妻の誕生日に、なにかしてあげたい!
ボクは『ディズニーお泊まりバースデイ』を企画
妻の人生の節目の記念の誕生日だった。
半年も前から「何がいいかなぁ~」なんて考えていた。でも、買い物に行くのにも何かするのにもだいたい妻を通してやるので内緒にするどころではなく、バレてしまう。
くも膜下出血で倒れ、車椅子での生活を送るようになってからプレゼントらしいプレゼントもしていない。
プレゼントだけがすべてでないことはわかっているが、「ここはひとつ何かしたい」とベッドの中で考えた。
そこで、柄にもなくサプライズ企画で『ディズニーランドお泊まりバースデイ』というこそばゆい企画を立てた。
もちろん予約だって息子と娘にしてもらい自分は企画しただけだが、家族に加え妻が喜ぶであろう友人や近しい人たち数人に声をかけてお祝いをしてもらった。

車椅子のまま乗ることできるアトラクションもある
健常だった頃だって、家族に付き合って何回かディズニーリゾートには泊まりにも行ったことはある。妻や娘が大好きだったからだ。
けれどボクは…ご多分に漏れず、並ぶのも面倒だしできれば避けたいなぁ、と思っていた。
小学生だった娘の手紙にディズニーが返事をくれた
ボクはディズニーに一目置くようになった
ディズニーといえば、娘が小学生だった頃、将来なりたい職業のことを調べてレポートを提出するという夏休みの宿題があった。
娘の学校は当時から(15年前くらいかな)レポートを書かせ発表するということや、ディベートなども多く取りいれてる学校だった。
で、3年生になりレポート課題ももう3回目の夏となったその年、彼女はディズニーランドに手紙を送り、ディズニーのアンバサダーという職業について調べたいから会社に伺いたいと頼んだらしい。
会社からしたら迷惑な話だったかもしれないが、広報室からちゃんと返事が来た。「いつならアンバサダーの方が直接会えるけど浦安まではこれますか?」と子どもとしてではなく、ノーマルな取材として応対してくれた。
ディズニーアンバサダーという職業は、ディズニーリゾート内で働くすべての人(キャストや社員や、駐車場で働く人などなど)から選ばれる特別ディズニー大使のようなものらしい。日本のディズニーを世界中で紹介する人のことだ。
だからすごく忙しい。いろいろなところを飛び回っている。その人が、9歳の女の子が取材したいというつたない手紙での申し出に時間を作ってくれたのだ。
それを実行にうつした娘のことも嬉しかったが、それからというものボクはディズニーを一目も二目も置くようになった。
駐車場やトイレまでよく考えられている
すべての人が平等で一緒に楽しめる!
いろいろ調べたりもしたけれど、創業者ウォルト・ディズニーの「すべての人は平等だ」という精神はどこを切り取ってもさすがだなぁと思う。
子どもでも大人でも性別・人種・障がい…すべての人が平等で一緒に楽しめる。9歳の娘を一人前の取材者として扱ってくれたのも、そんな理念からだそうだ。
体を壊してからも数回訪れているディズニーリゾートは、「ユニバーサルデザイン」のお手本だよなぁと思うことがしばしばある。よく考えられている。
障がいを持っていようが、そうでない人であろうが区別がないというのは本来のディズニーの姿勢らしい。だから、障がい者割引は日本にもアメリカにもない。
まず、駐車場は、車椅子の人用に駐車場ゲートで申し出れば入り口近くの駐車場に案内してくれる。
車椅子用の駐車場は、普通の駐車スペースよりも広くとってくれてある。車椅子用の駐車スペースがいっぱいだと、一般の駐車場で入口に一番近いスペースを案内してくれて、横のスペースを1台分空けて駐車させてくれる。
これは、隣の車を気にすることなく車椅子でも乗り降りできるための配慮なのだ。よく考えられて設計されている。
障がい者用の駐車場はショッピングセンターなどでもよく見かけるが、そこに停めても結局、車椅子では降りられない設計の駐車場も少なくない。
これはトイレについてもそうだ。障がい者用トイレと言っても、手すりがあった方がいい人、右にあった方が、左にあった方がいい人、ないほうがいい人、オスメイトが必要な人、ベッドがないとおむつ交換ができない…などなど、その人の体の状況によって必要な設備はさまざまだ。

街の中で、ベッドつきのバリアフリートイレがあるところなんて数パーセント以下だと思う。赤ちゃん用のベッドがあっても、障がい者や高齢者にとってはおむつを変える場所だって困るわけだ。

制限があるアトラクションもある
ボクは良いけど、家族が楽しめないのはつらい
それがディズニーランドでは、もうずいぶん前から障がい者用のベッドだってある。いろいろな種類のトイレがわかるマップもある。
だからマップを手に入れるために、入場したら最初にインフォメーションに行くことを勧める。
ディズニーランドならば「メインストリートハウス」、ディズニーシーならば「ゲストリレーション」などリゾート内に7ヵ所もある。
ここでは、さまざまなバリアフリー情報を得たり、手続きをしたりできる。
身体障害者手帳や療養手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者手帳や戦場傷病者手帳をもっている方は「ディスアビリティアクセスサービス」を受けることができ、手続きをすることができる。

インフォメーションで車椅子ユーザーであることがチケットに入力され、
障がいに応じたサービスが受けられるようになる
手帳を確認して入場チケットにその情報を登録してくれる。手帳を持っている人は同伴がないと施設を利用することはできないので、その本人の連れであることもそれぞれの一緒の人のチケットに登録する。

身体状況で列に並ぶことが難しい人は、
待ち時間が書かれたカードがもらえから、並ばなくてもOK
「ディスアビリティアクセスサービス」は、長時間列に並ぶことが困難な人向けのサービスだ。身体の不自由な人は列に並ばなくても良い。
例えば200分待ちのアトラクションがあるとする。そのアトラクションの入り口で手続きすると、200分後に来ればその場所に合流させてくれる。
でも、付き添いのグループの人数だってアトラクションによって2人とか4人とか細かく決まっているし、これは自力歩行10歩できないと乗れないとか、車椅子のままで大丈夫とか、段差があるとか細かくインフォメーションブックに記されていて乗れないものもたくさんある。
まぁ、ボクはそんなにアトラクションになんて乗りたくないのだけど、一緒に行く家族が楽しめないのはつらい。行ったからには、とことん楽しんでもらいたい。
ボクはディズニーファンからは一番遠い人間だったけど
ディズニーのユニバーサルデザインはやっぱりすごい
そのほかの「お手伝いを必要とされる方のサービス」(ゲストアシストカードは終了)や車椅子を利用している人、高齢者や妊娠中の人、病気や負傷で身体機能が低下している人への合流利用サービスもある。
本当に細かくシミュレーションとマニュアル化がされていて、不公平がないようにできていると思う。「アトラクションが途中で故障した場合、線路の上を歩いて避難しなければなりません」「じゃ、無理だよな…」とか。
「車椅子のままお乗りいただけますが万が一の場合が同行者の方が段差を含む避難経路を車椅子で行かなければならないので、電動車椅子は重過ぎます。手動の車椅子にお乗換えお願いしてます(車椅子は用意されている)」とかアトラクションごとに説明される。
劇場型のアトラクションも専用の座席に案内されるが避難の方法などは個別に説明される。

目には見えないほどの緩やかな坂が、段差を作らないための工夫があったりして、街並みも車椅子だけでなくベビーカーにも優しく設計されている。
水飲み場は、子ども用と大人用の2つの高さが用意されてると思っていたら、低い方の蛇口は車椅子の人にも使いやすいように設計されていると聞いて「なるほど」と思ったり。

使ってみなければわからない「ユニバーサルデザイン」ってそういうことなんだよなって思う箇所があちこちにちりばめられている。
ボクはディズニーファンからは一番遠い人間だったけど、ディズニーリゾートでの車椅子ユーザーの使い心地やユニバーサルデザインはやっぱりすごいと思った。