9月20日は年長者に
日頃の感謝を伝える日
今年の敬老の日は9月20日だという。大切なおじいちゃんとおばあちゃんに感謝を伝える日だ。家族や身近な年長者を敬い健康を祝う日として、日本だけではなくアメリカ、カナダ、韓国や中国などでも敬老の日があると聞く。
そうそう、韓国の年長者を敬う姿はすごいなあ、いいなあ、と思ったことがある。もう12年も前の話だけれど、まだまだバリアフリーなどが整っていない韓国だった。
車椅子姿はあまり見ないものの、街中で見ず知らずの若者が老人の手を取り階段を登らせている姿や、荷物を持つ姿を何回も見た。儒教の教えの影響なのか?と感心したものだった。
日本では、2002年までは9月15日が敬老の日と決まっていたが、ハッピーマンデー制度によって9月の第3月曜日となった。そうなると今日がなんで休みかもよくわからなくなってくる。
ボクが子どもの頃は、おじいちゃん、おばあちゃんに手紙を書きましょうなんて道徳や工作の時間にやったけれど、今では家庭の事情を配慮して、あまりこういうことを学校でやらないと聞いた。

つい最近まで、体は障がいを持ってしまったけれど、高齢者の仲間入りをするのは先の話かな?と思っていた。が、毎年確実に年齢を重ねていく。誰でも同じように歳は取る。そんなこともわかっていなかった。
先日、テレビで「子どもでなかった人はいないのだから、子どもだった頃を思い出して子どもの気持ちに寄り添って考え直してみても…」なんていっているコメンテーターがいた。
そう考えると、老人になったことがまだないのだから、推測はできるけれど、体のことや気持ちをすべて理解することは難しいんだなって思う。
お互いを思っているのに
空回りするんだよなあ…
88歳の母親と56歳の息子の、こんな話を聞いたことがある。
息子は、母親を旅行に連れて行ったら喜ぶだろうなあと思い、母親を連れて旅行に出た。けれど、ほんのちょっとでも歩くのは嫌だとか、お風呂に入るのが面倒だとか、予想外のことを言われてがっかりした。
母親だって、せっかく息子家族が連れて行ってくれるんだから感謝していないわけじゃない。一緒に過ごせて嬉しいと思っている。
けれど、どうしても体が思うようにいかない、そう言わざるを得ないのだそうである。
その旅行自体行かない方が良かったのか?ということになるが「そりゃ、行ったほうがよかったよ」とのことで「本当に無理だったら断ってるからね」だそうだ。揺れ動く高齢者の心情もなかなか難しい。
高齢者に近づいて、高齢者はいろいろな不安と闘っているのかもしれないなと思った。
「長い時間、車に乗ってトイレは大丈夫か?」「自分がもし認知症になったら?」「もうなりかけているんじゃないか?」「覚えていられるだろうか?」「いつまで歩くことができるのか?」「老後はどう生活していけば良いか」「自分だけでは生きていけない不安」。こんなことも聞いた。「寝たら目が覚めないんじゃないか」。明日のことや近い将来のことを思い不安が募る。
若年者が感じる将来の不安と違うことは、これから先、良くなることがないのではないかということだ。体の状態も経済面も。まあ、自分のこの先の人生を不安なく過ごせる財を成した富豪だって、体のことは不安かもしれないなあと思う。
不安は尽きないのだ。だから、わがままだったり、ぞんざいな態度をとったり、怒ってみたり。相手だって、険のある言い方になって後悔する。「いつも優しく接しようと思っているのに、わかっているのにおばあちゃんにきつい言い方しちゃった」と。
そんなふうに、良かれと思ってやってもうまくいかなかったり、思っているのにできなかったり、人と人っていうのはなかなか空回りしてしまう。
離れていても一緒にいる感覚
普及した見守りロボット
コロナ禍で、老人の独居が問題にもなった。一人暮らしで出かけない生活が増えて、人と喋る機会もかなり減った。出かけるとコロナにうつるから怖い。どんどん家にこもってしまう。
そこで、安否確認を含めて見守りロボットがかなり普及した。コロナが始まった頃のコラムで「高齢者にネット環境を!Zoomのワンタッチ版」みたいなことを書いたが、そういう時代になりつつある。
そんなことを原稿で書いている最中、ある人から今年の敬老の日に、見守りロボットをプレゼントするという話を聞いた。最近、導入した知人もいたそうだ。500kmも離れた地にいる今年90歳になるお父さんとつながったと。部屋の中がカメラで見えるし、ボタンを押せば携帯よりも簡単に話せるという。
ロボットの名前は「ユピ坊」という。「ん?別の友人もFacebookで書いていたやつだ」たくさん見守りロボットがある中でもどうやら人気のようだ。

- 機能1「テレビ電話」:ユピ坊に登録したスマートフォンやタブレットと、簡単な操作でテレビ電話ができる
- 機能2「見守り」:部屋の中の映像を見られる。高齢者だけでなく赤ちゃんの部屋やペットのお留守番にも
- 機能3「防犯」:センサーで部屋の中の動きのあるものを検知する
- 機能4「おしゃべり」:特定のワードで話しかければロボットと対話ができる
まあ、ざっとこんな感じだけど、体験したわけでないが聞いたところ、とても使いやすようである。
「ユピ坊」の首が回るので、部屋中が見渡せる。遠く離れた子どもが遠隔で操作できる。ロボットの顔をお父さんと同じ方向に動かしていたら「ずっと見てる」と不思議そうにしていたけれど、嬉しそうでもあったらしい。
ガス屋さんの契約の人が来たときも様子を映していたそうだ。ガス屋さんの人も「最新ですね」と言っていた。毎朝の電話が日課だったが「これだったらずっと一緒の感じがする。つながっている気がする」とお父さんも喜んでいると聞いた。
まだロボットくんにお任せ
できないこともあるけどね
携帯のアプリを見ればいつでもお父さんのいる部屋が映る。ご飯を食べている姿も、友達と電話している姿も映る。今のところお父さんからプライバシーの問題は指摘されていないとのこと。「家の中でかわいい子が見守っていてくれているみたい」と上機嫌だそうだ。
値段は約7万円。プレゼントとしては高いかもしれないが、安心料なんかを考えたら良いかもしれないなあと思った。
ボクだって安否確認のために、ヘルパーさんが数時間ごとに部屋に来てくれる手筈になっているが、この子がいれば平気かもしれない。まあ、水分補給を促してもらうとか、まだ人間にしかできないことがあるので、ロボットくんにお任せもできないのだけれど。
数年経ったら、飲む塩梅まで計測して自動的に時間で(いや、喉の渇きによって)飲ませてくれる時代が来るかもしれないな。
デジタルな時代だからこそ
温もりや愛情が必要なんだよなあ
ひとりぼっちにならないようにロボットを導入したのに、なんだかロボット任せな世の中になってしまうみたいでそれはそれで寂しい。
結局、デジタルな世界に必要なのは人間の温もりだったり、愛情だったということが、デジタルなものに触れていくとわかってくる。デジタルなものと高齢者は結構相性が良いのも本当の話だけれど、それは人間の愛情や経験をたくさん積んだ高齢者だからこそなのかもしれないなあと思ったりもする。
ボクも昨年孫が生まれておじいちゃんになった。まだまだ敬老される老人にはなれていないと思うが、もうすぐ高齢者の仲間入りの64歳。諸先輩方のご意見を賜りながら歳をとっていきたいと思う。
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