みんなの介護アンケート
本人に抵抗なく運転をやめさせる方法
高齢者に運転をやめてもらうにはどうしたらいいでしょうか。「危ないから運転をやめてほしい」と言っては逆効果かもしれません。
まずは「早いうちに家族で話し合う」が出発点です。簡単にはゆかないのが普通ですので、ゆっくりじっくりが基本です。今回はそこを具体的に説明していきましょう。
また、家族の声に耳を傾けてもらえないときは親しい友人や信頼している主治医から話してもらうのもひとつの案です。
一方で、説得がうまくいかなかった場合、車のバッテリーを上げて乗れなくさせたケースや、車を修理に出したと隠してしまうケースなど、少し強引に諦めさせた例もあるそうです。認知症は進行する病気なので、まだ大丈夫だと運転し、事故を起こしてからでは遅いのです。
ページ内では運転ができる状態か否かを判断するチェックリストを紹介しています。順に見ていきましょう。
運転以外の楽しみを見つける
運転が好きな高齢者の場合は、運転以外の楽しみを見つけてもらうことです。
認知症の予防として、考えることや指先を動かすことなどがありますが、車の運転をしなくなり、家に籠るようになると認知症が進行しやすくなってしまいます。
何か積極的に自分で挑戦できる趣味を見つけてもらうことも大切です。
ネット通販を教えて、車に乗る機会を減らす
ネット通販や宅配サービスを利用すれば、車で外出する機会が少なくなります。自分で選ぶ楽しみはそのままにショッピングができるのです。ネット通販には食材の定期宅配サービスも増えているので、毎日の食事の用意にも便利です。
スマホやパソコンが使いにくいようなら、タブレットを購入し、大きな画面でネット通販を利用してもらいましょう。
経済的なコストを計算して、費用対効果を説明する
一番わかりやすい方法として、車の維持費を計算してみましょう。車をやめたときに必要な費用と車を持っているとかかる費用を比較してみるのです。
車を持つのをやめたとき、外出は、バスなどの公共機関とタクシーを使う計算です。続いて、車を持ち続けたときは、車の税金、車検、ガソリン代などの燃料代、保険、駐車場代などを紙に書きだして計算します。
ここに、もしもの事故を起こしたときの金額も付け加えて書いておくと、高齢者に危機感を与えやすいかもしれないですね。実際に計算してみると、車の維持費は結構かかります。
これをタクシーに換算すると、車の維持費より少なく済む場合もあります。ご家族が運転の協力ができるのなら、もっと費用が減りますね。車の維持に充てていたお金を違う楽しみに回すこともできると言って、高齢者の心を動かしてみましょう。
早いうちに家族で話し合う
最初はご家族で話し合いを行い、夜は車に乗らない、高速道路は運転しない、必要最低限近所だけの運転にするなどのルールを設け、できる限り家族が運転を代わってあげるようにしていきましょう。
いきなり「運転をやめましょう」と切り出しても、高齢者を立腹させ、逆に説得が困難になってしまう場合もあります。運転がまだ支障なくできているうちに話し合うようにしましょう。
「今後、体の状態がどういうふうになったら車を乗り換えるか?運転をやめるか?」「車がなくなったら、交通手段はなにを使うのか」「どんな生活を送るのか」など、家族でコミュニケーションをとって決めておくことが重要です。話し合いは早いうちにしておくことがポイントです。
すでに自主返納した人から説得
家族から運転しないように説得しても、心理的な距離が近いためうまくいかないケースも少なくありません。そこで、親戚や知人の中で実際に免許の自主返納をした高齢者に、説得をお願いするのもおすすめです。
なぜ、運転をあきらめたのか、運転していてヒヤリとした、ハッとしたなど、危ない場面に遭遇したことを具体的に話してもらえれば、本人も自分に引きつけて考える機会になるはずです。
認知症の疑いがある高齢者が免許返納しないのには理由がある
認知症の疑いがある75歳以上の高齢者からは、免許更新時の「認知症検査」で運転をやめてもらうことができます。しかし、75歳未満の高齢者や、75歳以上の認知症でない人からは強制的に免許は取り上げられません。
なぜ高齢者が運転をやめないかというと、まず地方に住んでいる高齢者は、公共交通機関よりも車で移動した方が、便利だからです。
また、高齢者が自分の運転技術を過信していることも、免許返納が進まない理由と指摘されています。
民間シンクタンクが行ったアンケート調査では、車の運転に「自信がある」と回答した人の割合は、20代から50代に向かって次第に低下。
しかし、65歳以降では一転して上昇。60代後半から70代後半へと年齢が上がるにつれて割合は増えていき、80歳以上ではなんと72.0%の人が「自信がある」と答えているのです。
65歳以上の運転者は若い人よりも運転経験が長いので、自分の能力が衰えているという事実を認めたくない心理があります。自動車の運転ならまだできると考える高齢者は少なくありません。
運転にこだわる高齢者の気持ちを理解しよう
高齢者にとって自動車を運転することは、とても大きな意味を持っています。車がないと買い物や通院などの生活に支障をきたす、仕事に出られなくなるといった日常生活にかかわる問題がまず大きなポイントです。
一方で、「まだまだ運転に自信がある」「事故なんて起こさない」など、加齢による運転リスクを客観的に捉えられていない場合もあったり、免許証を持っていることで社会的に認められている感覚があったり、心理的な問題も汲み取ってあげる必要があります。
自主返納したらもらえる「運転経歴証明書」は免許証の代わりになる
また、免許証を返納すると割引サービスが受けられるという制度が各自治体で実施されています。
まず、65歳以上の高齢者の方が免許証を返納すると、「運転経歴証明書」が発行されます。それを持っていると、バスの割引やタクシーの割引チケット、金利の優遇、レストランや温泉施設の割引、配送料割引などのサービスを受けることができます。
これは自治体によってサービスが異なるので、免許の返納を渋っている高齢者の不安を解消するためにもご家族で調べて、教えてあげることも大切です。
高齢者の運転は何歳ぐらいでやめるべき?
ご家族の方は、そもそも運転は何歳までと考えているでしょうか。何歳まで運転が可能なのか、運転をやめるタイミングはいつになるのか。高齢者の方と話し合いを持つ前に知っておきたいことをまとめました。
また、運転をやめる時期を判断するチェックリストや免許証を返納するメリットなども併せて確認していきましょう。
運転免許の自主返納には抵抗がある高齢者が多い
安全のことを考えると、自主返納が一番良い方法ではありますが、実際は難しい面もあるようです。高齢者の交通事故は増え続けている一方で、高齢者が免許証を自主返納する件数は微増に留まっています。
警察庁の発表によると、75歳以上の免許を持つ人のうち、2016年で返納したのは全体の3.16%、2017年には少し増えて4.67%に留まっています。
これは75歳以上で免許の自主返納をしているのは20人に1人という割合なのです。免許保有者の総数から考えると、自主返納の割合はごくわずかです。
高齢者運転の危険性
高齢者は、視野が狭くなるため注意力や危険察知力が低下するほか、身体機能の低下でとっさの時のアクセルやハンドル操作も不安定で、操作ミスが起きやすくなります。また、安全確認を怠ったり、スピード感覚や車間・車幅感覚が鈍って安全運転がしづらくなります。
実際に、高齢者は交通事故を起こすリスクが高くなるデータもあります。警察庁の発表によれば、免許人口10万人当たりの75歳以上の運転者の死亡事故件数は、75歳未満の運転者と比較して倍以上多く発生しています。
運転をやめるべきタイミングをチェックリストで確認
どうして高齢者は運転をやめないのでしょうか。ご家族も運転が心配と思っていても、明確に危険のサインを確認できる方法がわからない場合もあります。
運転がまだできるのか、チェックリストで確認してみましょう。もしチェックがひとつでもつく場合は、運転をやめることを考え始める時期かもしれません。
- 運転をしていると、知っている場所でも道に迷う
- 運転が以前よりも荒くなった
- 急に車線変更するようになった
- 通常よりも目的地に着く時間が多くかかる
- 車に傷をつけることが増えた
- 運転に対する不安を感じる
- 標識を見逃す、右左折禁止でも曲がろうとする
『ひとつでも』チェックがついたら注意が必要です。
「ひとつ該当していても、まだ大丈夫!」と考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、ひとつでも当てはまったら、自分が運転したとき、同乗者や他人を事故に巻き込む危険性があるということは意識しなくてはいけません。自分が事故を起こして命を奪う可能性があるということなのです。
運転をやめさせようとする行政の取り組み
警察や行政をあげて、高齢者に運転免許証の自主返納を呼びかける動きが広がっています。とくに自治体単位で、免許の自主返納をした高齢者に電車・バス、タクシーチケットを贈呈したり、施設の利用料金を割引したり、特典制度を整えて自主返納率を高める取り組みをしています。
また、75歳以上の高齢者の免許更新では、認知機能検査と高齢者講習も必要となりました。認知機能検査の結果によっては、医師による臨時適性検査を受ける必要があります。もしくは、認知症ではないと証明できる医師の診断書の提出が求められます。