」とあったのを見て「おしゃれ自体も学びなんだ!」と驚きました。

柏木柏木

私、お酒は飲まないし、食べ物の贅沢もあまりしないんです。でも、おしゃれに関しては、気に入ったらけっこう買っちゃうので。

くらたまくらたま

おしゃれが柏木さんにとっての元気のみなもとなんですね。

夢中になれるものがあると人生は変わる

くらたまくらたま

柏木さんは、おしゃれのほかにも麻雀やアクセサリー作り、編み物、ギターの弾き語りなど、さまざまな趣味をお持ちですよね。どれも年齢を重ねてからもできる趣味だと思います。

柏木柏木

ええ。麻雀は頭を使うし、編み物やギターは手を使います。年齢を重ねてからの趣味としてはいいかもしれませんね。

くらたまくらたま

昔からの趣味なんですか?

柏木柏木

編み物は子どもの頃から大好きでした。

くらたまくらたま

お洋服と同じぐらい、長く続けられている趣味ですね。柏木さんは、趣味の世界に没頭してコツコツ何かを作るのがお好きな印象です。

柏木柏木

そうですね。編み物を編み出すと夢中になっちゃうんです。

くらたまくらたま

素晴らしいなぁ。私50代前半ですけど、子育てが一段落して、老後みたいな生活始めちゃった友だちとかもいるんです。やりたいことがなかったら「何かしなきゃ」って思いながら、何もできないで焦る日々が続きます。

でも、趣味がある同年代は「これからが自分の人生」って思っている人が多い。好きなことのあるなしで、こんなにも生き方が変わるのかって思いますね。
倉田真由美さん(撮影:熊坂勉)
 

柏木柏木

ほんとですね。好きなことが生活にハリを与えてくれていると感じます。

姉たちとの時間は話が尽きない

くらたまくらたま

インスタグラムでお姉さまたちとのお写真を拝見しました。2人のお姉さまとも、仲が良さそうですね。

柏木柏木

仲良いですよ……。以前は、1カ月に1回、母の月命日に会うようにしてたんです。でも、コロナが流行ったり、姉が運転免許を返納したりして、しばらく会っていませんでした。こないだ久しぶりに会ったら話が尽きなかったですね。

柏木由紀子さん(撮影:熊坂勉)

くらたまくらたま

一番上のお姉さんはおいくつなんですか?

柏木柏木

80歳です。2歳ずつ年が離れています。

くらたまくらたま

みなさんお元気にされているんですか?

柏木柏木

ありがたいことに大きな病気はしていないですね。もちろん、若い頃に比べてできなくなったことはありますが。

くらたまくらたま

素晴らしいな! みなさん、どうやって健康を維持されてるんですか?

柏木柏木

どうなんでしょうね。真ん中の姉は、長いこと体操教室に通っています。反対に、私はジムやウォーキングには行かないですね……。

強いて言えば、家の掃除が運動になっているのかもしれません。それから犬の散歩。家の周りの散歩だけじゃ犬もつまらないと思うので、いつもとは違う場所へ出掛けて散歩することもあります。犬を飼うまでは、一人でデパートをぐるぐる見て回るのが好きでした。それが運動になっていたと思います。

設計から関わった“こだわりの家”

くらたまくらたま

それにしても、素敵なお家に住んでいらっしゃいますよね。家のなかでじっとしているだけでも癒されそうです。柏木さんは、ずっとここに住んでいらっしゃるんですか?

柏木柏木

結婚してからずっとここです。今まで2回建て替えていますが、今の家は主人が亡くなってから10年後ぐらいに建て替えたんです。私、もともとは、そんなにキレイ好きじゃありませんでした。でも私が設計から関わって、1年かけて建て替えたので、思い入れが強くて……。家のなかをキレイにするのが習慣になりましたね。

 

くらたまくらたま

柏木さんが設計から関わられたんですか。

柏木柏木

そうなんです。想像以上に大変だったけど、「こんな家にしたい」という思いを形にできたことにやりがいを感じました。前の家のイメージをそのまま残したり、明るい日差しが入る空間にしたりして……。暗めの落ち着いた色合いもいいけど、とにかく明るくなきゃ嫌なんです。

くらたまくらたま

だからなんですね。すごく明るい家だなぁと感じました。

柏木柏木

お友だちが集まれるような家にしたかったんです。お客さんの顔を見ながらお茶を入れたり、お食事を出したりしたかったので、キッチンはアイランド型にしました。リビングには麻雀の台も置いて友人たちと遊んでいます。

 

家を建て替えてからは、自然と人を招く機会が増えてきました。そんな中、新たに見つけた趣味が麻雀。学生時代の同級生に麻雀好きの方がいたのをきっかけに、わか家で麻雀大会を開くようになりました。意外に負けず嫌いな性格の私にとっては、夢中になれる趣味のひとつなんです。

(『柏木由紀子ライフクローゼット』P17より引用)
 
くらたまくらたま

そこまで考えて造った家なんですね……。中庭もありますよね。

柏木柏木

前の家は芝生だったんです。あっという間に草がボウボウになるけど、こまめなお手入れができなくて……。それが本当に嫌だったので、土じゃなくてテラスにしました。

くらたまくらたま

ご主人のお写真もすごく素敵です。思い出のお品なんかも飾ってあるので、どこか、ご主人の存在を身近に感じられますね。

撮影:熊坂勉

柏木柏木

ええ。主人の仏壇も、リビングに入ったら真っ正面に見えるように置いてもらいました。
 

くらたまくらたま

すごく珍しい造りだなぁと思いました。

柏木柏木

そうですね。本来はリビングに仏壇は合わないです。だから設計の方が仏壇を隠すドアを造ってくれました。でも、今まで一度もドアを閉めたことはありません。

くらたまくらたま

今もご主人に手を合わせに来られる方がいるということですね。

柏木柏木

そうですね。主人が飛行機事故で亡くなってから38年経ちましたけど、やっぱり大きな存在だったんだと感じます。みなさんに愛されていたのもわかるし、私たちのこともどこかで見守ってくれていたんだなぁって……。だからここまで来ることができたんです。

 

私も、かつてはそうでした。主人が親友であり、兄でもあり……という存在だったので、ふたりでいることに満たされていて、交友関係も狭かったんです。でも、主人が亡くなってから38年が経って、その間に新しい趣味や習い事も始めるようになって自然とお友だちも増えました。また、昔からのお友だちとのご縁もずっと大切にして、ときには幹事を務めたりして、みんなで集まって。そんなふうに少しずつですが充実した時間を過ごせるようになったんです。


(『柏木由紀子ライフクローゼット』P30より引用)
 

母の最期は私の家で

くらたまくらたま

こんなお家なら、ご家族との時間もいっそう楽しく過ごせそうですね。

柏木柏木

ここは母と住むために建てた家でもあるんです。同居を始めて半年ぐらいで亡くなってしまいましたけどね。

くらたまくらたま

じゃあ、長く臥せっておられたわけではないんですね。

柏木柏木

もともと身体が弱くて入退院を繰り返していたんです。退院して戻ってきたときは、家族が交代で母をみていました。介護士さんにも来てもらいました。私が2階にいたので、夜中は、ほとんど私がみていましたけどね。

くらたまくらたま

お母さまを最期までみようと思って同居されたんですか?

柏木柏木

母はマンションで一人暮らしをしていたのですが、その頃から一緒に住んだほうがいいと話していました。そして、いよいよ身体が弱ってきたときに同居を始めたんです。

くらたまくらたま

お母さま、短くても最期の時間を一緒に過ごせて、幸せだったかもしれませんね。

柏木柏木

それが私たちの望みでした。ここで見送ることができて本当に良かったと思います。

 

奇跡の80代へ

くらたまくらたま

柏木さんには「奇跡の70代」から「奇跡の80代」へ向かっていただきたいなぁ。だって、柏木さんの生き方からどれだけ勇気がもらえるかって話ですよ。

倉田真由美さん(撮影:熊坂勉)

柏木柏木

ありがとうございます。これからは、1日1日、好きなことを楽しみながら、元気に生きられたら、と思っています。いろいろな年代がありましたけど、今、私のふたりの娘たちは結婚して子どもがいます。幸せな家庭をつくっているので、私はもう「やることは、やった」という思いなんです。

くらたまくらたま

そうやって、普段から楽しく生きてらっしゃるからお若いのかな?

柏木柏木

なるべくストレスは溜めないようにしています。やっぱり身体に良くないですよ。

くらたまくらたま

私もそう思います! 柏木さんがこんなにお若いのは、きっと変なストレスを溜めていらっしゃらないからだろうなと思っていました。

柏木柏木

今までいろいろなことはありましたけどね。本当はネガティブでくよくよ悩んじゃうタイプです。

くらたまくらたま

えー! そうですか? 全然そんな感じがしない。

柏木柏木

ありがとうございます。落ち込むことが、だいぶなくなりましたね。

くらたまくらたま

それは、なぜなんですか?

柏木柏木

なぜでしょうね。年齢と共にということもありますし、落ち込むこと自体起こりにくくなったからなのかもしれません。

柏木由紀子さん(撮影:熊坂勉)

くらたまくらたま

そうですね。落ち込むことがあっても、意外と未来は分からないものなのかもしれませんね。今日お話をお聞きして、おしゃれやたくさんのご趣味が柏木さんの元気のみなもとなんだなって感じました。私も、柏木さんみたいに、毎日を健やかに、楽しく生きていきたいです。ありがとうございました。

倉田真由美イラスト

柏木由紀子

女優。1947年12月24日、東京都生まれ。小学生の時に劇団若草に入団。雑誌『女学生の友』などのモデルをつとめる。1964年、映画デビュー。その後『細うで繁盛記』『華麗なる一族』ほか数々のドラマで人気を博す。1971年に坂本九さんと結婚。2004年に二人の娘たちとのユニット「ママエセフィーユ」を結成。著書に『柏木由紀子 ファッションクローゼット』(扶桑社刊)などがある。

「くらたまのいま会いたい手帳」とは、漫画家でエッセイストの倉田真由美さんが、書籍、映画などのヒット作品を手掛けた著者・原作者・映画監督に対して、制作秘話や裏話に迫るコンテンツです。