ヘルパーさんの賃金アップは難しいのか
今まで何度か記事にしているが、ボクの家にはヘルパーさんのほか、さまざまな方が動けないボクのために家にやってきてくれる。
ボランティアさんのシステムはお願いしたことはないが、要介護5のボクは毎月自費ではみ出すぐらい介護保険サービスを利用しているのだ。その制度に頼り切っている。それがなければ本当に生きていけないかもしれない。
我が家に来てくれるヘルパーさんは、長年携わってくださっている方ばかりだけど、「この度新しく入りました」なんて同行してきた新人ヘルパーさんがあっという間に辞めちゃったり、やはりこの仕事は3Kと言われるぐらい大変なのだ。
今も来てくださっている方々には感謝しかない。本当にありがたい。

高齢者、要介護者が増える一方で、ヘルパーさんが足りないと言う話はよく聞く。都心で介護事業所を開いている知人は「こんなに大変な仕事が安い給料だったら続けられるわけない」とぼやく。しかも従事するには資格がいる。資格を取るのにもお金がいる訳でどう考えても人数が足りなくなる。
政府は、介護福祉士・社会福祉士を目指す学生に修学資金貸付制度を発表した。
介護福祉士修学資金等貸し付け制度とは介護福祉士・社会福祉士の資格を目指し、厚生労働大臣の指定する養成施設または、実務者研修養成施設に在学する人を対象に、修学資金を貸与(無利子)するというもの。卒業後に5年間介護の業務に従事した場合は返済が免除される。
貸し付け金額は、月額5万円。入学準備金と就職準備金にそれぞれ20万円以内、国家試験対策費に4万円以内(年)。
そのほかにも福祉系高校生修学資金貸付や、介護福祉士実務者研修受講資金貸付業(20万円以内、2年間従事すると免除)社会福祉士修学資金貸付(月額5万円以内、入学準備金20万円以内、就職準備金額20万円以内、5年間従事すると免除)という大規模な予算を発表したのだ。
追加で計上した予算はおよそ12億円。そのほかにも介護ロボットの開発を後押しするための予算も3億円以上計上した。
まあ、入り口は多少整備されたということか。キャリアアップ手当などもあるそうだが、やはり、給料を上げる方が先だったのではないかと思う。給料が上がれば資格を自力で取ってでもこの業界に入ってきてくれる人は増えるんだと思うんだけど。
この業界に入ってきてくれる人はもともと志が高い方なんだろうと思う。この度の15億円ほどの予算では驚くほどの賃金アップは難しかったのだろうか。介護福祉士、ヘルパーさんの最低賃金を上げたり、経験年数や、できることが多い方の給料を上げたりとか。
もちろん社会福祉士の国家資格を取ればアップするらしいが、やりがいにつながるようなシステムがあってもいいと思う。そうする事業所には助成金を出すみたいな。
保育士さんのようにずっとは難しいけど、と期間限定を謳って賃金改善加算補助のように賃金アップを図ってはどうだろうか?
サービスをお願いしている立場であるものの、これ以上自己負担が増えるのは辛い。預貯金がたくさんある余裕のある方ならともかく。
かといって、若い子育て世代に負担させるのもどうかと思う。そう考えると財源の確保も難しいのだろう。「どこを減らしてどこを増やすのだ?」と怒られそうでもある。
だがまず、在宅での介護を国が推奨している以上、世話をする方の賃金アップと介護保険で使える利用者の点数の削減は逆効果だと思う。
「嫌」が溢れてしまったヘルパーさん
去年、我が家に来ていた小規模な事業所のヘルパーさんがいた。30代の青年でハキハキした感じの良い青年。事業所に入ってきてすぐ一生懸命に働く方なのだとわかった。風呂にも入れてくれたし、階段も下ろしてくれたし、力持ちで好感が持てた。
そして、話ができないボクにもいろいろな話をしてくれた。高校時代の部活のエピソードとか面白い話もたくさんあったなあ。体が大きいボクの介助をするのはきっと大変だったと思うが、色々面倒を見てくれたのだ。
そんな彼の異変に気がついたのは、妻だった。
「ん?神足さん今日はお風呂に入りたくないのですか?」
「では体を拭くだけにしましょうか」
彼はそう言って、お風呂の日だったはずが入れずに帰って行ってしまったことがあった。妻にも聞こえるよう大きな声で話していたが、バタバタ家を出入りしている間に帰ってしまった。
ボクは風呂に入りたくないとは言った覚えもなかったが、喋れないボクに対して誤魔化そうと思えばできないことはない(家族にはすぐわかるけど)。
そんな変な時期が1週間ぐらい続いた後、彼は来なくなり、別の方が来るようになった。おかしいなあと思っていたら「ある日彼のアパートに行ったらもぬけの殻だった。何も言わずにいなくなってしまった」とのこと。
そんなに…何かあったの?思い詰めていたの?
「コップの水が溢れ出すように「嫌」が溢れたんだろうね」そう妻と話した。介護自体が嫌だった訳ではないようには見えていたが実際のことはわからない。
我が家に来るときはボクの体が大きくて重くて嫌だなあと思うかもしれないし、他の家で悪態をつく利用者がいるかもしれない。毎日毎日下痢の処理をしていたかもしれない。
知り合いの介護士は、研修に行った先の施設でものすごい勢いで罵倒され、ものを投げられ掴みかかられ「そんなにボクは敵?」と思ったって話も聞いた。いろいろな利用者がいるだろうし、クレーマーもいるだろう。
ほかにも上司との確執や、人間関係、プライベートまでさまざまな要因が考えられる。彼とは仲が良かったつもりだったが、変化には何も気づけなかった。その1週間前までは何の変わりもなくゆっくりとした時が流れていたから。
「チーム神足」に毎日助けられている
ボクは彼だけでなく、ヘルパーさんや看護師さんと過ごす時間が好きだ。いろんな人が来て話をしていく。今来てくれている方はもう顔見知りばかりだ。大嫌いな水分補給もいろんな話をしながら何となく飲めてしまう。
あちらだってボクの扱いに慣れている。長い方ではもう8年ぐらいになるが、こんなに長い間世話になる方も珍しいとのこと。人によっては「このタイミングでベッドの柵に捕まって横を向いたらいいな」など阿吽の呼吸で協力もする。
もちろん無口なヘルパーさんもいらっしゃるわけで、それはそれで別にいい。ボクの部屋に来てくれてゆっくりした時が流れているそんな時間が好きなのだ。時にはベッドのシーツまで全取り替えといった、ヘルパーさんからしたらひと汗もふた汗もかく仕事量なこともある。
「はい神足さんできましたよ」そんな一言がホッとする。一日ベッドの上で過ごし、ヘルパーさんや看護師さん、リハビリの方々が来てくれて話してくれる。
テレビのチャンネルを変えるのか?
エアコンの温度はこれでいいのか?
水が飲みたいのか?
お腹は空いていないのか?
トイレに行きたいのか?
さまざまなことを聞いてくれる。
そしてボクの部屋には違う事業所の人でもわかるように、一言メッセージのような日誌が置かれている。バイタルや、特質すべき点などが本当に簡単に書かれている。訪問看護の事業所が率先して初めてくれたシステムだけど、同じ日に違う事業所が入ってもわかるようになっている。これはありがたい。
いつも言っているが「チーム神足」がうまく機能しているのは、こんなことの積み重ねだ。
部屋の壁にコルクボードがある。そこには「神足さんの水分補給の時の姿勢」とか「寝る時の足の位置」とかが写真入りで貼ってあったり(これはリハビリの方か)、特別なスケジュールがあれば事業所や往診の先生が予定を貼って行く。
注射の予定や、それこそ仕事のスケジュールまで、何となくみんなが見てわかるようになっているのだ。
ケアマネとの連絡も細かいが、部屋に来るみんながこうして協力しあってくれてボクの介護は行われている。本当にありがたいことだ。