Q.84 高齢者の健康支援を…という名目で、配食事業について厚生労働省が積極的です。正直「国が率先するほど?」と思ってしまうのですが、宇佐美さんはどう考えますか?(ジョバンニ・介護事業者)
正直に言って、かなり労働集約型に事業であること、配送費などのコストも高くつくこと…等を考えると、国として推進するほどの事業ではないように思います。国がどのように考えているのか、宇佐美さんなりの考えを教えてください。
政治的には「混合介護の推進」の布石として考えられていると思います
まず表向きの話をしますと、少子高齢者社会の進展で、65歳以上の単身または夫婦のみの世帯が加速度的に増えておりこれが将来的には3割を超えることが見込まれます。また今後団塊の世代が70歳を超えて行く中で、要介護者が現状(2015年)の612万人から2025年には826万人にまで拡大する見込みです。介護施設のキャパシティは急には拡大しないので、必然的に今後在宅介護の役割がますます増していくことになります。
他方で在宅介護の利用者の4割は食事に関する不安を抱えており、その主たる要因は「食事内容」と「食事の準備や料理の手間」ですから、この問題の解決のために厚労省が配食事業に力を入れるのは、ごく自然なことです。厚労省はこのように表向きは「儲かるから」ではなく「現場のニーズがあるから」、配食サービスに力を入れているのです。
政治的な話としては、厚生労働省は安倍政権から混合介護分野で政治的な実績を上げるように強力な圧力をかけられています。厚生労働省として、この実例としておあつらえ向きなのが「介護事業者の配食サービス」というわけです。以下は2014年6月10日の参議院厚生労働委員会での東議員と土屋副大臣のやりとりですが、厚生労働省のスタンスが見て取れます。皆さんも事業計画や将来のキャリアプランを考えるにあたってご参考にしてください。
○東徹君 これからサービスを提供していく中で、今の要介護一、二、三、四、五とありますけれども、その要介護の枠の中だけで、サービスがそれしか提供されないんじゃないのかと、そういうふうに思っている方々も多いんではないのかなと。自己負担でもいいから、例えばデイサービスをもうちょっと増やしたいとか、それからホームヘルプサービスを増やしたいとか、やっぱりそういったニーズに対してはこれどういうふうに普及促進していくのか、その点についてお伺いしたいと思います。
○副大臣(土屋品子君) 東委員のおっしゃるように、まさに保険外サービスと併せて提供する必要があると思います。そういう中で、ケアマネジメントを通じて利用者の合意の下で民間事業者が提供する介護保険外のサービス、例えば配食とか健康増進施策、家事支援等も組み合わせながら、利用者の希望に合ったサービスが必要だと思います。特に多いのが今配食サービスでございます。そういう中で一番大事なのは情報でございまして、市町村が積極的に情報を利用者に提供していくというか説明していく、こういうことが必要だと思いますので、その点も、民間主体のサービスを、できるだけ情報を皆さんに受けられるようにしたいと考えております。