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大竹まこと「”自己責任”で片づけない寛容な社会を目指さないと」

今回のゲストはお笑いタレント、俳優、ラジオパーソナリティと幅広く活躍している大竹まことさん。2019年に古希を迎えた大竹さんは『俺たちはどう生きるか』を発表しました。仕事や老い、人間関係、社会について赤裸々に綴った本書。「もういい大人なのに、まだ試練がやってくる。ああ、せつない」とぼやく大竹さん。コロナ禍の混乱や超高齢社会を向かえる日本社会で生きることはどういうことなのか。漫画家くらたまとたっぷり語り合いました。

著者:大竹まこと 集英社新書(2019/7/17)

古希・70歳。「需要がなくなれば芸人なんて終わり」とわかってはいても、「あのジジイ、やるな」と世間からまだ言われたい。歳をとればもっと楽な人生になると思っていたのに…。「頑固になるな。頑固はそこで考えをやめてしまった私のような人だ」と自問自答の日々を赤裸々に綴ったエッセイ集。自分の仕事、老い、人間関係、社会について、真摯に、かつ優しさを持って振り返る日々の記録。

最後に残るのは「名誉欲」

くらたまくらたま

お久しぶりです。『大竹まこと ゴールデンラジオ!』(文化放送)でレギュラーパートナーとして出演させていただいて、今年の3月で「卒業」して以来ですよね。その節はありがとうございました。

大竹大竹

番組では5年半、お疲れ様でした。一緒にメシでも…と言ってたのに、新型コロナのことがあったから全然行けてないよね。

くらたまくらたま

そうなんですよね。新型コロナは私の「卒業」とかぶってしまって、私から大竹さんに新型コロナをうつすリスクはなくなったけど、心配してたんです。

お仕事とか影響ありました?

大竹大竹

基本的にラジオとテレビの影響はないね。スタジオにアクリル板は置いてるし、ゲストのリモート出演なんかはあるけど、若手の芸人とかみんなスタジオに来やがる(笑)。

くらたまくらたま

来るんですね(笑)。感染予防として私達ができるのは、手洗いとマスク着用、それから密を避けることくらいですよね。

大竹大竹

自分が感染源になるのはイヤだなあ。

くらたまくらたま

私も自分がかかるより、誰かにうつしてしまうことのほうが怖いですね。

大竹大竹

俺はインフルエンザも毎年かかるから、今年は予防接種を受けようかと思ってる。インフルエンザだって、他人にうつすと迷惑がかかるからね。

くらたまくらたま

芸能人の方はどうしても人と接する機会が多いですもんね。新型コロナで変化する世の中、いいこともあるといいんですけど…。

大竹大竹

客が減って、銀座の夜の店はやばいらしいね。新型コロナが収まっても、もう復活しないだろう。

くらたまくらたま

難しいでしょうね…。

大竹大竹

金持ちの年寄りは新型コロナで銀座に行かなくなって、ふと冷静になったんだろうね。「今まで高い金を払って女の子にチヤホヤされてきたけど、これってバカバカしいな」って。

くらたまくらたま

じゃあ、その代わりに何にお金を遣うんだろ?

大竹大竹

もうほとんど欲はないから。植木とかかな?

くらたまくらたま

夜の銀座から変わりすぎ!

大竹大竹

だからこそ、年寄りに残るのが「名誉欲」なんだよ。

くらたまくらたま

なるほど、最後に残るのは名誉欲…。

大竹大竹

年を取ったらわかるけどさ、モテてもしょうがない。若い時はモテたいとかあるけど、もうそんなに食えないし、女もダメ。

くらたまくらたま

ダメなんだ…。

大竹大竹

老人のことが好きな20代の女の子なんかほとんどいないよ。いてもよっぽどファザコンとかさ。

くらたまくらたま

そんなに若い女の子じゃなくて、年下の50歳とかじゃダメなの?(笑)

大竹大竹

50歳の女性からしてもジジイはジジイだよ(笑)。とにかく、もう70歳を越えたら名誉欲しかない。自民党の総裁選だって、苦労するに決まってるのに、出たがるんだ。

くらたまくらたま

総理になって歴史に名前を残したいんですよ。

大竹大竹

やめとけばいいのにね。もっと枯れたジジイか、あるいはニュージーランドみたいに若い女性が就任するとかだったらいいのに。前例を踏襲してもよくなるわけがない。

くらたまくらたま

でも、アメリカだってトランプ74歳、バイデン77歳ですからね。有権者は年寄りがほとんどでしょう。年寄りは年寄りが好きなんですよ。

「自己責任」が飛び交う不寛容な社会を生きる

大竹大竹

日本もアメリカも年寄り中心だよね。「この国を守るため」と言いながら「この国の金持ちのジジイを守る」システムになってる。

あとは、何でもかんでも「自己責任」もダメだよ。「自己責任」というのは、総理大臣とか、特権のある人に対して使う言葉だよね。海外の紛争地だって、マスコミが記者を出さないから、若いフリーの記者が行くのに、何かあったら「自己責任」と言われる。若い人にとって失敗は成長の機会なんだから。

長く生きていればわかることだが、勝負でも恋愛でも、また、その人が生業として日々の糧を得る仕事であっても、勝つよりも負けて得るもののほうが大きいのだ。…(中略)…己が歩んできた道が成功か否かの判断はついていない。ただ、あの時、負けて良かったと思うことがある。

(『俺たちはどう生きるか』P43より引用)
くらたまくらたま

「自己責任」は、嫌な言葉になりましたよね。

大竹大竹

うん。失敗しか栄養にならないのに、「自己責任」を理由に何でもやめさせるのはよくないよ。失敗するから次の歯止めになったりするじゃない?俺だって、たくさん失敗してきて、よかったと思ってる。

失敗してもまた挑戦できるのが、寛容な社会だよね。

くらたまくらたま

新型コロナは社会のいろんな機会を奪ってしまっていますよね。大竹さんの生活は変わりました?

大竹大竹

うん。麻雀は集まれないし、外でメシも食えないでしょ。だから、ウチに帰るのも早くなった。

くらたまくらたま

それこそ、何を楽しみにしてるんですか?

大竹大竹

ないよ。祭りとかイベントとか何もないじゃない。こういう「ハレの日」がなくても生きてくださいという話でしょ?宴会も団体旅行もダメだから、何の楽しみもない。冷やしきつねうどんに天ぷらつけるかどうか迷うくらいでさ。

くらたまくらたま

しょんぼりした楽しみだなあ(笑)。

大竹大竹

冗談はともかく、これじゃ経済が回らないわけだよ。一握りの金持ちは高級料亭とか貸切で使ってるみたいだけど、そんな高止まりの経済じゃダメじゃん。

くらたまくらたま

ですよね。今は、私の知り合いの店がつぶれるレベルまで来てます。

大竹大竹

休業も多いしね。これで東京オリンピックがなかったら完全にアウトだろう。関連企業はみんなつぶれるね。どうしようもないもん。

これからも経済はどんどん厳しくなるけど、生活のために頑張って働いてる人もいるからね。「自己責任」で片づけない寛容な社会を目指さないと。 

社会が病んでいる理由は「心の狭さ」

くらたまくらたま

新型コロナ後の「生き方」って、本当にどうなって行くんでしょう?

大竹大竹

ラジオをやってるとさ、小さな村みたいなところでウソをつかずにリスナーさんたちといろいろ言っている感じがあるんだよね。10年以上も聴いてくれているリスナーさんたちと静かな横のつながりができてる。

くらたまくらたま

そういう関係は、テレビにはないですよね。

大竹大竹

うん。だから、新型コロナが収まったらみんなで餅つき大会とか、静かにいろんなことができたらいいなと思っている。

亡くなったタレントの小沢昭一さんは仕事について「芸でお金をいただく」とよく言ってて、俺もそういうふうに思っていたけど、今はマスコミの中にいる人間として「表立たない何か」をしたい。

もっと「心の問題」と向き合いたいんだよね。コロナでも、社会の「心の狭さ」みたいなところを感じることがあるじゃない?本当の敵はウイルスなのに、地域が分断されて対立しちゃうこともあるし。

くらたまくらたま

確かに、人間の汚いところが出てますね。

改めてお話していると、大竹さんてほんと人にやさしいですよね。今は新型コロナで特に社会全体がひりついていますけど、どうやったらやさしさが育つのかな?

大竹大竹

「道徳」とかを復活させたらダメだよね。

くらたまくらたま

ほんと道徳じゃダメですよね。家族とうまくいっていない人もいるのに、家族やお年寄りを大切にかムリですよね。

大竹さんがやさしくなったきっかけとかって、あるんですか?

大竹大竹

高校の時の先生かなあ。いい意味で突き放してくれて、人として素敵な人だった。小さい頃って、まわりは親と教師と友だちくらいしかいないんだから、誰に会うかは重要だよね。

日本人はキリスト教の教会に通うとかも少ないから、いい影響を与えてくれる親や先生、友だちがいないとダメなんじゃないのかな。やさしいだけじゃなくてもいいんだけど。

誰かが誰かの肩を支え、もし自らが弱った時、それを補う社会であってほしいと思うのは、私のような年寄りだけではないはずだ。若者たちは、自らの足元をみよ。君は大切なものを踏みつけていないか。そこに草があって、、今まさに花をつけようとしてはいないか。

(『俺たちはどう生きるか』P177より引用)

「来週くらいに死にたい」と思って生きている

くらたまくらたま

介護についてはどうですか?

大竹大竹

女房より俺のほうが先に死ぬんじゃないかな?俺が後になったら大変だし。

くらたまくらたま

長生きしたいと思ってないの?

大竹大竹

うん。来週くらいに死にたい。

くらたまくらたま

来週…(笑)。

大竹大竹

俺、だいたい何でも来週あたりなんだよね。もともと先がない人間だったから。

くらたまくらたま

そのあたりが、大竹さんが素敵な理由かな?今後はどうなるかわからないし、先のことばかり考えていてもしょうがないのかも。

大竹大竹

まあ、お陰でやりたいように生きてこられたからね。

くらたまくらたま

奥様とは、介護の相談とかされてます?

大竹大竹

「俺が先に死ぬ」という前提だから、話はしてないね。

くらたまくらたま

おうちの財産とかもご存じないんですよね?

大竹大竹

知らない。俺は国民年金で、65歳からもらってるから、少しはたまってるはずなんだけどね。女房に「今いくらあるの?」と聞いたら、「同じ口座から電気代が引き落とされているからわからない」って言われた。

くらたまくらたま

そんな(笑)。まあ、大竹さんだったらお金はなんとかなると思うけど、介護の問題はなかなかね。

大竹大竹

最近は老人ホームの事故とか老々介護や介護離職の問題とかそんなのばっかりだよね。そこで迷惑はかけられないから、社会保障を充実させて、老人にお金がかからない国にしたいよね。年寄りが一銭も持っていなくても暮らせる国を目指さないと。

新自由主義とかいって、生き残れるやつだけ生き残ればいいっていうんじゃダメだよ。今の日本は、年寄りが亡くなっても生まれてくる子どもが少ないから、年々人口が減ってるじゃない。総務省の人口動態調査によると、2020年1月は前年より50万人も減ってるんでしょ?

くらたまくらたま

そんなに?

大竹大竹

うん。だから社会保障を充実させないと、儲かってるヤツと家族だけが健康でいい学校に行ける国になっちゃう。そうやって社会の半分以上を置き去りにしていくのはおかしいよね。

くらたまくらたま

世界規模で見たら、アマゾンの創業者とか富裕層の8人の資産は貧困層36億人の総資産と同じだそうです。

これからはベーシック・インカムとかも議論されればいいですね。8月からドイツで実証実験が始まりましたよね。

大竹大竹

その前にまずは介護士や看護師の給料を上げないとね。

ダメでも大丈夫!若い人は悲観しないでほしい

くらたまくらたま

ほんと、新型コロナもあって介護士がどんどん辞めてますよね。

大竹大竹

大変なのに給料が安い。俺は脳卒中で倒れる役で2回テレビドラマに出てるんだけど、脳卒中が原因の失語症のリハビリをする言語聴覚士の仕事をはじめて知って、すごいと思った。

車椅子も乗ってみないとわからないし、まずは「自分が知ること」が大切なんだと思う。 腰の手術した時に、尿道カテーテルをつけられたんだけど、すごく痛いんだよ。それで看護師さんに言ったら、取ってくれたの。そうしたら今度はおしっこが出なくなっちゃって、めちゃくちゃ痛い。

仕方なく別の看護師さんに言ったら、「これは取らないでください。おしっこが溜まって死んじゃいますよ」って言われてさ。そのあと2時間くらいトイレで頑張ってなんとか出したけど、プロでも他人のことになると結局はアテにならないなって思ったね。やっぱり自分で知っておかないと。

学校も同じで、「特別支援学級」みたいに分けないで、みんな一緒にいれば「いろんな人がいるんだな」って子どもの頃からわかるし。まずは「知ること」だよ。

くらたまくらたま

そうですね。大人になってしまうと、自然に受け入れることが難しくなりますね。

大竹大竹

俺も車椅子に乗るまでわかんなかった。乗らなくても周囲に誰か乗ってる人がいればいいんだけどね。

くらたまくらたま

おうちに車椅子を使うおじいちゃんとかいればわかりますよね。そういえば、私が妊娠してた時も、駅とかで協力してくれたのはちょっと年上の女性だけでした。妊婦さんの経験がある人ですね。

大竹大竹

ただ、自分の体験は重要だけど、体験しなくちゃわかんないってのもどうかなとは思う。やさしさと社会の枠組みは別だよね。車椅子の人や妊婦さんに気遣うのはやさしさでなく、当たり前の社会の仕組み。「そんなの普通でしょ」と言わなくちゃ。
 

くらたまくらたま

教育も重要ですよね。私の知り合いに自分たち夫婦は超エリートなのに、子どもの口癖が「貧乏は嫌だ」という家族がいます。まだ幼稚園くらいの小さな子にそんなことを教えてるんだ、と驚きました。

大竹大竹

俺は若い頃、貧乏は楽しかったけどね。畳を売ったりしてた。

くらたまくらたま

大竹さんはモテるから、楽しかったんですよ(笑)。

大竹大竹

俺の友だちにも、貧乏なヤツやダメなヤツが多い。今は俺が若い頃とは時代も違うから通用しないところもあると思うけど、若い人は悲観しないでほしいんだよね。俺みたいな高卒のチンピラだってなんとかなるんだから。

もちろん「いつまで仕事あるかな?」とか不安もあるよ。でも、俺、そもそもそんなに長生きしないなとも思っている。

まあ、何かあったとしても「アイツじゃしょうがねぇな」って言われるような男になりたいね。

吠えろ若者ヨ、悩むこともあり、落ち込むこともあろう。
しかし、ダメな大人の言葉などに耳を貸さぬが良い。仕出かした不始末にクヨクヨするな。思いもよらぬところに活路がある。
近道を選ぶな。近道はただ単に近いだけだ。

(『俺たちはどう生きるか』P169より引用)

大竹まこと

1949年、東京都生まれ。タレント、俳優、ラジオパーソナリティ。東京大学教育学部附属中学校・高等学校卒業。1979年、友人だった斉木しげる、きたろうとともに『シティボーイズ』を結成。現在、ラジオ『大竹まこと ゴールデンラジオ』(文化放送)、テレビ『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系列)ほかに出演。著書に『結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ』 、『こんな料理で男はまいる。』(ともに角川書店)などがある。

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