我が家のエアコンが故障した…
今月は、ずっと旅をしているようである。
ちょっとした事情(エアコンが使えなくなった)があって、横浜・みなとみらいのホテルに週末滞在していた。
プツッと家中のエアコンが消えた。あれこれ試してみるが一向にエアコンはつかない。
「あら困ったわねえ」と言っているうちに、あれよあれよという間に義母が気持ち悪いと言い出してベッドに伏せてしまった。明らかに熱中症になりかけている。
妻の行動は早かった。「みんな車に乗って!」。最初はご飯でも食べに行ってその間にエアコンが動かない原因をどうにかするのかと思っていた。
「今日はホテルに泊まろう」
「うん、いいね」
車の中で検索する。かちゃかちゃかちゃ。
義母と妻の3人一部屋、できればバリアフリー。でも、その日はもう夕方になっていたので、なかなか条件に合うところは見つからない。
ユニバーサルルームが難しいんだったらせめて、お風呂とトイレは別になってるところじゃないとね。シャワーブースか、洗い場がないとボクが風呂には入れなくなるからだ。それとバスルームまで段差がないところ。
あと、あまりにベッドルームが狭いと車椅子から移れないことを踏まえると、結局広い部屋だってことになり料金が高くなる。けれど贅沢すぎる必要はない。
そんなとこが、当日に見つかるんだろうか?
妻はホテルを探しながら、呪文のように条件に合っているか確認する。口コミや写真を目を皿のようにして眺める。
・ユニバーサルルームでない通常の部屋の場合、洗面台の足の部分はくり抜いてあるか
・ドアの部分に段差はないか
・玄関の前はバリアフリーか
・車から降りる時、雨に濡れない構造か
・ベッドの横に車椅子が入れる余裕があるか
他の人が見ないような部分を写真から調査する。検索サイトの口コミの何気なく投稿してくださっている写真を見ては「ああ、その角度からとってくれてありがとう、ここならいけそう」なんていろいろ調べる。
結果、3人部屋が空いていて、そこは洗い場がある風呂があり、敷地内に我が家の車のサイズでも入れる駐車場もあった。
そしてホテルの検索サイトの割引もあって、ビジネスホテルを2部屋借りるよりは安い値段設定だったので、このホテルに決めた。
「みなとみらいにそんなホテルあった?」ボクはそのホテルを知らなかった。割と新しいホテルなんだろう。車のナビでは出てこなかったので、携帯のナビで誘導してもらいホテル着。
部屋まで行くにもひと苦労
わかってはいたんだけど、第一関門。駐車場から荷物と車椅子を一緒に運ぶこと。最近のホテルに多いタイプ。フロントが地上階ではなく、20階とか30階とか上にあり、ポーターサービスなどはない。
左手が正常でないのもあるけど、どうやら脳がどんどん片方に寄って行ってしまうように指令しているみたいだ。見えてないのかもしれない。力もない。
まあ、そんな訳で、膝に乗せられるだけの荷物を持つ協力はできるけど、車椅子を走らせることができない。最近の技としては、キャリーケースを健常な右手で持って介助者に車椅子を押してもらう方法。
ホテルの駐車場は機械式で、何回かに分けて荷物を運び出すことも現実的でない。荷物もいっぱいあったので、20階にあるフロントまで運ぶだけでも大汗である。
チェックインの時ボクもフロントへ一緒に行って、1泊しか予約していないけれど、もう1泊したい旨、さらにお風呂に介助用のバスチェアがあったらお願いしたい旨を伝え、部屋へ。フロントマンの方は感じの良い対応をしてくれた。
20階のロビーに着いた時点で眺めが抜群、それをゆっくり眺められるロビーやテラス。テラスでは、ゆっくり夜景も眺められる。その先には、なんとプールもある。流石にプールは入れないが心躍る場所だ。来て良かった。

部屋に入ってみると、思ったより何倍もいい感じ。部屋からの眺めも抜群だ。みなとみらいの港から街が一望できる。荷物を運ぶのに苦労したが、部屋に入って吹っ飛んだ。

風呂もチェックする。ふむふむ、一般的な仕様だけど大丈夫。洗面台は残念ながらくり抜きタイプではないが、部屋からの眺めはそれに勝る。そうそう、ホテルを選ぶ時の条件としてコインランドリーがあれば、なお可なのだけれど、同じ階にコインランドリーもあった。

荷物を置いてすぐに夕食だ。急がないと店も閉まってしまう。ホテルから歩いてすぐには、ランドマークタワーやみなとみらいの大きな商業施設がある。レストラン街をフラフラしていると、義母が「魚かなんか、さっぱりしたもんがいいわ、そんなに食べたくない」と言うので新鮮な魚が売りのファミリー向けの半分居酒屋のような店に。義母は刺身定食、ボクは、カキフライ。義母が車椅子を押してくれる。
歩くのが大変になってきた義母。車椅子に捕まって歩くのが楽だという。
部屋に帰ってくると残念なお知らせ。お願いしてあったバスルームの椅子が届いていたのだが、よく家で使うような小さな浴室用の椅子。これじゃあボクはシャワーにすら入れない。
言い方がまずかったのか、対応した若いスタッフも想像の域に介護用のバスチェアの概念がなかったのか。
電話でフロントに聞いてみたが、用意はないとのこと。残念だ。いろいろ工夫して普通の部屋でも宿泊できるようには心がけているが今日のような急な場合、ちょっと探すのは大変だ。
大きくチェーン展開しているホテルで〇〇なんかはバリアフリーの部屋がいいと有名で、あれば必ずそこに泊まると言っている車椅子の友人に紹介された。高級ではないけれど、そこのバリアフリールームが取れれば安心だという。
ボクも地方で何回も泊まってみたことがある。自分の右側にベッドがあったほうがいい人用のベッド。左から移乗するのがいい人用と考えられているって聞いて、「ほんとだ、すごいな」と思った。
今回泊まったホテルの滞在は快適だった
せっかく朝食付きにしていたのに、妻は通院やエアコンの件などで朝早くから出ないといけなかった。
ボクはベッドから起き上がることもなく、88歳になる義母だけが豪華バイキングの朝食になったわけだが、義母は喜んで帰ってきた。あれこれ気を遣ってくれるスタッフがいたそうで、ありがたい。
夜は、外に出るのも面倒だということで、ホテルのイタリアンに。アラカルトとコースで1種類。ボクは食べられないものが多いので、アラカルトで一品。それが、すごくいい仕事のされている食事だった。これも驚きの一点。
コースもコストパフォーマンスが抜群にいいと思う。「どこからいらしたシェフですか?」なんて柄にもないことを聞きたくなった。
先日伺った、有名レストランが経営するリゾートホテルのイタリアンより数倍おいしかった。このままこのシェフで、この値段で、続けて欲しいと願うほどだ。店内からの眺めももちろん申し分ない。
帰りにロビー階にある眺めの良いバーに寄った。とてもムーディーな雰囲気が漂う。
ソファーとローテーブルが並んでいたが、気の利いたウエイターが車椅子に合わせた高いテーブルを持ってきてくれた。
こういう人が一人いるだけで、「ああ、またこのホテルに来たいなあ」と思える。あのウエイターの心遣いで、いいホテルだなあと思った。
優雅なホテル生活は長くは続けられない
週末が明けてケアマネに電話すると「そこじゃいくらなんでもいけないから、家の近くのホテルに引っ越してください。」とのこと。洗濯機の次はエアコン問題。エアコン問題が解決するまでにはちょっと時間がかかりそうなので、こんな優雅なホテル住まいは長くはできない。
妻の入院の日時も間近になっている。「神足さんだって日中移乗できる人がいないホテルでずっと寝たきりでしょ?」呑気な我が家に一喝である。
移動先を見つけようとしたところ、近所のホテルはどこもいっぱい。近所と言ったって駅にしたら3駅も4駅の先。ビジネスホテルしかないので、ボクが今よりいい条件で入れる部屋もない。第一、3人泊まれる空き室がない。
そんな時我が家の敏腕ケアマネが苦肉の策を提案してくれた。
「お母様と神足さん、今日から来ていいと言ってくれているショートステイの施設を探しましたから、そこに移ってください。明子さんだけならなんとかなるでしょ?それか、ちょっと具合が気になるんで先生に話しましたから病院も」
義母の調子もなかなか戻らないので入院先も候補に。熱中症恐るべし。電話をして状況を話しただけで、色々な選択肢を探してくれた。もう歳なんだから、まずは病院だね。
週末の夢のような、ホテル滞在は終わりを告げそうだ。
義母とボクの珍道中はまだ続きそうだが。