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テリー伊藤「生きてさえいればそれで良いんだ」

今回のゲストはテレビディレクター、テレビプロデューサー、タレントのテリー伊藤さん。マルチに活躍しているテリーさんは2020年に自らの老後観を綴った『老後論 この期に及んでまだ幸せになりたいか?』を上梓しています。いったい、テリーさんが考える理想の老後とはーー。漫画家くらたまが老後だけに限らない人生を楽しむ秘訣を聞きました。

著者:テリー伊藤 竹書房(2020/07/17)

「団塊の世代よ、“アイツやっとクタバッタか……”という生き方をしてほしい」
自身も団塊の世代であるテリーさんが、団塊の世代およびその下の世代に向けて送る、愛とユーモアのこもった老後人生論。年をとっても幸せでいたいと考えるのは保身の始まり。老いの現実を受け入れて、最後の直線を自分らしく走るヒントが詰まった渾身の一冊。

テレビ業界の不都合な真実

くらたまくらたま

こうしてテリーさんとゆっくりお話をさせていただくのははじめなので、今日はすごく楽しみです。

テリーテリー

テレビの現場ではよく会ってるんだけどね。

くらたまくらたま

ええ(笑)。それにしても、いつお会いしてもお元気!テリーさんはどうしてそんなにエネルギッシュなんですか?

テリーテリー

体を動かすようにしてるし、なにより、こうして仕事してるからね。とりあえず、朝、ちゃんと服を着替える生活をしてる限りは元気でいられる気がする。やることがないとさ、着替えもしないでずっと同じ格好で1日過ごしちゃうでしょ?きっとあれが良くないんだよ。

くらたまくらたま

メリハリのない生活は楽そうに見えて体にも心にも良くないんですね。ところで、テリーさんはお幾つになられたんですか?

テリーテリー

71歳。今年の暮れで72歳。

くらたまくらたま

え〜っ、やっぱりお若い!相変わらずトークのキレも抜群ですし。

テリーテリー

そうでもないよ。コロナ禍になってからはテレビに出ても重苦しくてさ。大変なのはわかるけど、みんなでしかめっ面してたってしょうがないじゃない。

専門家が感染防止の取り組みについて論じ合うのはもちろん良いことだよ。どんどんやれば良い。でも、政府や政治家がだらしないだの、自粛しない若者はもってのほかだの、そんな後ろ向きの批判を並べていったい何になるの? 

視聴者を暗い気持ちにしたり、萎縮させたりしたら本末転倒だよ。だから俺はそういう話は一切したくない。当面、そういう場にいたくないんだ。

くらたまくらたま

わかります。私もテレビの向こうから不毛としか思えない議論が聞こえてくるとうんざりします。不安はほかにもたくさんありますからね。

一度お聞きしたかったんですけど、テリーさんのような方にも仕事を失う不安のようなものはあるんですか?

テリーテリー

ありますよ。俺たちの仕事に定年はないけど、そもそもメディアから声がかからなければお手上げなわけですから。

特にテレビは70歳も過ぎると、よほどの大物でもない限り出番はなくなる。寂しいけど、テレビの世界で必要とされるのはつねに若い才能なんです。

くらたまくらたま

う〜ん、身につまされる…。

テリーテリー

もちろん「70歳を過ぎなきゃ立てられない企画だってあるんだぞ!」っていう気概は持ってますよ。ここのところ日本のテレビはいくら何でも若い視聴者に媚び過ぎですから。

だって、主役から悪役まで全員イケメンしか出てこないドラマなんてどう考えたっておかしい。あり得ないもの。

若い人たちだって、そう遠くないうちに「これは変だ」って気づくと思いますよ。そこからですよ。テレビが本当の意味での成熟へ向かうのはね。

相対的に捉えれば不幸は不幸じゃなくなる

くらたまくらたま

テリーさんのようにポジティブでタフな方でも落ち込むことってあるんですか?

テリーテリー

俺、“不幸探し”が得意なんですよ。

くらたまくらたま

え?どういうことですか?

テリーテリー

例えばクルマをぶつけちゃったとするじゃない。普通、そういうことが起きたら「今日は最悪の1日だ」と思うよね。

くらたまくらたま

はい。

テリーテリー

でも、そんな自分より不幸なヤツは必ずどこかにいる。同じ交通事故でも人を轢いてしまったらもっと不幸でしょ?そんなふうに考えればどんな不幸も全然大したことない。相対的に捉えれば大抵の不幸は不幸じゃなくなるんだよ。

くらたまくらたま

なるほど。その瞬間は自分のことしか見えていないだけで、世の中全体を俯瞰すればもっと不幸な目に遭っている人は数えきれないほどいる…。確かにそうです!

テリーテリー

だから、芸能人のスキャンダルなんかも、あれはあれで誰かの救いになってるんだよ。俺なんか「自分もずいぶんひどいことしてきたけど、あいつよりはマシだよな」って安心するもん(笑)。

もちろん、法に触れるようなことをしでかしたら洒落じゃ済まされないよ。でもさ、男女関係のことは別に良いじゃない。

とにかく、そんなくだらないことばっか考えてるからかな、俺、多少のことじゃ落ち込まないんだよ。

落ち込むことは人生において当たり前のことだ。そんなことが起こらない人生はありえない。だから落ち込んで当然だし、傷ついたほうが人間を深く知って、人間力も増す。そんな前提でいつもいたほうがいい。

(『老後論』P147より引用)
くらたまくらたま

そっか、テリーさんは何があってもそれを笑いにしてしまえるからストレスフリーなんですね。

“ままならないこと”を楽しむ

くらたまくらたま

先ほど体を動かしてるとおっしゃってましたが、何かスポーツをされてるんですか?

テリーテリー

朝、2時間くらい走るようにしてる。毎日じゃないけど、可能なら週4回くらい。基本的に体を動かすのが好きなんですよ。1人で好き勝手に走ってる分にはお金もかからないしね(笑)。

くらたまくらたま

お金がかからない。それ、大事です(笑)。

テリーテリー

あとは極真空手の道場にも通ってる。もう4年になるかな。体を鍛えるのが目的なんで痛いことはやらないけどね。

ある時ふと、「自分は毎日24時間好きなことをしてるわけだから、そのうちの1〜2時間くらいは“ままならない”ことをしてみよう」と思ったんですよ。

怠惰な生活ばかりしてると体が緩んで細身のパンツも穿けなくなるしね。

くらたまくらたま

う〜ん、どうしてテリーさんは体型変わらないんだろうって不思議に思ってたんですけど、ちゃんと理由があったんですね。

ところで、“ままならない”ってどういうことですか?

テリーテリー

実は俺、仕事の合間を縫って慶應義塾大学の大学院に通って心理学を勉強してるんですよ。

ほら、勉強って大変で、なかなか自分の思うような成果は出ないでしょ?ままならない。でも、そこが良い。恋愛がままならないから燃えるのと同じでね、ままならないって面白いんですよ。

くらたまくらたま

ほんと、テリーさんの発想と行動の速さには脱帽です!でも、何がきっかけで大学院に行こうと?

テリーテリー

慶應の大学院って、何かオシャレでカッコいいじゃないですか。女の子にもモテそうだし。

くらたまくらたま

なるほど、十分すぎる動機です(笑)。

学び直しには夢がある

くらたまくらたま

心理学を学ぼうと思ったのはどうしてですか?

テリーテリー

仕事柄、興味があったんですよ。コメンテーターとしていろんな話題について語りながら、「不倫をして世の中からバッシングを受けてる人ってどういう気持ちなんだろう?」とか「10代で頂点を極めながら、その後の人生で転落を味わった人の気持ちは?」とか、渦中に置かれている人たちの気持ちがいつも気になってた。

もっと言えば、これは俺の勘なんだけど、ジムやスポーツクラブで“肉体を鍛える”というトレンドの次に来るのは、しかるべき学校に通って“頭を鍛える”ことじゃないかとピンと来たんですよ。

くらたまくらたま

自らトレンドの先取りをされたわけですね。

テリーテリー

そういうこと!そもそも俺が日本大学の学生だった頃は70年安保闘争で大学がロックアウトされてたから、まともな学園生活を経験できなかったんですよ。

その無念みたいものをずっと心のどこかで引きずってた。そういう思いもあったんでね、「よし、もう一度、学園生活を送るなら慶應で決まりだ!」となったわけ。

くらたまくらたま

あの、早稲田じゃダメだったんですか?(笑)

テリーテリー

ダメだよ。早稲田じゃ高田馬場の定食屋のイメージしか思い浮かばないもん。どうせなら加山雄三さんの映画『若大将シリーズ』に出てくるみたいな学園生活を送ってみたいじゃない(笑)。

あの若大将に出てくる“京南大学”のモデルが慶應大学なんですよ。で、俺が通ってるSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)がアメリカのUCLAみたいでカッコいいんだ!帰国子女もいっぱいでとにかく華やかなの。

くらたまくらたま

動機はともかく…(笑)。この先、学び直しを希望する社会人の数は間違いなく増えていくでしょうね。

テリーテリー

うん、少子高齢化で年々学生の数は減る一方だし、大学側もますます社会人に対して門戸を開いていくんじゃないかな。

実際に勉強し直してみて思ったんですよ。大学院は何を研究しても自由だよね。ということは、例えば定年退職した社会人がね、今まで何十年も趣味やライフワークにしてきたことを研究テーマに選んだって良いわけ。

つまり、自分の好きな何かについて思う存分追究して論文を書いて、そしてそれが一つの学問として認められればね、もうその人はある分野における専門家として通用する。好きなことをやってエキスパートになれるんですよ。これ、すごく夢がある話でしょう!

くらたまくらたま

そうか、すべて1からの再構築になるとは限らない。むしろ、いろんな経験を積んだ大人のほうがアドバンテージを持ってるのかもしれないんですね。

だとすればほんとに60歳、70歳からでも遅くない!最高!夢がある! 

テリーテリー

昔と比べたら今の高齢者は全然若いんだから、その気になればまだまだ面白いことがやれる。老け込んでる場合じゃないんですよ。 

自分を買い被らず本音で生きよう

くらたまくらたま

今日、お話を伺って、つくづくテリーさんは人生を楽しむ達人だと感服しました。私もぜひ見習いたいんですが、どうすれば今より前向きに生きられますか?

テリーテリー

俺、渡辺和子さんの『置かれた場所で咲きなさい』っていう本のタイトルがすごく好きで座右の銘にしてるんですよ。

生きるのがつらくなるときってさ、こうすれば良いって頭でわかっていてもできないときだと思うんだよ。

でも、そうなってしまうのは自分を買いかぶってカッコつけ過ぎてるからでね。良いじゃない、できなくても。俺たちは聖人君子になんかなれないんだから。

生きてさえいればそれで良いんだってくらいの気持ちでいれば良いんですよ。でね、そういう生き方の見本みたいな人が1人いるんです。

どんな居場所であっても、求められているものがあるなら、それはどんなものでも幸せなことなのだ。

(『老後論』P60より引用)
くらたまくらたま

え?どなたですか?

テリーテリー

蛭子(能収)さん。

くらたまくらたま

はい!うん、まさに!

テリーテリー

あの人みたいに俺はなりたいね。だって最近の蛭子さんの本のタイトル『死にたくない』だよ!(笑)この言葉以上に切実な人間の本音はほかにないもの。

くらたまくらたま

蛭子さんともこの対談でお話しさせていただきましたが、すべてにおいて超越されてました(笑)。

テリーテリー

蛭子さんは認知症になったことも自分から公表したでしょ?有名人でそれをやった人も初めてだよね。結局、何が自分の身の上に起きても蛭子さんは蛭子さんのまま。どこまでも本音の人。ほんとすごいよ。

老後を楽しくするためにも人とかかわっていきたい

くらたまくらたま

昨年、『老後論』という本を出されましたが、ご自身の老後についてはどうお考えですか?

テリーテリー

うちは子供がいないんで、夫婦の老後についてはいろいろ考えてますよ。老人ホームもいくつか見学させてもらいました。

で、そのうちのひとつ、知り合いが入居している老人ホームの雰囲気が、昔ながらの長屋みたいで活気もあって、すごく良かったんですよ。

俺はいろんな生活音が混じり合った環境が好きだから、そういうところでわいわいがやがや過ごすのも悪くないと思いましたね。

くらたまくらたま

共同生活に抵抗はありません?

テリーテリー

ないっていったら嘘になるけど、それに慣れるのも厄介だけど面白いんじゃないかな。

犬を飼うと朝なんか無理矢理起こされるでしょ。散歩に連れてけって。こっちはもっと寝ていたいのに。面倒くさいよね。

でも、他者に振り回されるその感じが良いし、つねに予想もしなかった出来事があるからこそ楽しいんだよ。

くらたまくらたま

確かに、何者にも一切干渉されない、振り回されない生活というのも、それはそれで味気ないかもしれないですね。

テリーテリー

そうなんだよ。でないとすべてが自己完結しちゃう。不測の事態は起こらないから安心かもしれないけど、そのかわり驚きもない。そんなの退屈でつまらないじゃない。

逆に言えば、退屈がいやなら自分の方から人と交われば良いわけだよ。だから俺、この先もずっと、誰のためでもない、自分の楽しみのために、いろんな人と関わりを持っていこうと思ってるんだよね。

テリ―伊藤

1949年、東京・築地生まれ。早稲田実業高等部を経て日本大学経済学部を卒業。現在、慶應義塾大学大学院の政策・メディア研究科に在籍。「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」「ねるとん紅鯨団」「浅草橋ヤング洋品店」などのテレビ番組の企画・総合演出を担当し、注目を集める。現在は演出業のほか、プロデューサー、タレントとしてマルチに活躍している。YouTube公式チャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』も配信中。『君は長嶋茂雄と死ねるか!』(メディアワークス)『お笑い北朝鮮』(コスモの本)『なぜ日本人は落合博満が嫌いか?』(KADOKAWA)『オレとテレビと片腕少女』(KADOKAWA)など著作多数。

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「くらたまのいま会いたい手帳」とは、漫画家でエッセイストの倉田真由美さんが、書籍、映画などのヒット作品を手掛けた著者・原作者・映画監督に対して、制作秘話や裏話に迫るコンテンツです。