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宇佐美典也の質問箱

質問 Q.89 東京の杉並区が静岡県の伊豆に作った特別養護老人ホームが話題になっていますね。「現代の姥捨て山だ…」などと言われていますが、宇佐美さん自身はどう思いますか?(やまさん・公務員)

「杉並区の特別養護老人ホームを伊豆に作って、杉並区民が移住できるように…」というニュースが話題になっていますね。「現代の姥捨て山だ」とか言われていますが、本当にそうでしょうか?私なら地方への移住は大歓迎なのですが、そうは取らない人もいるようで。宇佐美さん自身は、この「杉並区の特養を伊豆に作る」という政策について賛成ですか?反対ですか?

これまでの慣例に縛られず県境を越えた広域連合の整備を仕掛けていくべき。「東京大改革」の大きなテーマと言えるでしょう

結論から言いますと、私は東京都心の自治体が管轄区域外に特養を整備することについて、現状では「制度的な問題を洗い出す実証として限定的に行うべき」と考えています。

ここで今回の案件の特殊性を考えるため「そもそも杉並区が南伊豆に特養を作ることになったか?」ということをまとめてみますと、その理由としては


  • ① 東京都心は地価が高く、敵地に空きが乏しく、施設整備が困難な状況であること
  • ② 他方で地方は地価が低く空き家も多いこと
  • ③ 首都圏は他の地域に比べ交通網が整っており、圏域を超えた人の移動が容易であること

が挙げられています。こうした問題は杉並区と南伊豆に限らず、都心と地方をめぐる一般的な問題であることから、日本全体で見た財政や土地の有効利用という観点から、今回の杉並区のような事例は徐々に広がりを見せる可能性が高いものといえるでしょう。こうした動きは現実社会の変化に対応したものですから、これを「姥捨て山」のように倫理的に批判しても仕方がありません。

他方でみなさんには釈迦に説法とはなりますが制度的な話をしますと、介護保険には都道府県が指定・監督権限を持ち広域圏でのサービス利用が認められる「広域型サービス」と、市町村が指定・監督権限を持ち地域住民に利用が限られる「地域密着型サービス」があり、原則としては広域圏での取り組みは都道府県が取り組むことになっています。

今回は杉並区が主導しながらも広域的な取り組みであることから、東京都の介護保険事業支援計画に明記することを条件に、介護保険の財源としては杉並区側の財源を提供することが認められることになりました。他方で後期医療者制度では南伊豆側が財源を負担することとなっており、他の社会保険制度と財源が一致していないことになります。こうした捻れをのこしたまま今回のような事例が広がっていけば、都心が地方自治体の高齢者財源にタダ乗りすることになってしまい、将来的に大きな問題を生むことになります。

このように今回の事例は、様々な制度的な矛盾をはらみながら現場の制約から見切り発車的に行われたものですから、私としては今後は東京都が率先して後期高齢者制度など他の制度と歩調を揃えて、これまでの慣例に縛られず県境を越えた広域連合の整備を仕掛けていくべきと思います。まさに「東京大改革」のテーマというところでしょうかね。

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