いいね!を押すと最新の介護ニュースを毎日お届け

施設数No.1老人ホーム検索サイト

入居相談センター(無料)9:00〜19:00年中無休
0120-370-915

山梨県では、「介護待機者ゼロ」の実現に向けて動き出している。具体的には、これまで山梨県を支えてきた高齢者の生活を守るとともに、現役世代が介護と仕事を両立できる環境を整えていく。すべての人が必要な介護サービスを受けられる環境をつくるために、具体的にどのような取り組みが必要なのか。山梨県が考える実現のための方策、今後を支える若い世代の可能性を育む方法について長崎幸太郎知事に伺った。

監修/みんなの介護

介護離職を防ぐためにも
「介護待機者ゼロ」の推進が必要

私たちは「介護待機者ゼロ」を掲げ、数年かけて実現するための取り組みを進めています。高齢化が進む山梨県では、2020年4月現在、介護施設への入居希望者が4,800人ほどいます。

担当部署の調査によると、そのうちの1,800人は特に入所の必要性の高い方々です。現状、それらの方々が在宅や別の高齢者施設で入所を待っているのです。

さらに、夫婦共働きでご兄弟がいない場合などは、子世代2人で親世代4人の介護をする必要性が出てきます。その中で在宅での介護となると、夫婦のどちらかが介護離職せざるを得なくなり、生活自体が成り立たなくなる可能性もあります。

私は、少なくとも山梨県ではこのような状態をなくしたいという、問題意識を持って取り組んでいきたいと考えています。

既存のショートステイを特養に転換する

では実際、どのような方法で待機者を減らせばよいのか。介護待機者ゼロの実現に向けて山梨県が着目したのが、「既存のショートステイを特養に転換すること」だった。この方法であれば、新しく施設を建設する費用もかからず、人材を確保せずとも、特養の床数を増やすことができる。

ただ、ショートステイも在宅生活を支える大切な介護サービスの一つなので、やみくもに転換するのではなく、ニーズとバランスを考慮する必要がある。市町村の行う地域密着の施設整備を基本としながらも、既存の施設を有効利用するこれらの方法によって、介護待機者がゼロに近づく環境を整えていくことが県の役目である。

こうした高齢者や働く世代の方々が安心して暮らしていけるまちづくりを進めるに当たって出てくる次の課題が、介護従事者の確保と財源をいかに生み出すかということだ。

資源やその活用方法の見直しで費用を捻出

ショートステイの転換や人材の確保など、介護待機者ゼロを実現するために必要となる追加経費は約6億だ。膨大な資金が必要なため、数年かけての実現を目指している。

長崎知事は、この予算を低利用の財政の源の見直しによって生み出すという。具体的には、山梨県が持っている電力会社をさらに高度に活用していくことが挙げられる。また、企業に低廉な価格で貸している県有地を、適正な価格に見直していく。

さらに、県有地の借り手とともに、富士山にある登山鉄道などのさらなる高度利用も計画している。あくまでも増税はせず、県民からの負担は求めない方針だ。利益を生み出せる部分に着目し、財源を確保していくという。

「25人学級」での細やかな教育で
自己肯定感の高い子どもを育てる

山梨県では、2021年4月より、小学校の1クラスを25人にする少人数教育を始めました。これは子どもにとって大切な時期に、一人ひとりの可能性を伸ばすための取り組みです。

山梨県では、教育や介護の問題を行政の力で解決しようと考えています。そして、「山梨県には子育てや介護の支援体制があるから安心だ」と思ってもらい、他府県から移住して来られる方が増えるような地域づくりができればと思っています。

また、新型コロナの封じ込めのような、安心・安全な対策の徹底によって、首都圏に近い場所で、上質な生活ができる環境を維持していきます。

目指すのは子どもたちの個性を活かす教育

2021年4月施行の法律で、国はこれまで小学校二年生以降1クラス40人(第一学年は35人)と定めていた定員を35人にする方針を決めた。しかし山梨県では、それよりもさらに少ない25人を1クラスとする。2021年度の小学一年生から始めて、2022年度には、小学一・二年生のクラスを「25人学級」にする予定だ。これにより、一人ひとりに担任教師の目が届く教育環境をつくりやすくなる。

1クラス25人という少人数体制にすることで、一人ひとりに合わせた指導が行いやすくなる

担任教師の負担を軽減することで、勉強したい子の才能を伸ばし、発達障がいなどの子へのケアも十分に可能になるというわけだ。

さらに都心などでは私立小学校に通う子が多いため、親の所得が子どもたちの入学できる学校に影響を及ぼし、結果的に教育格差につながっている。しかし、山梨県ではほとんどの小学校が公立であるため、家庭の経済状況に関係なく、子どもたちが高い水準の教育を受けられることも魅力だという。

自己肯定感を高めて自他ともに幸せにできる子どもに

どんな教育やケアが必要になるかは、子どもたち一人ひとりによって異なる。1クラスの人数が多くて担任教師が目を配れない子どもが出てくると、その子の可能性をつぶしてしまうことにもつながる。

しかし、少人数クラスで担任教師が無理なく目を配り、声をかけることができれば、「先生から認められた」という達成感を感じたり、自己肯定感が高まったりする。山梨県は、もともと子どもたちの自己肯定感の高さが全国でもトップクラスだ。しかし、さらに細やかな教育を行うことによって、より一層子どもたちの自己肯定感を高めることができると考えている。

自己肯定感は、その後の人生の基盤をつくる土台だ。自己肯定感を高めることによって、新しいことに挑戦しやすくなったり、失敗に強くなったりして、自分も周りも幸せにでき、地域の役に立ちたいと思う子どもが増えるのではないだろうか。

孤独を解消して悩みを抱え込まない
コミュニティづくりが必要

人生100年時代になると、これまでと比較して人生の2周目を生きることになります。この2周目を最期まで走り切るために大切なのが、健康寿命です。

寝たきりよりは、活発に活動ができて、人と交流して楽しく豊かに過ごせるのが望ましい。そのためには、個々人に委ねられる部分だけではなく、コミュニティの必要性が出てくると思っています。

例えば、介護者による虐待問題については、介護者が悩みを相談できないまま抱え込んでしまった結果として起こるという指摘もあります。地域に何でも話せるコミュニティがあったら、そんな問題も起こらなかったのではないかと考えています。

ワーケーションなどでも同様です。他府県から来る方も、コミュニティがないと孤立してしまい、結果的に住み続けることが難しくなります。強制されることなく、居心地の良いかかわり方ができるオープンなコミュニティをつくることが、今後は必要だと思っています。

地域のネットワークで高齢者の健康をサポート

山梨県には、特定のメンバーと定期的に食事や飲み会をする「無尽会」の文化がある。もともとネットワークを大切にしてきた山梨県だが、コロナ禍で飲み会ができなくなったことを機に、新たなネットワークづくりやコミュニティのあり方が模索されている。

フレイル予防のための運動を行っている様子

いつまでも社会とつながり、居場所があると感じられることは健康寿命を延ばすことにつながる。食事や栄養のバランス、運動、人との交流という3つの要素のどれが欠けても、高齢者はフレイルに陥ってしまう。しかし、全国的に保健師が多い山梨県では、その保健師が地域の人々とつながりを持ち、食事や栄養バランス、運動の指導によってフレイル予防に取り組んでいる。

健康寿命の延伸についても山梨県は力を入れて取り組んでいる

介護施設の評価制度を導入して働きやすさを向上

介護待機者ゼロの実現に向けては、介護に従事する人材の確保も重要なポイントになる。そのため山梨県では、ハードワークのイメージが強かった介護現場が、キャリアプランの整った素晴らしい職場になるような取り組みを進めている。

2021年度からは介護施設に人材育成などの優れた取り組みを評価する認証制度を創設し、職場環境の整備を促進することで、介護の仕事に携わる人を増やす方針だ。

人とのつながりを大切にしてきた山梨県で、時代に合わせて多様性を認めつつ、誰もが参加できるコミュニティの実現が求められている。「最期まで社会にポジションを持って、人々とかかわりあいながら人生を閉じれるような山梨県にしたい」と長崎知事は話す。今後の山梨県の変化が楽しみだ。

※2021年7月5日取材時点の情報です

撮影:丸山 剛史

【第61回】患者の退院後も同水準の医療提供を目指す。石川ヘルスケアグループの進めるICT活用とは
「ビジョナリーの声を聴け」は超高齢社会に向けて先進的な取り組みをしている自治体、企業のリーダー“ビジョナリー”にインタビューし、これからの我々が来るべき未来にどう対処し、策を練っていくかのヒントを探る企画です。普段は目にすることができない高齢福祉の最先端の現場を余すこと無くお届けします。
!

この記事の
要望をお聞かせください!

みんなの介護は皆さまの声をもとに制作を行っています。
本記事について「この箇所をより詳しく知りたい」「こんな解説があればもっとわかりやすい」などのご意見を、ぜひお聞かせください。

年齢

メッセージを送りました!

貴重なご意見を
ありがとうございました。

頂戴したご意見は今後のより良い記事づくりの
参考にさせていただきます!

【まずはLINE登録】
希望に合った施設をご紹介!